「好き」
「嫌い」
「好き」
「嫌い…」
最後の花びらを引っこ抜くと、一つため息をついた。
これで3度目だ。
なぜ、『嫌い』で終わってしまうのか。
あーあ、こう3度も同じ結果なんて……。
春うららかな午後の休日。
なんだか家にいるにはもったいないくらいの天気で思わず外へと飛び出す。
中学を卒業して、高校に入ってからなんかこんな風にのんびりする時間、なかったような気がするなぁと思う。
近くの小さな公園の傍に咲いている花の隣にちょこんと座りながら、あることを思いつく。
小さい頃何度もやった『花占い』。
好きと嫌いの言葉だけではあるけれど、一番簡素でわかりやすい。
と、思ったのは良いけれど。
「なーんで、『嫌い』なのかなぁ〜……」
一言呟くと、再度ため息をつく。
私と、ヒカル。
幼なじみ以上にはなれないのかなぁ。
ヒカルは碁のプロで、私は普通の高校生で、ただでさえ時間は合わなくて、もう全然会ってなかった。
最後に会ったのはいつだったかなと思い巡らせる。
いっそのことこの気持ちを言えたらどんなに楽なんだろう、とも思った。
「会いたいなぁー……」
「誰に会いたいって?」
突如頭上から降ってくる言葉にはっと顔を上げた。
金色の前髪、ちょっとラフっぽい服装の――――
ヒカル。
「なーにやってんだよ」
「え?あ、何って……そういうヒカルこそ何でこんなとこにいるの?」
「棋院の帰り。だからあかりは何やってんの?」
「あ、えと……」
思わず花びらのなくなった花の一部を後ろへと隠す。
その仕草にヒカルはぱっと動いて私の手の内にあったものをひょいと奪い取る。
かすかにヒカルの手が私の手に触れた。
それだけでも、こんなにドキドキしてしまう。
「何、これ」
「いいでしょー」
「もしかして、花占いでもしてたわけ?」
ひらひらとしなっている茎を持って私の顔をまじまじと見た。
あたりと声に出さずとも私の顔がみるみるうちに紅潮する。
「あ、マジ?」
「う……いいでしょ。そんなこと。ヒカルには関係ないじゃない」
ぷいっと顔を横に逸らすと口を尖らせたまま。
ヒカルはそーかよと小さな声で呟いた。
「ふーん、あかり好きな人いるんだ」
「悪い?」
「それって俺の知ってる人?」
そりゃあ知ってる人よ。
だって、好きなのは―――。
ヒカルだもん。
心の中で呟きつつ、まだこの想いは伝えないでおこうと決め。
とりあえずヒカルに会えたことが嬉しいから。
「なー教えろよー」
「なーいしょ」
ヒカルにこの想いを伝えたら、どんな顔をするんだろうと思いつつ。
あたたかな春の陽気に誘われたおかげでこうやって会話ができて。
あぁ、幸せだなって思うのは、多分春だから。
多分、だけどね。
終