好き、ですか?








彼女は突然聞いてきた。



「キラ」




「はい?」





「好き、ですか?」












僕は思わずその言葉に吹き出した。
頭の中が混乱する。
彼女はなぜそんなことをいきなり聞くのだろう。
女心はわからない。




「え?」





自分の答えに、目の前にいる彼女は再び問う。




「ですから、好き、ですか?」




彼女の真剣な瞳に思わず怯んだ。



「え、あの……」


真っ赤になっていく顔。
自分でも温度がみるみる上がっていくのに気づいていた。




「このクッキーのことですわ」




そうしてふわりと笑う。
先ほどまで食べてたクッキーを指して彼女は言った。
そっか、クッキーか。
半分安心しつつも、ちょっと残念に思う自分。



「ええ。おいしいです」



そう答えるとラクスは「良かった」と言い、一人ごちていた。
今日はラクスと二人きりで自宅のリビングにいた。
姉であるカガリは親友のアスランとデートらしい。
とは言っても本人に「デートなの?」と聞くと、真っ赤な顔して「違う!」と叫んでいた。
姉なりの精一杯の強がりだろう。アスランもその状況を楽しんでいるのか、まだ告白していないとのこと。
でもすごく自然でお似合いだなと思う二人。
どちらも自分にとって大事な人。

そして、目の前にいる彼女も自分にとって大切な人――。



「これ朝から私が作ったものなんですの」



にこにこと笑いながら紅茶を淹れる。
どうりで。朝からいいにおいがすると思った。
半ば自分で頷いていた。
戦争が終わり、ザフト、連合共に疲れきっていた。
そのなかでも戦争中に第三勢力であったオーブが今台頭している。
前首長の娘であるカガリや、その勢力の中で出てきたラクス、共に戦っていた僕とアスランは、
休む間もなく働いていた。特にカガリは忙しいらしい。
それでも疲れているところを見せない姉に僕は感心する。
そんなわけだから四人での共同生活のような形で生活していた。
特にアスランとラクスは両親共に戦争にて亡くなっていたのだから。
僕はと言うと両親とも住むことを考えてはいたものの、色々なことを考えて結局今の形をとった。
たまに遊びに来る両親。特に母とアスランが楽しそうに話しているのが印象に残っている。
たまたま今日は四人揃ってオフだった。
とは言えど、明日からはまた元の忙しい生活が待っているのだ。
今日くらい、ゆっくりしたい。
そうしてラクスとの会話に戻る。



「へぇ〜。うん、すごく美味しい!」



「良かった。朝からカガリと二人で作ったんですのよ。カガリなんて文句を言ってましたけど」



くすくすと笑う。
砂糖菓子のような彼女。だが、芯はしっかりとしている。
僕にはない、強さ。




「なんで、またカガリと?」



僕の問いにラクスはこう言った。



「『今日、出かけるから、たまにはアスランに何か作ってやってもいいかな…って』と言ってましたわ」



ラクスの答えに自分はちょっと苦笑い。



「全く、素直じゃないんだから」



ちょっとばっかし呆れていた。
ホントこう言うことには奥手なんだよなぁ、カガリは。
ラクスの淹れてくれた紅茶を飲みながら思う。



「好きですか?」



また突然ラクスが尋ねた。
きっと今飲んでる紅茶のことだろう。



「ええ。好きですよ」



そうニッコリと笑うとラクスはこう言葉を付け加えたのだ。





「私のことが」





「ええ……ってえぇぇぇぇぇっ!!!!」





ラクスはにっこりと笑う。
僕は一気に顔を赤くさせた。



「ふふっ。キラ、耳まで真っ赤」




いつも使う丁寧な言葉はなく。
ラクスはいつにも増して楽しそうに。



これだから。






ラクスには敵わない―――。





「私も好きです」





ラクスは僕の隣に来て、頭を僕の肩に預けた。
そんなラクスの頭に自分の頭を預ける。




「僕も」







日差しが差し込む午後。
あたたかな光に包まれている休日のこと。
小鳥のさえずりを背中で聴きながら――……





END