彼方に眠る記憶―― 4.交わる点と線
「う・・・・・・ん」
「あ、目が覚めた?」
おはよう、とやんわりキラが微笑むとラクスは瞳を擦って自分の状況を考える。
あぁ、そうか。寝入ってしまったのだ、自分もまた。
まさか自分まで寝てしまうとは思わなかったためか、ラクスは少しばかり困った顔をした。
キラは上半身を起こして立ち上がるとラクスに手を差し伸べる。
「立てる?」
キラの問いにラクスは起き上がろうとするも、痺れて動けない。
苦笑いを返すとキラはラクスに「ごめんね」と一言告げ、お姫様抱っこをした。
「き、キラ?」
「足痺れてるでしょ?」
「そうですけど・・・・・・でも、」
「恥ずかしかったかな?」
くすくすとキラは微笑む。ラクスは少しばかりその笑顔を見つめて途方に暮れた。
情けない、と思うも仕方のないことなのだからと諦める。
「僕さ、夢を見てたんだ」
ぽつりとキラは呟いた。
その言葉に思わずラクスの眉間に皺が寄せられる。
「夢ですか?」
ラクスはキラの言葉を思い出していた。
夢と現を行き来していたキラには夢が映し出されていた。
「うん、月にいた時、アスランと母さんとはぐれたときのこと」
「まぁ」
「泣いてるところで女の子に出会ったんだよね。ピンク色の髪の毛で、両親を待ってる女の子」
前を見据えていたキラの視線がラクスへと向けられる。
あぁ、もしかすると。
「ラクス、でしょう?」
キラはその紫水晶の瞳を細めてラクスを見つめて言った。
それはラクスなのだという妙な自信があったのだ。
確信を持ってラクスの瞳の奥を見つめる。
ラクスは瞳を一度閉じるとその長いまつ毛を揺らして瞳をゆっくりと開いた。
「あの日、両親はアスランの母であるレノア・ザラさんの所へ行ったのですわ」
アスランの母が勤めていた研究所に近かった公園。
二人で見つめた花が色鮮やかに蘇る。
「私は、つまらなくて外に出ましたの」
プラントとは少し違う世界。
既にあの時には歌姫として生きることを架せられていたのだと知っていた。
だから、幼心にもこの場所はもう来ないのかもしれないと思っていた。
だから、と勇気を出して外の世界へと飛び出す。
楽しかった。
わくわくしていたのを覚えている。
そんなラクスを必死で探していた両親はラクスを見つけた時、泣きそうな顔をしていた。
後から父は厳しい顔で一度だけ怒ったけれど。
「後から怒られましたわ。どこに行っていたのと」
近くの公園へと答えると一緒に探していたレノア・ザラは微笑んでラクスを見つめていた。
レノアはラクスを探すと同時にキラも探していたのだ。
カリダとアスランにキラがいないということを聞いていたのだから。
キラがアスランとカリダの迎えで帰るのをラクスが見送っていたのだと知ったレノアはこう呟く。
『あなた、キラくんに会ったのね』
「あの時はなんのことかわかりませんでした」
けれど。
「私たちは随分と前に会っていたのですね」
その言葉にキラは小さく頷いた。
優しい瞳が、曇ることなくその瞳を捉える。
「そうみたい、だね」
随分と彼方へと閉ざされていた記憶が湧き出る水のように降って来る。
はっきりとその顔が思い出され、二人の脳裏に過ぎっていた。
点と線がはっきりと交わるのを二人の瞳が確認する。
懐かしい記憶は優しさを生み出す。
キラもラクスも、どこかで感じていた違和感。
「初めまして」ではなかったこと。
「これからも、よろしく」
キラは微笑む。
ラクスもまた笑顔で返した。
「私こそ宜しくお願い致します」
彼方に眠っていた記憶は数十年の時を経て、蘇った。
それはある意味二人の運命なのかもしれない―――――。
終
あとがきもといいいわけ。
終りました、連載。ふーっ、一段落です。
よくもまぁ、ネタがあるなぁと自分で感心しているのですけど(笑)
二人の出会い編でした♪暫くは連載はないと思います。
専ら長いのはオフライン重視になるので。
短い短編や拍手の方でちょこちょこと書いていくので、楽しみにしてて下さい。
よくありがちなネタでしたが、ここまで読んで頂きありがとうございました!!
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