願いの後先











幾度も巡り巡る季節は過ぎていき、人々に『戦争』という文字はだいぶ薄れてきていた。
それは良いことでもあるのだけど、一抹の不安をも覚える。
あの時、生き残った者達はそれぞれの道を歩み、懸命に努力してきたものだ。
そして、自分達もまた新たな道を模索し始めていた――――。







あれから季節は5回程巡った。
自分達の周りは目まぐるしく変化している。







「キラ、早く行くぞ」


ぼうっとしている僕に声をかけるのは親友のアスラン・ザラ。
僕もアスランも今はオーブの国営機関のプログラマーの一人として働いている。
今日は本部に提出する書類やMOを持って向かっていた。家から車で来たもの、途中から徒歩である。
施設は広く、駐車しても建物までが遠い。
「待ってよ、アスラン」
「ったく、何ぼおっとしてるんだよ」
全く昔から変わらないんだからと、アスランはやれやれと肩を竦めて言う。
「ん、この樹に見惚れてたんだ」
「樹に?」
「うん」
大きな大樹が聳え立つ。ずっしりとしたこの構えがすごく好きだった。
安心して落ち着ける、そんな感じの雰囲気が。
「そっか」
アスランは一人ごちた。
「って、それよりも時間に遅れるだろ!!部署は違えど出勤時間は一緒だろうが」
そうアスランは慌てて建物へと入っていく。僕も慌ててその後を追った。
季節は。残暑の陽気が漂い少し額は汗ばんでいた。










戦後すぐに建てられたこの施設には大勢の人々が勤務している。
自分はカガリに勧められての与えられた仕事だった。
最初は復興事業中心の政策。最近は復興がだいぶ進んだため、別分野へとの移行を進めている。
アスランとは別の部署で働く。働く時間には拘束されず、家での仕事も可能だった。
プログラミングなど自分のする時間さえ決まっていればの話だ。
しかし、今日は戦後5周年の記念式典の準備が進められているせいか多くの人たちが忙しなく動いている。



「あ、キラ!アスラン!」



二人の元に金色の髪の毛を揺らして来るのはカガリ・ユラ・アスハ。前オーブ代表の娘だ。
キラとは双子の姉であり、アスランとは恋仲である。

「二人とも聞いたか!?」
「何を?」
アスランは内容の意図が取れないと言わんばかりの仕草をする。
カガリはいつも先にぽんと一つの言葉を出してしまいがちだ。
要は、説明不足。単語だけでは全然通じないのである。
ましてや、今日の彼女は人一倍落ち着きがない。手に力を入れて腕振って。




「ラクスが明日にはこっちに来るんだよ!!」



それは極秘情報であり、上層部でしか知らない内容だった。



「え?ラクスが?」
キラは再度彼女に問う。アスランもまた驚きを隠せないでいた。
「あれ?キラは聞いてなかったのか?」
彼女の反応は少し拍子抜けしたと言う顔でキラに尋ね返した。
これじゃあどちらが質問者なのかわからないのだが。
「うん。先週、話したときもそんな言葉一言も言ってなかったけど」
「あ。そ、そっか。ラクスのことだから驚かせようと思ったんだろうな」
彼女は暢気に笑いながら、でも目の前にいる青年は少し不安な顔をして彼女を見つめた。
まぁ、あのラクスならありえるだろう。
驚かせようと思って、黙っていることなんてしょっちゅうだろうし。
でも、この拭えない不安は何だろうか。
キラの心に一つ小さな不安がじわりと広がっていた―――……




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*あとがき*
始まってしまいました、キララク連載小説(滝汗)。
まだこの二人くっついてない設定でやっています。
というのも本編見た後で考えた結果。
しばらくはこの二人くっつかないわねと思いまして。
で、こう自分で書く羽目になりました。
よろしければ最後までお付き合いいただけると嬉しいです。