【hemishere】の真生さんより誕生日プレゼントで頂きました♪
Victor's Laurel
戦争締結を祝っての式典。
プラント・地球双方の主催によって、大々的に行われたそれには、キラ達、第三勢力側だった人間まで招待された。
コーディネイター側からして見れば、核からプラントを守ったことを。
ナチュラル側からして見れば、ジェネシスの軌道を地球から逸らしたことの、双方の大義名分が存在したけれど、一方で二つの種族が歩み寄るきっかけになればという肯定的な理由が確かにあった。
彼らは、ナチュラル・コーディネイターという隔たり関係なく、戦争を終わらせるために戦った。
軍服や種族、立場を超え、たった一つの目的のために。
戦争締結に大きな流れを持っていった、暫定プラント評議会議長であるアイリン・カナーバは彼らに高い評価を下していた。
シャンデリアの光が降り注ぐ会場で、あらゆる視線に晒されるのを厭うように、キラは壁際に添って立ち、声をかけてくる招待客に応じる。
元々の立場から、場馴れしているアスランやカガリ、ラクスのように振舞うことは到底出来そうになく、相反するように、話しかけられる人の数の多さに疲れが滲み出ていた。
どちらの側にしろ、キラには多大なる関心を寄せている。
本当に中身は普通の少年だと分かると、微笑ましげに、時に痛ましげに人々は通り過ぎて行く。
しかし、輪は途切れることなく、それを阻んだのは一人のウェイターだった。
「……、…」
彼の言付けに、首を縦に振ることで了承の意を伝え、周りに一礼して中央に歩き出す。
その背を、人々は眩しげに見送った。
これから行われることは、名誉あることなのだろう。
キラにとっては、また違う意味であったけれど。
拍手と喝采と共に迎えられる。迎えるのは、プラントの歌姫。
彼女はキラの姿を見とめると、やわらかく微笑んだ。
表情の固かったキラは、それを見て幾分がやわらげたが、ラクスの手にしている物を見て、胸の重くなるのを感じた。
仕立て上げられる英雄の名を、自分はこれから背負っていかなければならなかった。
必要だった。
これからの時代に。
それは、ザフトを父に持ったアスランでは、ナチュラルにとって都合が悪く。
オーブの意思を引き継ぐカガリでは、双方に名が知れ渡っておらず。
プラントの歌姫は、実際に手を血で染めていないことから、白羽の矢が立ったのは。
第一世代のコーディネイターというのが、また都合が良く、必然的にキラの役目になった。
辞退しようと考え、しかしそれは彼らに更なる重荷を背負わせることになると知れて、自分に出来ることならと名ばかりの「英雄」を引き受けることになった。
あの二人は…アスランとカガリは、いずれナチュラルとコーディネイターの未来を担う存在になる。
だから、せめて。
人々が見守る中、礼儀に従って、一段高いところにいるラクスの白い手を取り、口付けをおとす。
一度、視線を合わせ、ゆっくりと目を伏せた。
流れに添ってラクスの左手が動き、手にしている勲章を、キラの胸に付け―――
「歌姫より、祝福を」
髪を掻き上げられ、額に口付けられる。
羽のような感触は、いたわるような、癒しを与えるように。
プラントには、貴族はなく、また王族とて存在しなかった。
同族意識の強い彼らは、それらを嫌って平等を規した。
その中で歌「姫」と名づけられた彼女は、特別な存在だった。
彼女に対する敬意と、羨望を込めて、彼女の祝福は、神に等しき物である。
瞬間、夢から覚めるように、割れるような拍手と声が包み、瞼を上げたキラは、重さを確かめるため、胸の勲章に指を滑らせる。
痛みを覚えるような表情に気づいたのは、数人だった。
無礼講となったパーティで、時折歓声の声が上がるのには背を向けて、キラはバルコニーで一人、夜の空を見上げていた。
手には、先ほど与えられた勲章が、月明かりを受けて鈍く光る。
冷たい感触と、外気に体温を奪われるのを感じながら、キラは無感動に勲章を握り締めた。
軍人でありながら、軍人ではなかった自分に、これの価値は分からないけれど。
犠牲となった、自らが殺めた者を忘れないための戒めには、相応しいと自嘲気味に笑う。
白く穢れに染まらずにいる手から、渡されるには皮肉な物であった。
と、見透かしたように頬にふれる指先に、後ろを振り返れば、いつの間にかラクスが傍に来ていて、キラは驚いたように目を見開いた。
ラクスはあえやかに微笑むと、バルコニーに手を添えてキラの隣に立つ。
「……大丈夫?」
抜け出してきて。
言えばお互い様ですわ、と返され、自分を棚に上げていた事に気づいたキラは苦く笑った。
一方で、勲章を見つめる眼差しに、ラクスは遠い日を思う。
何時の日か、彼とプラントで過ごした、仮初の幸せの日々を。
過去の自分の行為を振り返り、苦しむ瞳に、今の彼を重ねて、ラクスはそっと吐息交じりに視線をずらした。
同時にカサリ、となる音。
下方からした音につられるように見れば、手にしている物からだと気づく。
これは、彼にとって、その手にあるものと同じように重荷にしかならないのだろうかと。
「それは…確か…」
見覚えのあるそれに、キラはラクスに声をかけるが、半端に切らしてしまう。
真っ直ぐに、自分を見、目を伏せた彼女に合わせて、正面から向き合って。
ラクスは、彼女にしてはためらいがちに、それを差し出した。
歌姫を手に入れた彼に、と。
どこまで本気か分からない冗談交じりの声で、渡された月桂樹の冠を。
「歌姫からではなく、「私」からこれを受けとってくださいますか?」
驚いたように目を瞬かせたキラは、しかし、正確にその意図を掴み、答える代わりに優しく笑うと、浚うようにラクスを抱き上げ、バルコニーに腰かけさせる。
長く淡い髪が腕に絡まり触れるのに、キラはくすぐったそうに目を細めた。
安定が悪く、あやうく真下に落ちてしまうそうになるのを、見ない振りをする。
二人でなら、それも悪くないと思ったのは、互いに胸に仕舞って、支える腕に力を込めた。
「キラ…、」
見下ろす位置にある紫の双眸と視線だけで笑んで、ラクスは手にしている冠をそっと彼の上にかざす。
甘い香りが、掠める。
古来より、伝わる栄光の王冠。
冠の花びらが一欠けら、祝福するように、二人のあいだにおちた。
歌姫を手に入れた彼への月桂冠。
それをラクスに差し出したのが誰かは分からないが、その策士的な行為に、二人を見守っていたアスランとカガリは、笑みを浮かべる。
失うばかりの戦争によって、手に入れた二つの勲章。
歌姫から渡された英雄の称号と。
愛しい人から受け取った、歌姫を手に入れたことの「証」
キラにとっては、後者にこそ意味がある。
月に見守られ、月の名を持つ花に祝福を受けて、二人は、はにかむように笑んだ。
二月十六日
誕生花 月桂樹(Victor's Laurel)
花言葉 栄光・輝ける将来・勝利・名誉
fin
誕生日祝いに頂きましたvありがとう!真生さん♪
この小説を頂いた時に、「あー、そう言えば自分の誕生日の花言葉これだったなぁ」と思いました。
月だったらさくら草なんですが。月桂樹……私にはもったいない言葉だな。
小説、どうもありがとうございました!このお礼はまた今度。プライベート共々これからもヨロシク♪