06. 夜の光


――「夜の光ってやさしいよね」



そんなことを言っていたのは誰だっただろう。
近所のお姉ちゃんだっただろうか?
もう、そんな遠い過去忘れた。
空には星が広がっている。
都会の中でもちょっと見える、星。

「風間ぁ。どこ行く?」

隣を歩いていた斗真が尋ねる。

「んー。お前が好きなとこでいいよ」

そう言うと斗真は突然むくれた。

「さっきからずっと考え事してるしょ。俺の話も聞けって」

あーあ、こんなにふくれっ面になって。
かっこいいといわれてる顔が台無しじゃん。

「話を聞いて欲しい時は「聞いてください」だろ?」

そんな斗真に、突っ込む。
結果はわかってるのに。

「だー!!わかったよ。『聞いてください、風間さん』」

「よろしい。で?何?」

そうやって素直に応じるところが斗真なんだよなぁ。
ある意味感心する。
そう言う点ではハセジュンも変わらないか。

「だから、考え事してないで食べに行くとこ決めようって言ってるの!」

ムキになるところは相変わらずおこちゃまだ。
なんていったらもっとむくれるから、やめるが。

「じゃあ、冷やし中華でも食べに行くか」

俺が提案する。
斗真は「そうだな、夏だし」と言って頷いた。
いつもの行きつけの飯屋を目指し歩き始める。

「なぁ。さっきから何考えてんの?」

斗真は不思議そうな顔をして尋ねる。

「『夜の光ってやさしいよね』」

俺は突然声に出した。

「は?」

ますますわからんと言う顔をしてる。
そりゃそうだ。

「多分、昔近所に住んでたおねえちゃんの言ってた言葉だと思った」

補足をする。
空にはさそり座。
アンタレスの赤い光が輝く。

「ふぅーん。でも何で突然そんなこと言ったわけ?」

俺は「何でだろうな」と不思議そうに言う。
突然思い出したから。

「風間がわかんないんじゃ、俺もわかんねー」

ふと2人で空を見上げる。
ネオンの光があるせいでそこまで見えるわけじゃないが。

「でもこうやって見てると星っていいよなぁ」

「同感」

何となくしんみりする雰囲気。
それを破ってくれたのは斗真。

ぐーっ。

ガクッ。
2人でコケそうになった。

「お前〜!!いいとこで腹の音かよ」

「ごめん〜。でもそろそろ腹の虫が限界だから行こう」

そう言うと駆け出した。
光。
ネオンの光に、月の光。
星の光に蛍の光。
どれも何だかホッとするもの。

『夜の光ってやさしいよね』

その言葉だけが頭の中で響いていた。
夏の夜。
斗真と2人見上げた星を見ながら――……。






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