同窓会ー見知らぬ友人ー 4













『願い』?そんなもの最初から決まってるじゃないの。
その紙切れを見た瞬間、溝口は文句混じりの声で呟いた。
西浜中学を出てから皆とは違う道を進んだ溝口は県内の高専に通っていた。
そんなある日、突然一通の手紙が舞い降りた。

差出人のない手紙。

あら、やだ。なんかサヨコみたいじゃない。
謎めいたところなんてそっくりだわ。
そう言って封を開けると、その文字に釘付けになる。

まさか、そんなことがあるの?

溝口は一人考え込みながら、それをじっと見つめた。
その時はそれだけで終わったのだが、また再び来たその手紙を見てため息をついた。


『願い』


そう記された便箋が少しだけ恨めしく感じる。
何よ、すごくシンプルじゃないの。もっと何か書きなさいよね。
そう思いながらその言葉の意味を考える。


あたしの願いはいつだって決まってるわ。


自分の願いを脳裏に浮かべ、でも違うわね、そう言ってその手紙を机の中にしまう。
そしてカレンダーの7月7日の欄に赤く丸で示して。
これで忘れることはないわね。
呟く言葉は、とても静かな空間に響いた。
七月まであと少し、そういわんばかりの梅雨時期のこと。




くだらない。
最初はその一言だけで済むはずだった。
なのにこんなにも動揺している自分がいる。
一体、何なんだ。
差出人の名前がない手紙。
いつだか過去にもこんなことがあったなと記憶の奥を手繰り寄せた。
まさかな。
そう思って開けると予想は外れなかった。

何で、今頃。

瞬時に浮かんだ言葉はこれだった。
手紙を机の中にしまい、いたずらだろうと思って数ヶ月経ち、忘れかけていた時。
またその手紙はきた。


『鍵と扉』


さすがに何も言えなくなって、その紙切れを静かに置いた。
じっとカレンダーを睨みつけて、一つ息を吐く。

何が、言いたいんだ?

疑問は突然のように降って湧いては消えていった。
答えの術を、今の俺には持ち合わせていない。
スケジュール帳の7月7日の欄に丸で囲んで、ぱたんと閉めた。





静かな日が続いていたそんなある日突然と舞い降りた一通の手紙。
差出人不明の手紙の中身を見て思わず息が詰まるのを感じた。
それによってふと蘇る過去の記憶の断片が脳裏を過ぎる。
きらきらと輝く中にいくつかの黒い記憶。
自分が残した想い、そしてそれを糧としてきたここまでの未来(みちのり)。
あの日を軸に私の人生は180度転換したと言っても過言ではないことぐらい、自分では承知していた。
紺色のブレザーを脱ぎ捨て、シャッとカーテンを閉める。
いくつかの見える星々に背を向けて、一つため息をついた。


「今更、何なのよ・・・・・・」


どうして、今なのか。
私は遠い地にいると言うのに、どうして。
問いだせばきりがないのに、わかっているのに尋ねたくなる。
そして何となくわかっているようにも感じていた。
これは、先生からではないということ。



呼んでいるの?

私を?






サヨコが――――――?





そうして思い出すのは友人の顔。
明るくいつも笑っていた彼女の顔が。


玲、あなたもこの手紙を受け取ったの・・・・・・?



沸き起こる疑問に答えはない。
素直に電話で聞けば良いものの、それも何となく躊躇われた。
私達はそれぞれの道を歩いている。


アナタは何を求めているの?


ざわっと胸がざわめき立つのを感じて、鳥肌が立った腕を軽くさすっていた。








+あとがきもとい呟き+
溝口、加ト、沙世子です。この手紙は一体何を導き出すのでしょうか?