04. 残されし想い



窓から差し込む光。
陽のあたる教室の黒板。
着慣れた制服。
慣れ親しんだ机とイス。
手で少しなぞる。


“もう来ることないんだな……”


ふと沸き起こる感情。
校舎を最後にするこの日。
俺、生田斗真は放課後誰もいなくなった教室で別れを惜しんでいた。
友達が先生に挨拶してくると言ってたから、俺は1人教室に残る。
考えてみればあっという間だった。
入学した時は少し緊張してて。
でも、先輩には松潤がいたしそれにすぐに友達もできた。
一年後には山下たちも入ってきて。
……楽しかったな。
くすっと笑った。
走馬灯のように駆け巡る思い出。

「なーに、1人で笑ってるんだよ」

そう言って入ってきたのは山下。
少し呆れ顔で。
俺はそれを見て少し苦笑い。

「んー、いろんなことがあったなって」

俺は机に腰掛ける。
山下は肩にかけてた鞄を机の上に置いた。

「まあな」

言葉少なげにいう山下。
ふと外の景色に視線を向ける。
変わらないのは空だけ。
ゆっくりと動く雲を窓越しに見ていた。
ただ過ごしていた教室。
自分達の痕が残る机。
自分達が存在していたという歴史を刻み、残していく。
時間を忘れたようにはしゃいだ日々が嘘のような静けさ。
俺たちにかけがえのない時間をくれた、場所。
だいぶ使った制服のしわも。
少し汚れた鞄も。
ぼろぼろになった上履きも。

どれもかけがえのない思い出――


「もう、いなくなるんだな」

俺が思い出に浸ってると、そう告げる山下の声。
逆光で表情は上手く読み取れないけど。
寂しそうに笑ってるように感じた。

「そうだな」

俺も他には言わない。
言うと寂しくなるから。
しんみりとした夕方の教室。
夕日が一層そう感じさせる。

「山下も来年には俺と同じ気持ちになるよ」

俺の言葉に「そうだな」と小さく呟いた。

「あー、もう何でだよ。何でこんなに一歳の差は大きいんだよ」

山下は吐き捨てるように言う。
心の中の押し殺していた感情を爆発させて。
俺は何も言えなくなった。
『一歳』
この差は意外と大きい。
今更だけど。
その大きさを改めて痛感した。

「お前も早く卒業してこいよ」

無茶な言葉だってわかってるけど。
今、必要な言葉。

「言われなくったってわかってる」

そう言うと山下は鞄を持ち、教室のドアの方へと足を運んだ。
そうして振り向きざまにこう言う。


「待ってろよ……俺が追いつくまで」


言葉を残して足早に教室を去って行った。
俺はというと、自分ひとりだけが残った教室で。
「わかったよ」
と呟いた。

夕陽が差し込む教室で。
三年間の思い出に浸る俺と。
卒業まであと一年残す山下と。
2人の約束。

叶えられるのは、
一年先のこと―――。







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