願いの後先(13)
























静かな夜はゆっくりとした時間の流れを提供するように、さっき見てからまだ四時間ほどしか経っていなかったのを大きな時計を見て確かめる。
ベッドサイドの時計からそっと窓の外へと視線を向けた。
月が白く輝いているのを確認すると小さな寝息を立てる彼女の寝顔をまじまじと見つめる。
閉じられた瞳からうっすらと雫が零れ落ちた後が垣間見れた。
先ほどまでの泣き顔とは打って変わって安心しきったいい顔をしているのをそっと手を握り締めて見つめる。
散々泣いた後に彼女は疲れてしまいましたわと言って、一人ベッドに横たわると寝息を立てて眠りへと誘われていた。
そっとベッドサイドで彼女の手を握る手はあたたかい。
彼女がこんなに泣いた姿を見たのは、初めてだろうと思う。
少なくても彼女の父親が亡くなった時に初めて見せた涙には驚いたのだが、今回もまた驚いたというか、どうしていいのかわからなくなった。
ただ、彼女に自分の精一杯の想いを告げたくて、必至だったと言うことぐらいしか覚えていない。
ふと、ここに来る前に電話をした双子の姉の言葉を思い出した。
「キラ、大事だって思うものはちゃんと掴んでなきゃダメなんだぞ」
うん、わかってるって答えた言葉に姉は「なら、いい。ラクス、泣かせるなよ」と一言言って。
その後僕のお願いを聞いてくれた親友には。
「キラにはラクスが必要だし、ラクスもまたキラが必要だって思ってる」
はっきりと告げた言葉は、すうっと心に響き渡った。
戦争が終わってもう、五年。
その間に彼女をこんなにも不安にさせていたのだと思うと、自分の不甲斐なさに辟易した。
どうして、自分はいつもこうなのだろう。
大事なものを守る時、いつも決まらない。
かっこわるいな、と苦笑いをした。


「………ん……」

「ラクス?」

彼女が小さな声を呟くと顔を覗いてみた。
うっすらと開かれる瞳には自分しか映っていない。


「キラ……今、何時ですか?」


「三時過ぎだよ。まだ寝てていいからね」


「まぁ、そんなに寝てしまったのですか?」


「みたいだね」


「すみません、私一人寝てしまっていたみたいで……」


彼女は自分の顔をまじまじと見つめながらそのことに察したらしい。
何も、気にしないでと一言告げると、彼女は少し眉を潜めた。
すると彼女の細い腕が自分の首に絡まる。


「ラクス?」

「ありがとう、キラ……それから、ごめんなさい……」


彼女の指す言葉に一瞬躊躇するも、その言葉に含められた意味に気づいてこう、答えた。


「ううん。こっちこそありがとう、ラクス」


彼女を想う気持ちと、彼女が僕を想う気持ちが両方重ねられて。
絡められた腕をそっと離すと彼女を優しく包み込む。
華奢な身体がなんだか壊れそうで、こわれものを扱うかのように大事に抱きしめた。
抱きしめると彼女の腕がぎゅっと自分を抱きしめ返された。


「キラ……」


「うん?」


「大好きですから」


そっと小さな声で頬を染めてるであろう彼女が呟くと、自分もそれに連動されるように赤くなって。



「僕も……。ラクスのこと」


言葉を区切って、一つ呟くその言葉は。
なかなか言えなかった言葉。



「愛してる――――」







きっとこの先も。
ずっと二人で歩きたいと願う。
隣には彼女がいて、手をつないでずっと、この先も。
大事なものは失いたくない。
かつて自分が守れなかったことを今でも後悔していることも、何もかも受け入れてくれた彼女だからこそ。
きっと、ずっと守ると彼女に誓って。
ぎゅっと抱きしめた身体のぬくもり一生つなぎとめるように。


守りたいもの。


大事なもの。



自分の願う先には。





いつも彼女がいる―――――






END