神様がいるのならば、どれだけ意地悪なんだろうと思う。
気づいてしまった、それはその仮面の下の顔。
記憶がある限りではそんな表情を見たことがない、それがユーフェミア・リ・ブリタニアの答えだった。
いつだって記憶の中の彼やその妹は笑っていたのだから。
「私は、ただ皆が幸せであるのならいいのです」
尤も自分が大切とする人――ルルーシュやナナリー、スザクや姉のコーネリア、兄のシュナイゼルとただただ笑っていられたらそれだけで十分だっ
た。それがわがままなのだろうか。
色鮮やかな、消え失せることのない記憶。考えが幼いと言われてしまえば身も蓋もないかもしれない。でも、信じること、願うことはきっと大人になっ
ても変わることのないものだとユーフェミアは思っている。
愛しい時間。
まるで宝石箱のような輝きがあるその記憶の奥底に待っていたのは悲しい再会。
小さな吐息は夜空へと吐き出され、ユーフェミアは輝く夜の星を仰いだ。仮面の下の顔。見慣れたその横顔は今でも忘れない。
―――――どうして。
ルルーシュがどうして『ゼロ』となったのかはわからないでもなかった。
でも、刃を自分に向けるなどと考えてもいなかったのだ。これは夢だと言えたらどれだけ幸せなのか。
あの色鮮やかな記憶のような時間は戻ってこないのだろうか。
「神様はずるいわ」
ユーフェミアの言葉に対して返す言葉など誰も持ち合わせてはいない。
ずるいと言ったところで変わることはない。自分の立場もルルーシュとの距離も。仮面の下に隠された顔の裏にあるのは冷たい微笑と、優しい微笑
み。どちらも彼そのもの。
どのような気持ちでいつも自分を見ていたのだろうかと思うとぞっと背筋が冷たくなった。あの頃のような瞳で見つめていて欲しいなんてワガママは言
わないから、せめて。
大好きな私の『兄』。
傍で笑っていて欲しかった。
あの時のように無邪気に笑っていて欲しかった。
ただ、それだけだった。
愛おしい、それはいつだって思っていること。
そして、いつだってそれは『愛(かな)しかった』。
半分同じ血が通っている限り、ずっとこの想いは変わらない。
「ずるくて、何も言えないじゃない」
一人呟く言葉は闇へと飲み込まれ、ユーフェミアは今頃異母妹であるナナリーの傍にいるであろう『兄』を想う。
たった一つのワガママを胸に。
笑って、その一言を呟いて。
終