願いの後先(2)















時を同じくしてプラント。
「ラクス様」
護衛であるダコスタが自分の名を呼ぶ。
「はい」
「お支度はお済でしょうか」
できましたらそろそろ出発したいのですがと一言付け加えて。
「ええ、わかってますわ。今行きます」
手にはピンクハロを抱えて、少しばかりの鼓動の早さに苦笑いしながら。


いけませんわね、こんなに緊張しては。


一人心の中でごちる。
明日には地球だ。もう5回目を迎える平和式典。
本番は来週なのだけど、リハーサルやあいさつ回りのために一週間も前に出発する。
それだけならいいのだが――――。
椅子から腰を上げると、目の前にある窓を見つめる。




「キラ……」




ここにはいない彼の名を呼び、黙った。
彼は地球。
いつもなら行くなら行くと事前に彼には伝える。
だが、今回は伝えていない。
どうして伝えなかったのか、自分でも不思議なくらいだ。

彼とは先の戦争で一緒に戦った仲間だ。
自分の想いを一番に理解してくれた人。
自分の弱い部分を見せてしまえる人だ。
そして、想いはいつも同じ……。
では、何か関係付けるとすれば『友達』なのだろう。
彼には何も言わなくてもわかってくれる部分がある。
一番の理解者であり協力者。
それは心強いことでもあるのだが……。

いつだかそれを不安に感じたことがあるのを覚えている。
何も言わなくても、わかってる。
そのことに。
確かに彼の気持ちは手に取れるほどわかるのだけれども。

言って欲しい言葉がある。
言わなくてもわかる言葉がある。

私は彼に何を望み、また彼は私に何を望むのだろうかと思ったら、少しだけ不安になるのだ。
それが、多分キッカケ。
幾年もそれが積み重なっているのだと気づくには、少し鈍かったのかもしれない。



自分の想いも、彼の想いも。





どこへ行こうとしているのだろうか――――?






「ラクス様?」
ダコスタの声にはっとし、現実へと呼び戻された。
「今行きますわ」
そう言って荷物を持つと、扉を開け、外の世界へと歩き出す。
一歩一歩が少し重苦しく感じ、そうしてもう暗くなった空を仰いだ。