*「Andante」の中の小説の別バージョンです



tears





「なんだよ、その面は」

アイツは私を見るなりそう言った。

「俺が恐い?珍しい?大丈夫だよ、ちゃんとつながれてっから」

そう言って繋がれてることを見せる。
私そんなの見たくない。
それよりも、何で。
何でコイツに見下されなきゃならないの?


「つーか、お前また泣いてるの?なんでそんな奴がこの船に乗ってるんだか。」

煩い。
私の気持ちなんて知らないくせに。

「そんなに恐いんだったら兵隊やってるんだか?」

好きでやってるんじゃない。
彼も残るって言った。
みんなも残るって言った。
私だってキラばかりに負担かけたくない、だからって思った。
だから、なのに……。
目からつっと雫がこぼれた。

ふと視線を移動すると、机の引き出しにナイフがあった。
ああ、あるんだ……。
ふとそんなことを思っていたときだった。


「あぁ、それともバカで役立たずなナチュラルの彼氏でも死んだか?」


私の中でぷっつりと何かが切れた音がした。
机の引き出しの中にあるナイフを取り出す。
もう、無我夢中だった。


あんたに何がわかるのよ。
私の気持ちなんか知るわけないくせに。



トールは……こんな奴に……!!


ナイフが顔の横に逸れる。
刺せなかった。
枕に刺さったナイフをまた引き抜き、アイツの顔目がけてまた刺す。
でも、また逸れた。



なんで。



こんな奴に。





トールはっっ!!!





何もかも忘れた。
あの人を返せ。
返してよぉ。


「ミリアリアっ!!」


サイの声が聞こえた後に私は腕を取り押さえられる。


「やめるんだ、ミリィ!!」


何で?
サイは悔しくないの?
なんで、こんな奴がここにいてトールがいないなんて。
許せなくないの?


「離してっ!」


私は必死でジタバタした。
何で、止めるのよ。



「ミリアリア!!」


サイの声が頭上から響き渡る。

だって、悔しいじゃない。

トールはココにいなくて、コイツがいるだなんて。


「トールがっ…トールがいないのにっっ!何でこんな奴…こんな奴がココにいるのよ!!」



私は叫んだ。
悔しい。
悔しいよ。
止めどもなく出る涙。
ぽとり、ぽとり落ちていく雫。




「何で、トールが…トールがいないのに…なんで……」






返してよ、私の大事な人。





私の、愛する人――……







END