寄せ合う瞳


ただ見ているだけでいい。
彼女を見ているだけで、心が落ち着くから―――。




桜の咲く季節になり、あたたかな風が心地よく吹く。
前日、書類を片付けていたらいつの間にか今日と言う時刻になっていた。
……また、徹夜だ……。
ふぅっとため息をついた。
さっきアスランとカガリは出かけてしまったし。
ラクスは何やらキッチンでハロと一緒に料理をしていたのを見かけた。
僕は一人、ベランダに出て、ベンチに座る。
8分咲きと言ったところだろうか。桜が咲いていた。
うーんっと背筋を伸ばす。
あったかいなぁ……。
そう思ってると、何やら眠気が襲ってくる。
心地よい風に揺られながら、僕の意識は遠ざかっていった――――…。





「…ラ」




誰?僕の名前を呼ぶのは。




「キラ」




まただ。でも、どこかで聞いたことのある声。




「キラ」





ぼんやりと瞼を開ける。
すると、目の前には彼女の顔が映っていた。



「キラ、こんなところで寝てないで、ベッドに行きましょう」



穏やかな笑みで、ね?という彼女。

あれ?寝てたんだ。僕。


「さ、起きて」


彼女―ラクスは僕の手を取った。
間近にラクスの顔がある。
その時、ふっと風が通り抜けた。
甘い香り。
ラクスの髪から香る。
ラクスの顔を見て、ちょっと赤くなった。



「?キラ?どうしましたか?」



ラクスは不思議そうに、僕の顔を更に覗き込んだ。
彼女の息づかいが届く、そんな距離。
ますます赤くなる。
そ、それ以上は近づけないで欲しいんだけど……。
寝ぼけていた頭が一気に活動し始めた瞬間だった。



「い、いや……なんでもない……」



最後の方の語尾は消え入るような声だった。
どうようしてる僕に、ラクスはクエスチョンマークを浮かべる。

桜の花びらが舞い降りてきた。
「まぁ」と言ってラクスは一つ、花びらを手で受け止める。
その仕草がなんとなくかわいくて。
僕は彼女の姿をただ見ていた。
「素敵ですわね」
そういって笑うラクス。
この笑顔が好きなんだよね――、僕。
再認識する、彼女への想い。


「昼食は桜を見ながら食べましょうか」


ラクスは楽しそうに言った。


「そうだね」


僕もつられて笑う。



桜の咲く季節、春。
それは別れの季節でもあり、新しく何かが始まる季節でもある。
不安と喜びを両方持つ季節。
桜の木々の合間から日差しが注ぐ。
暖かい雰囲気の彼女に似合う、そんな季節だなと思っていた。





END