差し伸べる手













いつか、きっと。



この手につかまれし未来を―――――。









遠き過去に差し伸べてくれた手があった。
それは紛れもなく両親の手。
あたたかくて、優しかった。




一人の少年に出会った。
その少年はとても優しくて、きれいな心の持ち主だった。
彼の差し伸べてくれた手は。






とても大きくて温かかった。












「どうしたの?」
その声にはっとして現実の世界へと呼び戻された。
「いいえ、何でもありませんわ」
かぶりを振って、笑顔を作るも現実世界に引き戻された反動かぎこちない笑みになってしまった。
「ラクス?」
私の名を呼ぶと、そっと両の手が私の頬を包み込んだ。



ほら。



この手が。




「キラの手はあたたかくて、大きいですわね」


少々上目遣いで目の前にいる彼を見つめると彼は私の額にこつんと自分の額を当ててきた。
息のかかる距離でお互いの視線はそのまま。
どきどきと鼓動は早くなり、彼に聞こえてしまうのではないかと少々焦りながらも顔は平然としたまま保つ。
顔が朱に染まってるのではないかと半分心配になりながらも彼の返答を待った。


「ラクスは細くてぎゅっと抱きしめたら壊れそうだよ」


苦笑いしながらも、頬に当てられる手が熱を帯びるようにあたたかい。


「まぁ。そこまで私は弱くはありませんわ」


くすっと笑って彼を見つめた。
至近距離。
視線はだんだんと近づいてくる。





あ、来る――――と思った瞬間。





私の唇は彼に奪われていた。
そっと離されるそれは柔らかい感触を持ったまま。
彼のぬくもりを残していた。



「ラクスはあたたかいね」



彼はそう言って触れていた頬に当てていた手を離すと私の手を握った。
私の小さな手が彼の手で包み込まれ、その手に私自身を預けるように握り返す。



この手は、とてもあたたかくて。



差し出された手は、大きい。




自分の未来を、彼に託してもいいと思えるくらい。





いつか、彼にあの剣を託したように。







「ラクス、さっきの返事は?」






先ほど夢から醒ます前の出来事を思い出し、私は彼の瞳を見つめた。
彼は優しい瞳で私を見つめると、首を傾げた。



彼なら。



この手になら私自身を預けても良いだろうと。




いつだって彼の差し出された手を取って来たように。







『僕と結婚してくれますか?』






そう、問う彼の姿が思い起こされると、私は瞳を閉じて一つ息を吐いた。



彼らしい、ストレートな問い。



そんな彼が、愛しいくらい、どうしようもないくらい好きなのを自覚している。



『好き』という言葉だけじゃ足りないくらいに。









「はい。ありがとうございます」









彼の手に。


いつも差し伸べられた手に、私は救われた。









待っているであろう未来の手綱を、彼はもう掴んでる。





このぬくもりが離れぬように。



彼の安心できる大きな手を。




差し伸べられた手を、私は今掴む。










END