02. あの日あの時


今年の3月。
卒業していった一人の友達。
今でもその時のことを覚えてる。
それはまるで自分がカメラになってその時を覚えてるように、
一つ一つの場面が写真のようだった。
色はセピア色の明るい感じと言うイメージ。
その場面場面が太陽の光でまぶしく感じた。

「斗真」

彼―松本潤は俺の名前を呼んだ。

「何?松潤」

俺は返事をする。
松潤はふっといつもと変わらない笑顔を向けた。



「お前は変わるなよ」



松潤の言ってる意味がわからなくて、首をかしげた。
松潤は苦笑いする。
ああ、いつもの癖だって。
そう言う時の松潤の苦笑いは。

「どーゆー意味?」

俺が尋ねると、こう答えた。

「いつかその言葉がわかる時が来るよ。だから今はそのままの意味でとっとけ」

やはり意味がわからない。
なぜ、松潤はこんなこと言うんだろう。
だけど、自分の口は正直だった。

「じゃあ、とっとく」

そう言うと松潤は鞄を持って俺に背中を向けた。
その背中はいつもより広く感じて。
なんだか切なくなった。

「じゃあな」

もう学校で会うことのない人。
それ以上何も言わず教室を去る松潤。
松潤の背中が見えなくなるまで見送った。
仕事に学校に毎日追われてた日々。
彼の努力を知ってるから。
だから、気持ちよく卒業していって欲しい。

けど。

淋しいと思うのも事実で。
そんな心の葛藤が、嫌だった。

これは松潤が卒業する前の教室での最後のこと。
そして自分もあと数ヶ月で卒業する。
隣に座る山下は俺と同じ気持ち抱いてくれてるのだろうか?
ふとそう思う。

「何だよ」

山下は俺の視線に気づき、眺めていた雑誌を閉じる。

「別に」

そんなやりとりを見ていたハセジュンはふとこんな言葉を漏らした。

「もう数ヶ月でこんなやりとりも見れなくなるんだなぁ」

案外俺と同じようなことを考えていたのはハセジュンだった。

「何、俺がいなくなったら淋しいわけ?」

ハセジュンに問い掛ける。

「そりゃそうだよ。結構楽しかったもん」

急にしんみりとした空気が広がる。
山下は無言を決め、ハセジュンはぼやく。
俺はそんな二人を見て、何となく松潤のあの時言っていた言葉がわかったような気がした。

―――お前は変わるなよ。

松潤の声が頭の中で響き渡る。
ああ、わかったよ松潤。
俺はふっと笑う。
その笑いの意味がわからず山下とハセジュンは訝しげな視線を投げた。

「さ、帰るか」

俺が言うと何も言わず二人とも鞄を持ち、立ち上がる。
校舎の外はもう夕陽が沈みかけ、月が出ていた。
今日も冷えるだろうな。
そんなことを思って三人一緒に校舎を後にした。

――卒業まであと3ヶ月。そんな日の夕暮れ。






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