同窓会ー見知らぬ友人ー 9










「久しぶりだな、みんな」

薄暗くなったと言うのに、こんなにも顔がはっきりと見えるのはなかなかないな、とどこかで思っていた。

「先生こそ、どうして」

「こんなところに揃いも揃って卒業生達がいるんじゃ、先生も帰れんよ」

職員室から見えていたらしい。
もう職員なんて少ないから気づかないって思っていたから余計に驚いた。

「先生、今の話聞いてたんですね」

秋の真摯な瞳が先生を見つめる。

「聞いてた、というよりも聞こえた、が正解だな」

あの時と変わらないその口調。どこかのんびりとする空気を持つ先生。
でも今は少しだけ違った。

「じゃあ、話が早い。先生がこの手紙出したんですか?」

加トが質問をぶつけると、先生は一つため息をついてこう答えた。

「違うな。俺は出しちゃいないよ」

「でも、実際俺達に来たんですよ?」

「そんなの知るわけないだろうが。第一、お前達が卒業してからその話をするものは誰一人いないぞ」

その言葉に私達全員がはっとした。
サヨコが、語られない?

「どういうこと、ですか?」

まあが静かに言葉を紡ぎ出す。俄かに声を震わせているのが闇から伝わってきた。
まあ自身、サヨコと言う存在が大切だった。
だからこそ余計に想うのだろう。

「あれ以来本当にサヨコについては語られなくなったな。なかったかのように。お前達が騒いでたのが嘘のようだよ」

「本当に?」

今度は私が確かめる。

「あぁ、嘘を言ってどうする。確かにあれは俺の手を離れすぎた。だから俺も何も言わんよ。ただな」

「ただ?」

「関根から預かった鍵、あれが最近見当たらないんだよな。机の引き出しの一番上に入れておいたのになくなってる」

「え?」

「ゴールデンウィーク頃だったかな。急になくなったんだよ」

「盗まれた?」

「恐らくそうだな」

先生は頷くと、頭をぽりぽりと掻いた。
鍵が消えた?

手紙と、鍵と。

何か、頭の中でひらめきそうだった。
答えがここまで出かかっているのに、なかなか言葉に表せない。
言いたいのに、言えない。

「何の、ために?」

ユキが皆の顔を見渡して尋ねる。
けれど、その質問に答える人なんているわけなくて、更に眉間の皺が寄るだけだった。



「サヨコが、サヨコ自身が鍵をとったのかもしれない」



私はいつの間にか声に出していた。
自分自身は気づかず、ただ周りの空気ががらっと変わったのを肌で感じただけ。
秋が訝しげな瞳で私を見つめた。

「玲?」

「サヨコはここにいる、っていうことを言いたいのかもしれない」

「私たちに手紙を出した理由は―――・・・・・・その責任?」

サヨコの言葉にいつの間にか下を向いていた視線を上げた。
溝口の問いに私は小さく頷いてその視線に応える。

「だと思う。私たちで止めてしまったようなもの、だよね?正体を知ってしまったから」

「でも、サヨコはいるわ」

「でも、サヨコはいない」

まあの声と加トが次々に言葉になって表れた。

「そう、いるし、いないし。信じる人それぞれ。でもそれは下級生には伝わらなかったとしたら?」

「サヨコは自然と封印される。誰もがそのものの存在を消してしまう」

「だから、サヨコは鍵をとり、私たちに手紙を出した。―――再びサヨコという存在を示すことで、自分の存在の意味を表したかった」

秋も沙世子も次々と言葉に表した。
そう、それが私なりの答え。

「先生、違うかな?」

黙っていた先生に言葉を投げかけるとうーんと少し唸っていた。

「俺は知らないな。けれど、潮田がそう思うならそうかもしれない」

「じゃあ、7月7日に何で」

ユキの質問に答えたのはまあだった。

「サヨコにとっての大切な日だからよ。だからこの日を選んだ」

「そうよね。この日はサヨコが現れるって言われてるものね」

うんうんと溝口は頷く。
私は顔を上げて先生を見つめる。

「先生、サヨコを続けても、伝えてもいい?」

私は言うと皆びっくりしたような顔をした。
またもう一度サヨコを創り出すということ。
私たちのサヨコはまだ終わってはいなかった。
受け継ぐべき翌年のサヨコもしなかったから、だからだろう。
サヨコはその存在意義を私たちに伝えたかった、だから手紙に託したのだと。

「あぁ、構わんよ。私は知らないがね。何も見てないし、何も聞いてない」

いつもと変わらぬ表情が物語る。
私はありがとう、先生と言うと「もう皆帰れよ」と言った。










+あとがきもとい呟き+
そうなんです。結局はサヨコは存在する意味を伝えたかったんだと思うんです。
サヨコを通じて色々なことを学んだ、そのことは良かったと思うから。
さぁ、あとはエンディングですよ。