――「夜の光ってやさしいよね」
そんなことを言っていたのは誰だっただろう。
近所のお姉ちゃんだっただろうか?
もう、そんな遠い過去忘れた。
空には星が広がっている。
都会の中でもちょっと見える、星。
「風間ぁ。どこ行く?」
隣を歩いていた斗真が尋ねる。
「んー。お前が好きなとこでいいよ」
そう言うと斗真は突然むくれた。
「さっきからずっと考え事してるしょ。俺の話も聞けって」
あーあ、こんなにふくれっ面になって。
かっこいいといわれてる顔が台無しじゃん。
「話を聞いて欲しい時は「聞いてください」だろ?」
そんな斗真に、突っ込む。
結果はわかってるのに。
「だー!!わかったよ。『聞いてください、風間さん』」
「よろしい。で?何?」
そうやって素直に応じるところが斗真なんだよなぁ。
ある意味感心する。
そう言う点ではハセジュンも変わらないか。
「だから、考え事してないで食べに行くとこ決めようって言ってるの!」
ムキになるところは相変わらずおこちゃまだ。
なんていったらもっとむくれるから、やめるが。
「じゃあ、冷やし中華でも食べに行くか」
俺が提案する。
斗真は「そうだな、夏だし」と言って頷いた。
いつもの行きつけの飯屋を目指し歩き始める。
「なぁ。さっきから何考えてんの?」
斗真は不思議そうな顔をして尋ねる。
「『夜の光ってやさしいよね』」
俺は突然声に出した。
「は?」
ますますわからんと言う顔をしてる。
そりゃそうだ。
「多分、昔近所に住んでたおねえちゃんの言ってた言葉だと思った」
補足をする。
空にはさそり座。
アンタレスの赤い光が輝く。
「ふぅーん。でも何で突然そんなこと言ったわけ?」
俺は「何でだろうな」と不思議そうに言う。
突然思い出したから。
「風間がわかんないんじゃ、俺もわかんねー」
ふと2人で空を見上げる。
ネオンの光があるせいでそこまで見えるわけじゃないが。
「でもこうやって見てると星っていいよなぁ」
「同感」
何となくしんみりする雰囲気。
それを破ってくれたのは斗真。
ぐーっ。
ガクッ。
2人でコケそうになった。
「お前〜!!いいとこで腹の音かよ」
「ごめん〜。でもそろそろ腹の虫が限界だから行こう」
そう言うと駆け出した。
光。
ネオンの光に、月の光。
星の光に蛍の光。
どれも何だかホッとするもの。
『夜の光ってやさしいよね』
その言葉だけが頭の中で響いていた。
夏の夜。
斗真と2人見上げた星を見ながら――……。
終