もう一度
巡り会うために

 


きっと、願っても叶わないのだから。

黄昏の中、ルルーシュは自分の両の手をじっと見つめ、そして手を絡め、組んだ。組んだ手に額を当ててぎゅっと瞳を閉じる。こうなるはずではなか

った、そう言ったところで事実はもう変わらない。
自分が異母妹であるユーフェミアを撃ち殺したことも、事実なのだから。
「すまない」
小さく吐き出される言葉は切れ切れの糸のような声音。
『ゼロ』という仮面を剥いだ本当の顔であるルルーシュの言葉。

「わかっていたことだ」

ギアスがどれだけ危険なことかということも、それがいつかは暴走してしまうかもしれないということも。
でも、その矛先がユーフェミアへと向けられるとは思いもしなかった。
嫌だ、と必死で拒絶していた少女。
最後まで抵抗し続け、そして自分の手で殺された『妹』。

『ルルーシュに『ユフィ』って呼ばれるの、好きだったの』

二人だけしかいない島で、夜遅くに語られた言葉。ユーフェミアの瞳はいつだってまっすぐで、少し羨ましかった。
穢れを知らぬ誇り高き魂。
それを汚したのは自分。どうしようもないということはわかっていても、それでもやるせない気持ちがルルーシュの中に渦巻く。
それは、『妹』としてではなく、むしろ。
ルルーシュははっとして苦笑いを浮かべる。どうしてこんな時にそんなことを考えていたのか。
ユーフェミアを撃った時、つい言葉をこぼしてしまった本音。
 気づいていたけれど、気づかないふりをしてきた事実。
『妹』に抱いてはいけない感情。

『さようなら、ユフィ・・・・・・多分、初恋だった・・・・・・』

そう、きっと初恋だった。
何も知らなかった、小さな庭の中にあった世界で、楽しかった記憶はいつしか過去のものでしかなくなる。
淡く、ほろ苦い恋。
きっと兄である自分を恨んでいるかもしれない、そう思ったら苦笑いしか浮かばなかった。一番わかっていはずで、一番わかっていなかった自分に対

して自嘲する。
ひらひらとまるで花びらのように色鮮やかなユーフェミアとの記憶がルルーシュの中に浮かんでは消えてゆく。本当に花のような少女だった。そして

今は誇り高い花となっていた、それを深い闇の色に染め、朽ちてしまったのは自分のせいだった。
白く、少し淡いピンク色のような少女。
それしか、選択肢はもうなかった。苦しめるつもりなどなかったのに。
命令に逆らおうとしたユーフェミアをみてルルーシュは愕然としたのを覚えている。
きっとユーフェミアの中で一番許したくない言葉だったのだろう。
それは当たり前の感情だった。憎いアイツにはない、穢れを知らない魂の叫び。

「ごめん・・・ユフィ・・・・・・」

小さな言葉は静かな部屋にこぼれ落ちる。ただ傍でルルーシュを見ていたC.C.は痛々しい表情を浮かべていた。
先に逝ってしまったユーフェミア。ルルーシュは顔をゆるゆると上げて黄昏の色を見つめる。いつにも増して茜色の空が泣いているように見えた。
きっと、いつかだけど、とルルーシュは願う。
違う世界で、何も苦しまなくても良い世界でと祈る。
 
また君に会いたい。

もう一度巡り会うためにルルーシュは立ち上がった。最後の戦いへと身を投じるために。
願わくば、ユーフェミアに安らかな眠りをと。
そして祈るはもう一度君に会えることを。
ささやかなルルーシュの祈りだった。



これも合同誌を作った時に書いたルルユフィです。
ユフィ追悼の気持ちで書きました。
このことと、シャーリーのことと、ロロのことがあって多分最初からゼロレクイエムを考えていたんだろうなぁって思います。
ユフィはその引き金の一人だったんだろうなって。
大切な人をたくさん失って、そしてルルーシュが選んだ道はあまりに哀しすぎました。