「まったく、本当にお前たちが一緒になるなんてな」
「それ、どういう意味ですか?」
ぷぅ、と頬を膨らませて香穂子が答える。柚木は肩を軽く透かして苦笑いを浮かべていた。
それを見た火原は「まぁまぁ、香穂ちゃん」と宥める。
「柚木も言い方素直じゃないなー」
「いつもですよ、柚木先輩は」
少し棘を残したまま日野は言い、火原は苦笑いを浮かべていた。
こうなると火原は二人の仲裁役になってしまう。白いドレスを着て座ったままの香穂子の頭を軽く撫でた。
「香穂ちゃん、その辺にしておこう?」
「・・・・・・わかりました」
これでは高校の時と大して変わらないなと柚木は二人を見て思う。
結婚してもこの二人はこうやって変わらないでいるのか。
自分の中にあった霧がゆっくりと晴れていくような気がして柚木は小さく息を吐いた。
漠然とあった変わることへの抵抗。
だが、この二人は変わらない。
外見は変わるかもしれない、でも根本的なことはきっと変わらないでいるのだろう。
「火原」
「何、柚木」
柚木は小さく微笑むと火原の耳元で囁いた。
「―――幸せになるんだぞ」
一瞬だけ突かれた言の葉。
香穂子には聞こえない声で、火原にだけ伝える想い。
素直じゃない、柚木の。
「もちろん」
火原は笑って返す。
それを見上げて見つめていた香穂子は首を傾げながら、眉間に軽く皺を寄せた。
二人だけで話をされてしまっては何もわからない。
「また二人だけで話を完結させる」
「仕方がないだろ。少なくてもお前よりは俺のほうが火原との付き合いは長いからね」
「確かにそうですけどね。ちょっとずるいなぁって」
諦めたように小さくため息を吐いた日野は柚木を見上げて呟いた。
「柚木先輩には負けませんから」
「俺に勝てると思ってるの?」
「勝てるかもしれないし、そうじゃないかもしれないですけど、負けないつもりです。私が幸せにするんだから」
くす、とこぼれる笑み。香穂子のこういうところが敵わないと思う。
「それはどうかな?」
「って、今度は二人で話進めないでよ」
不貞腐れたように柚木と香穂子を交互に見遣る火原を見た二人は思わずぷっと噴出した。
ずっとこうしてきた関係。
あの頃と変わらずにある幸せ。
「火原を泣かせるなよ」
「もちろんです。その言葉そっくりそのままお返ししますから」
「だから、二人で話進めないでって言ってるじゃん」
もう、と火原が頬を膨らませ、柚木と香穂子で火原を宥めたのは式が始まる直前のこと。
二人の幸せを祈りながら、柚木は小さな息を吐く。
『五十年・・・いや、百年先もきっと香穂ちゃんのこと好きだって言える自信あるよ』
以前言っていた火原の言葉。
どうか、二人がこの先もずっと幸せになれるように。
そしてその傍らには自分もいられるように。
願ってやまない、祈りを柚木は胸の奥で呟いた。
終