It's Smile!


「あんた、なんて顔してるのよ」


突然目の前に現れた少女を見つめ、褐色の肌が一瞬揺らいだ。
それはあまりに偶然すぎて、思わず瞬きを繰り返した、それだけのこと。
少女は最後に会った時より成長したが、でもそのまっすぐな瞳は変わらなかった。
一番最初に出会った時と変わらぬ瞳、その瞳と心の真っ直ぐさに惹かれたのは随分と前の話。

「いや・・・お前がいるとは思わなかったから・・・・・・」

「何よ、あたしがいちゃ悪いわけ?」

「そうは言ってないけどさ、何でまた危険な戦場に」

「またお前って言ったわね。あたしの名前はミリアリア、そうでしょ、ディアッカ」

久しぶりに少女の口から奏でられた声にディアッカは思わず聞き惚れた。
最後に会ったのはいつだっただろうか。もう遠い日の記憶のようだとディアッカは思っていた。

「相変わらず手厳しいな、ミリアリアは」

「それはトーゼン」

ディアッカは不意に手を伸ばしてくせっ毛のある茶色の髪に触れた。
ミリアリアは不思議そうにそれを見つめる。

「ディアッカ?」

「戦場には帰ってくるな、って言ったのによ」

苦笑い、その後に出てくるのは安堵のため息。
またこうして話ができるとは思っていなかった。道を別れたあの日から。
ディアッカは肩を竦めてミリアリアを見つめた。

「・・・・・・戦場でレンズ越しに戦争してるの見て、色々と考えたの。
そんな時にキラ達と会って、キラの覚悟知ったらあたしもアークエンジェルに乗っちゃった」

一呼吸すると形良い唇がその先の言葉を紡ぐ。

「あたしはアークエンジェルのCICよ?・・・・・・それに決めたの」

「決めた?」

「そう。あたしはこんな戦いもう終わらせたいって。無駄な血ばかり流す戦場なんてなくていいって」

「・・・・・・そうだな。俺もそう思う」

「でしょう?」

くす、と笑みをこぼしたミリアリアに、髪の毛に触れていたその手が頭を撫でた。

「お疲れさん。またカメラマンに戻るのか?」

「わからない。でもどんな形でも真実を求めていこうって思う」

まっすぐな瞳を見つめ、ディアッカは改めて思う。
こんな彼女だからこそ惹かれたのだ。今だってそれは残っていて。
『戦場になんて行くなよ』と言った自分の言葉が恥ずかしく思う。
俺はアイツの何を見てたんだろう。
過去の自分を殴ってやりたいと思った。
確かに戦場には出て欲しくない、でもその瞳を曇らせるようなことはもっとしたくない。
彼女は彼女のままでいてくれたらそれだけで十分だったはずだ。

「お前ならできるよ」

撫でていた手を頭から離すとディアッカは踵を返して歩き始めた。
ミリアリアはその背を見つめてきゅっと唇を結んだ後、気づけば大きな声で言葉を背に向ける。

「あたし決めたら必ずディアッカに言うから!」

声に驚いて振り返ったディアッカの瞳が大きく開く。
やや一呼吸置くとディアッカの瞳は細くなった。

「期待してる。・・・・・・それから、さ」

「?」

「いつも笑ってろよ。それだけ」

じゃあな、一言付け加えると今度こそドアの向こうに消えたディアッカにミリアリアは小さく息を吐いた。
まさに不意打ちだ。
あの、バカ。ミリアリアの口がそう口ずさむ。
少しだけ頬の温度が上昇するのを止められなかった。まるで魔法のようだとミリアリアは思う。
まさかこんなところで再会するなんて思ってもいなかったのだ。
でも言葉を口にすることができてちょっとほっとした、と言ったほうが良いのかもしれない。
かつての自分達は少しだけ頑なで、だからこそ小さな綻びで大きなケンカをしてしまったけれど。
今の彼だったら多分自分の気持ちを沿わせることはできるのかもしれない、
不思議とそんな気持ちが溢れ、ミリアリアは自分の口を手で軽く塞いだ。

「気持ちなんて変わっていくものよね」

過去に付き合っていた彼の名を小さな声で口にする。いつだって勇気を貰っていた言葉。
今のディアッカはもう自分の性格を嫌と言うほど熟知しているだろう。
まだ折れてやらないんだから。
少しだけの譲歩、そろそろちゃんと言葉に出しても良いのかもしれない。
そうでなければきっと見守ってくれているであろうかつての恋人が心配しているに違いないのだから。
『いつも笑って、ミリィ』
彼だって言っていた言葉。よもやアイツの口から出るだなんて。
ちょっとだけ悔しい、と思いながらミリアリアは踵を返して歩き始める。

少しの譲歩を決めるのはもう少し先のこと。
道の先に彼がいるのだと気づいた今日と言う日を多分この人生を振り返る時に思い出すのだろうな、
とそんな予感を胸に秘めていた。





post script
久々にディアミリです。一度はちゃんと書きたいディアミリ話。
別れた、と言っていたミリアリアの言葉を引っかかっていて。今だったらこう言う形で納められたんですけど。
やっぱり人は月日が経つと多少なりと考え方に柔軟さが出てくるかなーって思います。
私の中ではやっぱりディアミリはトーミリあってのもので、トールが好きなミリアリアを全部ひっくるめてディアッカが好きになってくれると一番嬉しいなって思うんですよね。これってあれですね、まるで「めぞん○刻」(笑)


templates by A Moveable Feast