八番目の小夜子〜言霊伝ひ〜
3.鍵となるもの

















その時は訪れた。
紅い花がそれを指し示す。





そう、サヨコが本当にいたと言う証。











「ね、ね、見た?花瓶。紅い花が生けてたでしょ?」

藤塚かなめは嬉しそうに弾んだ口調で小湊梓の机に頬杖をついて言葉を口にした。
そうだね、と梓は答える。

「やっぱりサヨコはいたのよ。いいなぁ、あたしもサヨコに指名されたかったなぁ」

「そう?」

「うん。やっぱり憧れるよー」

かなめの言葉を聞いていた隣の席の上村忍は「そうか?」と首を傾げる。

「忍くんも香(かお)ちゃんみたいなこと言わないでよ」

口を尖らせるかなめに忍は苦笑いを浮かべると梓へと視線を向ける。
梓はその視線に気づいて首を傾げた。

「何? どうしたの?」

「いや。お前もサヨコには興味あっただろ?何でそうなのかなぁと」

「まぁ、面白いかなぁって思って」

「確かにいたら見てみたいっていうのはあるけどな。でも憧れるのとは全然違うと思うんだけど」

「忍くんはわかってないなぁ。『特別』が欲しいんだよ。主人公だって言う証が」

「『特別』ねぇ・・・・・・」

「確かにそれはあるよね」

「さすが梓ちゃん。話がわかるなぁ」

かなめの言葉に頷く梓に忍はふぅんと鼻を鳴らした。
不思議そうに見つめる忍の視線が少しだけ痛く感じるのはきっと気のせいだってわかっている。
でも、梓にはそう感じる要素を持っていた。


ポケットに押し隠した古びた鍵。
その意味は大事な秘め事の証。

どうして自分がこれを持つことになったのだろうか。

これを受け取った時からずっと持っていた疑問。
託した人は何を考えていたのか。
この運命を動かすのも自分次第、そう言うことなのだろうがどうしてもわからないことがある。
鍵となりえた人は今までにどんなことを考えていたのだろう。
その条件は?
挙げていくときりがないことは重々承知の上だった。



そもそもサヨコとは何だろう?




一番最初、ふりだしに戻るその疑問の答えは見えない。



「サヨコ、ってどうしてあるのかな?」

突然言葉を口にしたかなめに梓はぎくりとする。

「え? どういうこと?」

「だってね、どうやってこれは続いてきたんだろうって思わない?」

「あぁ、それは確かに」

梓はかなめの言葉に頷いた。

「あ、でも俺聞いたことあるよ。サヨコって途中で途切れそうになったって」


「――――え?」


寝耳に水とはまさにこのこと。
訊いたことのない言葉が梓の脳裏を過ぎる。


「それ、どういうことなの?」

かなめが興味津々な瞳で忍を見つめ、忍は頭の片隅にあった記憶を呼び覚ます。

「先輩から聞いたんだけど、六番目のサヨコの年に色々とあったみたいなんだよ。詳しいことはわかんないけど」

「へぇ。六番目って言うと今から五、六年前?」

「そんくらいだな。詳しいことは知らないぞ」

「あ、うん」

忍の言葉に梓は頷く。
五、六年前にあったサヨコの出来事。
調べる必要はあるなと梓はぼんやりと考えていた。

何があったのか。
どうしてサヨコを続けているのか。



それは誰だったのか。





きっとまだ知らないことがたくさんある。
まだ沸いた疑問のピースは埋まらない。
扉は開いたばかりなのだから。













+あとがきもとい呟き+
遅くなってしまってすいません。本当は7月7日に更新したかったのですが、無理でした。
これから登場するのはかつてサヨコに関わった人達です。
もうわかりますよね?彼ら、彼女らの登場です。