約束













「小さい頃よくゆびきりげんまんってやったよねー」
隣に座る親友に問いかけ、親友は「ああ、そうだったな」と笑って答えた。
その約束は大抵、

『嫌いなものを食べられるようになる』

とか

『悪いことはしません』

とか

『明日遊ぼうね、約束だよ!』

とか……。



まぁ、他愛のないものであって。
そんな頃の約束なんてあってないようなものなのだけど。
「あら、私も昔お友達と同じことをしましたわ」
「私もよくしたなぁ」
彼女らも例外ではないわけで、二人ともその頃を思い出してか「あんな約束とか…」とぶつぶつ呟く。
久々に4人でのティータイム。
どうでも良いような話をずらずらと話しながらのんびりとした時間を過ごしていた。
そんな穏やかな時は、あっという間に過ぎていく。






男性陣はいつの間にか仕事の話をし始め、残された女性陣はと言うとそのまま他愛のない会話を続けていた。
「ラクス、さっきの約束で思い出したけど」
「ええ」
「ラクスとキラってどこまで話が進んでるんだ?」
唐突な質問に思わず言葉を失った。
「と、いいますと?」
恐る恐る質問し返すと、あっけらかんとした表情でカガリは言葉を継いだ。
「んー、結婚とかそう言う話は出てきてるのかなーって」
予想しなかったわけではないが、その二文字に何となく恥ずかしさを覚える。
「話がなかったと言えば、嘘になりますけど……具体的には……」
思わず手元のティーカップの中身をじっと見つめ、揺れた波紋が波打つ姿を目にした。
「そっか」
ふーん、そうなんだーと言って一人で納得してる姿にどうも釈然としなかった。
「では、カガリはどうですの?」
「わたしか?」
「ええ」
ニッコリと笑って、カガリを見据える。その瞳には多少逡巡してるようにも見えた。
「ま、まぁ…私もラクスと同じだ」
そう言ってカガリはカップを取り、少し温くなった紅茶を喉へと押し込めた。
お互いどっちもどっちなのだろう。
ちらっと恋人達の顔を覗うも、二人とも何だか真剣に仕事の話をしたままである。
そうして一つ、ため息をついた。

「なぁ、ラクス」

「はい?」

「キラとラクスが結婚して、子供が生まれるとするだろ?」

「ええ……と言いましても、先の話だと思うのですが」

ラクスは訝しげな顔でカガリを見つめる、けれどカガリは続ける。

「そうしたら、一番に赤ちゃん抱かせてくれよな!」

「え?」

「な?」

いいだろ?と懇願するカガリを見て、思わず何て答えたら良いのやら言葉を見つけずにいる。
がしっと自分の手を握って、な?と同意を求めて。
一体彼女に何があったのだろうか?

「え、ええ……」

たじろぎながらもラクスは一瞬あることを脳裏に浮かべ、くすりと笑った。

「ホントか?」

「ええ、もちろんですわ」

にっこりとした微笑をカガリに向ける。その裏にあるものはどのような想いなのか。

「では、カガリ」

少し浮かれ気味なカガリにラクスはそのままの笑みで問うた。

「なんだ?」

「カガリが子供を生みましたら、その時は私に一番に抱かせてくださいね」

「え……」

カガリは思わず言葉を飲み込み、あの、えっとと言葉を濁した。
まさか自分にそう問われるとは思ってもいなかったらしい。

「ね?」

ラクスの満面の笑みにカガリは「う、は、はい」と少々冷や汗を浮かべ、答える。

「約束ですわよ」

そう言って右の小指を差し出し、はいとカガリを促した。
カガリも倣って小指を絡める。
小さい頃、友達とそうしたようにまたここで約束を誓うとは。



「やくそくげんまん、嘘ついたら針千本のーます、指切った♪」



絡めた指を離し、瞳が交差すると互いに笑みがこぼれ、思わずくすくす笑い始める。

「約束、違わないように」

「もちろん♪ラクスもな!」



女同士の約束。
いつか、来るべき未来のきょうだい。
女であるからこそ、できる約束でもある。
くすくす笑い合うラクスとカガリの姿に、思わずキラとアスランは訝しげな顔をして見つめていたとか。
そんな遠くない未来の約束は、この二人には知らせず自分達の胸に秘めた。


その約束は数年後、叶うことは。


未だ、この二人に知る由もなく。
当然ながらこの二人の恋人達も知るはずのないこと。





END