はらりと落ちてくるその白きものにふっと顔を上げた。
あ、雪―――――。
「さむっ」
そう一言呟くと、弧を描いて消えてゆく。
はぁっと吐き出される白い息がその虚しさをじわりと広げた。
一人で歩く道のりが何となく淋しい。
さっきまではみんなと一緒に歩いていたのに、方向が違ったために別れて一人歩く。
「奈瀬っ」
と、唐突に聞き覚えある声が背後から聞こえ、思わず振り返る。
「―――――伊角君……」
彼の名を呼び、そのまま黙った。
なんで。
どうして。
ここに伊角君がいるの?
「女の子が夜道に一人って言うのは危ないだろ?」
少し息を切らして、肩で大きく息をしている。
走って、追いかけてきてくれたの?
「でも、そんなのいつものことよ。大丈夫、大丈夫」
からからと笑いながら、だから、みんなと一緒に帰っていいよと言いかけた時に彼は一つ言葉を紡いだ。
「ん。そうだけど、何となく奈瀬の背中が泣いてるような気がしたから」
「え?」
はらりはらりと雪が舞い落ちる。
暗くて何となく伊角君の表情は読み取れないのだけど。
「一人にしちゃいけないような気がした」
凛とした声で返す伊角君の言葉に思わず詰まる。
ちゃんと笑って別れたはずだよ。
なんで。
この人は。
わかってしまうんだろうか――――?
雪が舞う。寒い冬の夜。
微かな雪の匂いが鼻を掠めた。
「バカな伊角くん」
そう一言呟くと、きゅっと顔を上げる。
「そう言ってくれるからには家まで送ってくれるんだよね?今更断るなんてないからね」
「あぁ、ちゃんと送らせて頂きます」
「なら、よろしい」
くすっと笑って、そっと落ちてくる雪一粒が伊角くんの肩についた。
そっとそれを拭うと、雪は溶け水滴となり私の手をつっと落ちていく。
「寒いね」
「そうだな」
なんとなく、肩を並べて闇夜を歩き出す。
今は一人じゃない。
そう思ったら、少しばかり泣きたくなって、それを堪えるのに伊角くんの手を握った。
彼は何も言わず握る手を握り返して。
また、泣きたくなった。
ちくんと刺さるこの痛みは何と言う名なのか。
この時の私は知る由もない。
終