とうとうこの日がやってきてしまうんだな、と思うのは俺山下智久。
色んなところで文句を言ってきたけど。
やっぱり来てしまうもので。
こういう時に痛感する。
“一歳”
と言う差。
こればかりはどうしようもないのだけど。
「ちえっ。置いてくなよな」
まるで小さなガキが置いてかれた母親を追うような心境。
わかってる。
後に生まれてきた者の宿命。
『卒業しないで』
って言っても彼は卒業して行くだろう。
あいつはそういう奴だし。
廊下を友達と歩き、着いた下駄箱で残ってるはずのない靴がある。
さっきさよならしたはずなのに、何で……。
俺は友達に先に行くよう促すと、もう一度Uターンした。
恐らくいるであろう教室に。
走って教室の前まで行くと1つの影が見えた。
「斗真……」
ポツリ、その名を呟いた。
1人のようだ。
俺は静かに教室に入る。
くすっと笑う斗真を見て俺は少しムカついた。
「なーに、1人で笑ってるんだよ」
俺はあきれた口調で返した。
斗真は苦笑いする。
「んー、いろんなことがあったなって」
俺は肩にかけてた鞄を机の上に置いた。
「まあな」
一言、言う。
それ以上は言わなかった。
斗真の視線がいつの間にか外に移っていた。
ああ、もうこうやって一緒に学校にいることもなくなるんだな――。
脳裏に浮かぶ思い。
寂しさがじんわりと体にしみた。
「もう、いなくなるんだな」
心の中で呟いたはずなのに、いつのまにか声に出していた。
改めて感じる寂しさ。
「そうだな」
言葉の重みを感じる。
彼の存在がなくなった教室というものがまだ想像できない。
仕事でいない日は確かにあったのだけど、だけどどこかにまた戻ってくるしという安心感があった。
それが、明日にはなくなってしまう。
「山下も来年には俺と同じ気持ちになるよ」
確かに一年待てばそうだろう。
「そうだな」
言うのは簡単なのだけど。
こみ上げる思い。
押さえきれなくなる。
「あー、もう何でだよ。何でこんなに一歳の差は大きいんだよ」
言うことはないだろうと思っていた本音。
斗真は驚いたように俺を見ていた。
そして何も言わず黙る。
なんか言えよ、斗真。
こう言う沈黙嫌いなんだよ、俺は。
「お前も早く卒業してこいよ」
何で無茶な答えしか言わないんだろう。
だけど、わかってる。
アイツの本音。
「言わなくったってわかってる」
机の上にあった鞄を持ち、今ごろ待ってくれてるであろう友達の元へと戻ろうと体の向きを変えた。
そして一言こう、付け足す。
「待ってろよ……俺が追いつくまで」
俺の本音。
斗真の言葉に対しての返事。
そう言うと教室を後にした。
もう学校へ来ることのない彼を残して。
夕陽は今日も夜を連れてくる――。
終