「うまーい♪」
一人肉まんをほおばる。
秋真っ只中の11月の木枯らしの吹く夕方。
今日はオフの日。
「………ホントうまそーに食べるね」
半分呆れ顔をしながら山下は言った。
隣で美味そうに食べるのは、同じ学校の先輩であり仕事仲間であって親友でもある生田斗真である。
「だって、本当のことじゃん」
そう言ってはまた肉まんを口に運ぶ。
どう見ても年上には見えない、と思う。
特にこんな時は。
こうやって学校の帰りにのんびりするのは久々だ。
というのも、いつもどちらかが忙しかったり、仕事が入っていたりしていたのだ。
「もう秋だねぇ」
山下はしみじみと言う。
正確に言うと、周りにある木々の紅葉と肉まんを食べる斗真を見て思った。
………どうしてこんなにも斗真が肉まんを食べる姿に紅葉が似合うのだろうと、少し論点がずれることを考えていた。
ぼんやり考えながら歩く山下を、斗真は肉まんをほおばりながら横目で見ていた。
“いつも気づかないようで、結構ちゃんと見てるよね”
いつか山下が斗真に言った言葉だ。
そうなんだろうか?
自分ではよくわからないが。
そんなことを思いながらまた一つ肉まんを口に運ぶ。
「何いきなりセンチメンタルな気分になっちゃって」
斗真は半分茶化すように言った。
山下は「いいじゃん、別に」と返す。
秋はセンチメンタルな季節だとよく言われるけれども、山下もそうなんだろうか。
ぼんやりとそんな考えを巡らせていた。
しばらく無言で歩いていると斗真はポツリ、言う。
「こうやって制服着て並んで歩くのもあとちょっとだな」
斗真は肉まんの最後の一口を口に運ぶ。
「そうだね」
山下はそう言うと後の言葉が続かなかった。
実は斗真が言った言葉を山下はずっと思っていたのである。
斗真は現在高校3年生。
そして今は11月。
当然高3は1月末の学年末テストが終わると、補習の人達以外は学校に来なくなる。
来るのは卒業式の日含め2、3日だけになるのだ。
あと残り3ヶ月程度なのである。
山下にとっては淋しいことだった。
だが、それは絶対に言わない。
言うのはとても恥ずかしいし、何よりもそれを認めるのが嫌なのだ。
「残り3ヶ月、仲良く帰ろーねー♪山Pv」
斗真はニコニコしながら言う。
「やだね。斗真うるさいもん」
山下は素っ気なく言う。
「またまたぁ。素直じゃないなー、山Pは♪」
……っっ絶対にからかわれてるっっ!!
わかってて言ってるのだろう。
斗真は結構勘がいい。
「ムカツクっ!!」
そう言うと山下は歩く速度を速めた。
素直じゃないなぁ。
斗真はポツリと漏らした。
時々山下は図星なことを言われたりすると言葉が少なくなるため、慣れるとそれがわかりやすい。
山下がそうやって思ってることは何となくわかっていた。
自分だっていれるものならもう少し学校にいたい。
学校の友達とも離れるのは淋しいのだ。
でもそんなワガママも言ってられないのも事実。
さっき言った“こうやって制服を着て並んで歩くのもあとちょっと”と言ったのは、前々から斗真自身が思っていたことでもあった。
まぁ、ちょっとカマをかけてみたのだが、それがまさかヒットするとは斗真自身もちょっとびっくりしていた。
そっか、山下も同じことを思っていてくれたのか……。
そう思うと嬉しかった。
淋しく思っていたのは自分だけじゃないのか。
「おい、待てよ〜」
少しばかりできた距離を縮めるかのように、斗真はかけ足で山下の後を追う。
あたりはもう真っ暗。
月が少し昇り始め、星が少しずつ姿を現し始める。
街灯が照らされる中、斗真と山下は二人肩を並べて少し寒い風に吹かれながら駅へと向かった。
暖かい家族が待つ我が家へ――――
終