木霊する森 予告編                                                                              




今から思えばそれは不思議な話だったんだ。






軽快に走る車の中で谷山麻衣はぼんやりと外の景色を眺めていた。
それもそのはず、少しだけ奇妙な話を聞く羽目になり、それがまさか調査の対象になるなど考えていなかったのだから。
以前調査をし、問題を解決するに至った吉見家の彰文が依頼者である徒綱則之に麻衣達渋谷サイキックリサーチを紹介したのだ。
まぁ、彰文の紹介ならと軽く話を聞くことになったその話はとても不思議な話だった。

「その、何だっけ・・・・・・奈那子ちゃんだっけ?」

「ええ、徒綱奈那子さんです」

「やっぱりその子と関係があるのかなぁ」

「わかりませんけれどね。彼女の体調が悪くなってから起こったことだそうなので」

「ふぅん。ねぇ、ナル」

「・・・・・・何だ」

「何よ、その嫌そうな顔」

「・・・・・・別に」

明らかに眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔をするナルこと渋谷一也――本名オリヴァー・ディビスは麻衣の声にぴく、と耳を傾ける。
麻衣は一瞬だけ眉間に皺を寄せたが、いつものことだと流して言葉を続けた。

「ナルはどう思うの?」

「どう、とは?」

「心霊現象? それとも単なる偶然?」

興味なのか否か、麻衣は少し身を乗り出してナルの言葉を待った。
麻衣の言葉にしばし間を置くとそのさらりと美しい漆黒の髪の毛が揺れ、ナルはゆっくりと口を開く。

「どちらとも言えない」

「ナルにしては珍しい」

ナルの答えに麻衣は即座に反応を示す。
感心してるのか、それともそうではないのか、麻衣は不思議そうな表情を浮かべて言葉の続きを待っていた。
ナルは言葉を紡ぎながら、ちらりと自分の手元にある本へと視線を移す。

「興味深い、とは思う」

「へぇ。いつもだったら断りそうだなとは思ったんだけどね。まぁいっか。どれくらいの期間行くの?」

「とりあえず一週間ほど。長引くかもしれないし、そうでないかもしれない」

「らじゃー」

麻衣は冷めた紅茶に口をつけて喉を潤した。
不思議な依頼だなと麻衣も思う。
普通ならば医者を呼んでと対応を促すはずのナルが興味を示した。
そのキッカケは何なのか、麻衣は素直にナルの心理を知りたいと願う。
何か気になることでもあるのだろうか、資料をぱらりと捲るナルの横顔を見つめながら麻衣は小さく息を吐く。



谷山麻衣、17歳、高校三年生。
不思議な事件に足を踏み入れたのは秋になりかけた季節のことだった。





*ひとこと*
とうとう始まってしまいました、久しぶりのゴーストハント小説。
ほんのりナル麻衣ちっくな話を書けたらと思っています。
なお、この話は10月に発行する【六つ花の降る日に】の前哨戦です。
サイト連動型もたまには面白いでしょ、ということでちょっとずつ話は進めていきますのでよろしくです。
それにしても久々だなー長いの。しかも調査ものは初めてなので至らぬ点があるかと思いますが、ご愛嬌で宜しくです(オイ)




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