淡紅の花が咲く













さらりと髪がなびいて静かにそのときの流れを揺らす。



桜の花が舞い散るそんな中、視線の先には彼女がいた――――。















彼女に呼び出され、少し眠い眼をごしごしと擦りながら指定された場所へと歩く。
自分の家からも彼女の家からも丁度真ん中の地点にある駅にある公園が、約束の場所だった。
桜の舞い降りる季節。
奇しくも今日は新しいことが始まる、そんな日でもあった。
俗に言うエイプリルフールの日。
最初は冗談だと思って笑い飛ばそうとしたが、彼女は頑として「嘘なんかじゃないから」ときっぱり告げる。
少し遅れてもいいからと言うことで、ガタンガタンと電車に揺られること数十分、目的地の駅に着いた。
もうすぐで桜の季節が終わりを告げようとしているのが目にとまる。
春という季節が本格的に訪れる新緑の季節を迎え入れる準備へと向かっていた。
くんと鼻につくのは緑の香りと桜の香り。
のんびりとした歩調で歩いていると公園の入り口に着いた。
軽くきょろきょろと見回すと彼女の姿が目にとまる。
桜の木を見つめている、その姿を。
あ、と言いかけたところで、風が空に舞った。



通り抜けていく風の中、桜の花びらが舞う。
その中にいた彼女の姿を風を避けながら見つめた。
いや、見つめたと言うよりも言葉が出なかったと言った方がいいのかもしれない。


「伊角くん」


彼女の声を聞くまで、少し現実から遠退いていた。



「どうしたのよ。ぼけーっとしちゃって」

「あ、あぁ・・・ちょっとな」

「ふぅーん?」

不思議そうな眼差しで自分を見つめるその双眸に自分が映し出される。

「まぁ、いっか。ほら、綺麗でしょ、桜」

「だから、俺を呼んだのか?」

「うん」

いいじゃないと言外に匂わせ、桜を見つめる。桜を見つめるその瞳は少し優しげな笑みだった。

「まぁ、いいか」

「でしょ」


長くは語らない。いいなと思うからそう言っただけ。
二人ともそれはよくわかっているから。

「気持ちいいな」

「小春日和よね」

「あぁ」



桜の花びらが舞い、春から新緑の季節へと移り変わりを感じながら、二人で空を仰ぐ。
心地の良い風がふわりとなびかせて、そっと通り抜けていった。





青空はどこまでも澄み切っていた。


















*あとがきと言う名の呟き*
何で今の季節に桜ー!?それにお題に合ってないしと、言う突っ込みはナシですよ。
だって、タイトル見たときに思いついたのは桜しかなかったんだもん。梅の花じゃなかったんだもん。
それに別れも想像できなかったんだもん!(言い訳ですが)
前回が奈瀬一人称に近かったのに対して、今度は伊角さん一人称に近い形にしました。
色々と突っ込むべきところはたくさんありますが、お気にせず(笑)
久々に会話の短い文章ばっかり書いてるなぁ。



>>21.アスファルトの上の白昼夢