彼方に眠る記憶―― 3.過去と現在と
その後、すぐにアナウンスをかけてもらい、少女と共にアスランたちが来るのを待っていた。
ピンク色のふわっとした髪の毛が印象深かったのを幼心に覚えていた。
「きみはどうしてひとりであそこにいたの?」
キラの問いに少女は苦笑いをすると、こう答えた。
「お父さんとお母さんを待っているのですわ」
あなたと同じです、ときっぱりと言い放つと少女は視線を前へと向ける。
きっと先を見つめる瞳は今でも忘れられない。
「・・・・・・あ」
ぼんやりとした視界がやがてはっきりと見えてくる。
あぁ、そうかとキラは自分が夢の世界の住人であったことを思い出した。
ふっと見上げるとラクスの顔がそこにある。
あれ?
どうして。
気付けばラクスの膝の上で寝ている自分がいた。
ラクスもまた現ではなく、夢に誘われているらしく、瞳を閉じたまま、肩を少しだけ木の方へと寄せていた。
庭で寝てたのか・・・・・・とようやく状況を判断したキラはラクスの寝入ってる姿を見て思わず微笑んだ。
いつもの先を見つめている瞳ではなく、穏やかな少女の顔。
疲れているのか、キラが起きたのにも関わらずラクスの瞳が開く様子はない。
「ごめんね、ラクス・・・・・・」
キラは小さな言葉で呟くと、そっと片方の手を上げて、ラクスの前髪に触れた。
膝枕をさせたまま寝入らせてしまった。きっと起きたら起き上がれないだろう。
ふとラクスの顔をまじまじと見つめていると夢の記憶が朧ながらに重なった。
『お父さんとお母さんを待っているのですわ』
見据えていた少女の瞳は青かった。
ふわりとピンク色の髪の毛をなびかせていた。
何よりもその表情。
少女とラクスの顔が重なったように感じる。
その純粋な瞳が答えを導き出すように。
あれ、僕は、もしかすると月でラクスと会っていた――――?
そんなはずはないとどこかで否定しながらも、否定できない部分がある。
朧ながらの記憶。
そして目の前にいるラクスの顔。
あの時の女の子は。
導かれる答えは何を示すのか。
キラは答えの先を少しだけ確信しながらも、ラクスの瞳が開くまで待とうと、また瞳を閉じた。
泣いている少年がいる。
両親の付き添いで月に来たものの、時間を持て余していたラクスはひょこりと顔を外へと覗かせた。
つまらない、そう思って外へと出る。幸いにも通信できるよう小型のものを持たされていたため、
迷子になっても心配はなかった。
そんなラクスの目の前に現れたのは泣いている少年。
花壇の花を見つめているとどこからともなく泣いている声が聞こえた。
その泣いている子供が自分の方に近づいてくる。
「・・・・・・・・・なに、やってるの?」
「お花を見ているのですわ」
そう言って微笑むと、少年は言葉を無くしたのか、しばしの時が流れた。
ようやく我に返ると泣いていた瞳が雫を止める。
「めずらしいものでもなんでもないよ?」
「でも、きれいでしょう?」
「そうだけど・・・・・・」
間抜けな顔をしてこちらを向いているものだから、ラクスは思わずくすっと笑って頬の線を撫でた。
「まいご、ですか?」
そう尋ねると現状を思い出したのか、少年は破顔させる。
「アスラン・・・・・・おかあさん・・・・・・」
ぐすっとまた止まっていたはずの涙がこぼれ、泣き始めた。
その瞳をどうしても悲しませたくなくて、ラクスは思わずこう言葉を告げた。
「大丈夫ですわ。私がいます」
あなたは一人ではないのですから。
*お待たせしました。次で最終話です。
やっと交わった過去と未来。二人の出会いはそんなところにあったのでした。
もう少しだけお付き合いくださいませ♪
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