窓から差し込む光。
陽のあたる教室の黒板。
着慣れた制服。
慣れ親しんだ机とイス。
手で少しなぞる。
“もう来ることないんだな……”
ふと沸き起こる感情。
校舎を最後にするこの日。
俺、生田斗真は放課後誰もいなくなった教室で別れを惜しんでいた。
友達が先生に挨拶してくると言ってたから、俺は1人教室に残る。
考えてみればあっという間だった。
入学した時は少し緊張してて。
でも、先輩には松潤がいたしそれにすぐに友達もできた。
一年後には山下たちも入ってきて。
……楽しかったな。
くすっと笑った。
走馬灯のように駆け巡る思い出。
「なーに、1人で笑ってるんだよ」
そう言って入ってきたのは山下。
少し呆れ顔で。
俺はそれを見て少し苦笑い。
「んー、いろんなことがあったなって」
俺は机に腰掛ける。
山下は肩にかけてた鞄を机の上に置いた。
「まあな」
言葉少なげにいう山下。
ふと外の景色に視線を向ける。
変わらないのは空だけ。
ゆっくりと動く雲を窓越しに見ていた。
ただ過ごしていた教室。
自分達の痕が残る机。
自分達が存在していたという歴史を刻み、残していく。
時間を忘れたようにはしゃいだ日々が嘘のような静けさ。
俺たちにかけがえのない時間をくれた、場所。
だいぶ使った制服のしわも。
少し汚れた鞄も。
ぼろぼろになった上履きも。
どれもかけがえのない思い出――
「もう、いなくなるんだな」
俺が思い出に浸ってると、そう告げる山下の声。
逆光で表情は上手く読み取れないけど。
寂しそうに笑ってるように感じた。
「そうだな」
俺も他には言わない。
言うと寂しくなるから。
しんみりとした夕方の教室。
夕日が一層そう感じさせる。
「山下も来年には俺と同じ気持ちになるよ」
俺の言葉に「そうだな」と小さく呟いた。
「あー、もう何でだよ。何でこんなに一歳の差は大きいんだよ」
山下は吐き捨てるように言う。
心の中の押し殺していた感情を爆発させて。
俺は何も言えなくなった。
『一歳』
この差は意外と大きい。
今更だけど。
その大きさを改めて痛感した。
「お前も早く卒業してこいよ」
無茶な言葉だってわかってるけど。
今、必要な言葉。
「言われなくったってわかってる」
そう言うと山下は鞄を持ち、教室のドアの方へと足を運んだ。
そうして振り向きざまにこう言う。
「待ってろよ……俺が追いつくまで」
言葉を残して足早に教室を去って行った。
俺はというと、自分ひとりだけが残った教室で。
「わかったよ」
と呟いた。
夕陽が差し込む教室で。
三年間の思い出に浸る俺と。
卒業まであと一年残す山下と。
2人の約束。
叶えられるのは、
一年先のこと―――。
終