祝福されし二人
衝撃の事実を知ったのは戦時中。
ひょんとしたことからお互い双子だと言うコトがわかった。
キラ・ヤマト。
カガリ・ユラ・アスハ。
二人とも育ちが違うせいか、二人とも確かにそっくりなのに気づかなかった。
これはそんな二人の誕生日にまつわるちょっとしたお話―――――・・・・・・
「確かにそっくりなんだよな」
ソファにくつろぎながら親友であるアスラン・ザラは言う。
「そうですわね。何で私たち気づかなかったのでしょう?」
プラントの歌姫と称されるラクス・クラインは首を傾げながら、先程淹れた紅茶を一口口つけた。
「まぁ、性格が全然違うから・・・かもしれませんけどね」
苦笑いしながらアスランは答える。
「あら、アスランくんはそう思うの?」
くすくすと笑ってキラの母がお菓子を持って現れた。
「まぁ、そうかなって」
「あら、でもあの二人意外と似てるわよ」
「キラとカガリが、ですか?」
ラクスは不思議そうに尋ねると、ええと頷き、また笑みを零す。
アスランもラクスも不思議そうにその笑顔を眺めていた。
「母さーん。これ本当に着るのー?」
叫びとも言うべきキラの声が部屋へと響き渡る。
「ええ、そうよ。カガリさん、服のサイズ合ってるかしら?」
「あ、合ってますけど・・・・・・これ、本当に・・・・・・?」
「ええ、二人とも着るまで出てきちゃダメよ」
「母さーん!」
キラの悲鳴はキラの母に届くことはなく、当の母親はくすくすとまだ笑みを絶やさない。
アスランとラクスは何がどうなってこう言うことになってるのかわからず、ただ二人の登場を待った。
今日は、5月18日。
キラとカガリの産まれた日だった。
「もう、これでいいわけ?母さん」
そう言ってドアを開けるのはキラ。その格好を見てアスランもラクスも驚きの色を浮かべた。
普段着慣れないこげ茶色のスーツがそれを証明する。
「キラ?」
ラクスは驚きを隠せないその瞳の視線をキラの瞳へと移した。
「これ、やっぱりどうかと・・・・・・・・・」
そう言ってカガリはドアの外から入る。
「カガリ・・・・・・」
アスランはその姿を見て絶句をする。
黄色い色の少し落ち着いたデザインで、少し濃い目の黄色のスカーフをまとっていた。
「あ・・・・・・・・・」
カガリもキラも自分達の格好に驚いたと同時にそのつくような視線の先を確認する。
「二人とも良かったわー。サイズぴったりね♪」
「ははは・・・・・・・・・」
キラは苦笑いを浮かべる。カガリはというと照れて顔を真っ赤にしていた。
「この服着させてどうするのさ、母さん」
抗議をするキラに母は少し角度を変えて少し淋しそうに笑ってこう言った。
「あなた達の父親と母親が婚約した時の服よ」
「「え?」」
キラとカガリは同時に声をあげる。アスランとラクスはまた一つ増えた驚きに戸惑っていた。
時を遡ること20年程前。
若い二人の研究員は、希望を片手に研究に没頭し、そして新たなる人類への道を進めていたこの二人に転機が訪れようとしていた。
二人の両親や家族、友達が見かねたのか二人に服を贈ったのだった。
「ねぇ、これって・・・・・・」
「そうだな、これはみんなからのメッセージってことだろうな」
苦笑いしながら二人はその服を受け取った。
周りの情勢が悪化する中、二人にとっての約束を誓い合うその日に着て欲しいとの願いを受け入れるその二人の笑顔は。
その未来に来るべき日のことなんて微塵も感じさせない笑顔を浮かべる二人の姿があった。
そして数年後。
キラとカガリがともに生まれ、そして目まぐるしく周りの情勢は悪化の一途を辿る。
キラとカガリの母親は危険を察知し、妹であるキラの母親に二人の未来を託す。
その数週間前、大事な思い出を詰めた箱を送っていた。
その中にこの服が託されていたのを先日部屋を掃除していたキラの母親は思い出したのである。
「あの頃はね、本当にひどかったの。姉さんも多分、二人の未来を思ったからこそ私に託したんだわ」
「母さん・・・・・・」
「二人の新婚生活はね、研究に没頭しながらだったけれど、幸せだったんだと聞いているの」
一つため息をついて、また言葉を探した。
「二人の幸せは、あなた達二人が幸せになることだと思う」
「おばさま・・・・・・」
カガリは何か感動を覚えたのか、少し涙目で呟いた。
「本当はね、キラと一緒にプラントへ行けたらって思ったことがあったの。けれど私も彼もナチュラル。
それは敵わないってわかってたから、ヘリオポリスへと移ったの。
キラはアスランくんのことすごく慕っていたから、別れさせるのはかわいそうだってわかってはいたんだけどね。
カガリさんのことはいつも気にしていたわ。でもウズミ様からは元気でやっていると聞いていたから安心していた。
この二人が出会うのはもっと先だと思っていたけれど・・・・・・まさかこんな形で出会うなんてね。予想外だった・・・」
皆黙り込む。
二人の出会いは戦場で。
出会うには似合わない場所。
そして運命の歯車はこの時動き始めたと言っても過言ではない。
二人の運命が動き出したと同時にこの友人達の道もそれへと続いていた。
「この二人を支えてね、アスランくん、ラクスさん」
「おばさん・・・・・・」
「おばさま・・・・・・」
「特にね、キラは甘ったれに育ったから・・・・・・アスランくんはわかってると思うけれど」
またくすっと笑う。先程の暗さの笑顔は見えない。
「二人とも育った場所は違うのに、根底は似てるの。一度決めたことは曲げないところは特にそっくり。姉とも、そっくりだわ」
「え?そうなの?」
キラは驚いて言う。ええ、と頷いた母を見つめた。
「今日、この服を着てもらったのはね、二人にこれを貰って欲しかったから」
「母さん、それって・・・・・・」
「ええ、二人に唯一の形見を託すわ」
「おばさま・・・・・・・・・」
カガリは涙ぐんだ瞳を見せた。それを見てキラの母は頷き、視線をアスランとラクスへと移す。
「この二人をよろしくね、アスランくん、ラクスさん」
「はい・・・・・・」
「わかりましたわ・・・」
アスランもラクスも頷く。
二人のよき友人として、二人のよき理解者であり、そして大事な人たちでもある。
これからの未来を背負って歩く大事なパートナー達。
平和な世へ、託された未来を現実へとするために。
「さ、辛気臭い話はここまで。パーティーの準備するから手伝ってくれるかしら?ラクスさん」
「はい!」
「あ、母さん僕も手伝う・・・・・・」
「今日の主役は休んでなさい。いいわね?」
迫力のある顔をする母親に逆らえずキラはまた座った。
キラが座ると同時にアスランが立ち上がる。
「おばさん、これ運べば・・・・・・?」
「ええ、お願いね」
何もなかったはずのテーブルの上には色々な料理が置かれ始める。
と、暫くするとキラの父親が帰ってきて家の中は賑やかになる。
料理がほぼテーブルの上に置かれると席に着いてクラッカーを鳴らした。
「Happy Birthday! キラ、カガリ!!」
二人の生まれた日。
二人の母親が託した願いは心に刻まれる。
きっと、そこには。
深くつながれたその絆が確かにあると信じて――――・・・・・・・・・
END