めんどくさい二人





「何よ!買い物くらい付き合ってくれてもいいじゃない」
「馬鹿か!何で俺がお前の買い物になんか付き合わなくちゃならんのだ!」

 通路で展開されるイザークとフレイの会話は、お互い途中から叫ぶような感じになっているので、道行く人の視線をちらほら集めているのだが、
そんなこと気にする2人ではない。

「いいじゃない!買い物くらい!!」
「どうせ荷物もちだろうが!何で俺がお前の荷物なんて持たなくちゃならないんだよ」
「男のくせに情けないわね!男なら黙って笑顔で荷物持つくらいしなさいよ!!紳士らしい振る舞いくらい見せたらどうなの!?」
「淑女には紳士らしく振舞うが、お前は淑女じゃないだろうが」


言葉を詰まらせたフレイに、イザークはにやにやと意地の悪い笑みを浮べる。
 それがたまらなく悔しくて。


 私はあんたと行きたかったら、誘ったのに……
 それなのにこの男は人のこと馬鹿にしてばっかりで。
 そう思うと悔しくて涙が出そうだった。
 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!


 心の中で思い切り罵るとフレイはイザークをきっと睨み、体を翻した。
 捨て台詞を一つ残して。

「いいわよ!もうあんたなんかに頼まないから!他の人についていってもらうもん!!」

「!!!!!!」

  この言葉に驚いたのはイザークで。
 前に歩き出したフレイの後を追いかける。

「ちょっと待て、女!他の人って誰だ!?」
「誰だっていいでしょ!ていうか女って何よ。あんた人の名前も呼べないの」
「お前だって俺のことあんた呼ばわりだろうが!!おい、誰と行くんだ!」
「誰とだっていいでしょ!?」
「よくない!!」

 イザークの言葉にフレイは足を止める。
 振り返るとイザークの白い頬は少し赤く染まっていて。
 心臓が跳ね上がる気がした。

「……どうしてあんたがそんなに気にするのよ。私が誰と出かけようがあんたに関係ないでしょう?」

 イザークの顔を覗き込むようにしてそう言うと、イザークが顔を上げて視線が合う。


 うわ。

 綺麗な顔。
 顔を上げたと同時に銀色の髪がさらりと揺れる。
 くせなんて全くなさそうな、さらさらの髪。
 思わず触れたくなってしまうほど。

 この男の仕草の一つに、こんなにも目を奪われる。

 
 本当にコーディネーターなんて生き物は。




 心臓に悪い。



「……お前鈍すぎ」


 そんなことを考えてると、イザークの言葉が耳に届いた。
 イザークが真っ直ぐに自分を見つめていて。呆れたように額に手を伸ばして前髪をかきあげる。
 それでも自分を見つめる目はとても真剣で、とても強い。

 心臓がものすごく早くなっているように感じるが、それは気のせいではないだろうとフレイは思った。
 心臓は早くなるのと同じくらい、私の期待も高まっていってるから。


「俺は……」
「あれ?イザークにフレイ。何してんの?」

  いきなり響いた能天気な声にイザークはイラついたように振りかえる。

「ディアッカ……」

 イザークの苦虫を噛み潰したような声に、ディアッカは意地悪く笑った。

「もしかしてそういうこと?邪魔しちゃったねー」
「そういうことって何だよ」
「愛の告白の真っ最中だったんでしょ?」
「なっ・・・馬鹿か!!違う!どうして俺がナチュラルの女なんかに」
「……あっ、そう」

 言いかけたイザークの言葉をさえぎって、フレイの静かな、そして冷たい声が響いた。
 イザークの顔がにわかに青くなったような気がディアッカはした。


「そうね、あんたはナチュラルの女なんか大嫌いだもんね!!よーく分かったわ。もうあんたになんか頼まないから安心して」


 イザークの顔がさらに青くなり、ディアッカは自分の気のせいではなかったことを確信する。

「ねぇ、ディアッカ。今時間空いてる?」
「え……あー、うん」
「なら付き合って!」

 笑顔でフレイはディアッカの腕に自分の腕を絡める。それを見たイザークが何かを叫ぶ前に、フレイは止めを刺した。

「ふんだ。臆病者」

見事に固まったイザークを尻目に、フレイはディアッカの腕を引いて歩き出した。
そんな2人を見比べてディアッカはため息をついた。

めんどくさい2人。
それが2人へのディアッカの感想。





***数時間後(おまけ)***



「あーぁ、疲れた」

 腕を軽く回しながら、ディアッカが電子音と同時に部屋に入ってきた。
 イザークは雑誌に向けていた目線だけを向けると、また雑誌の方に視線を戻した。

「あのコ、買い物量ハンパじゃないし。荷物持ちすぎて腕いたー・・・」
「……何しに来たんだディアッカ」
「んー?別にぃ」
「用もないのに来るな」
「まぁそう言うなって。あのコ、我侭だけど可愛いね」

 イザークの雑誌を持つ指が、ぴくり、と反応したのをディアッカは見逃さなかった。

「ふん。お前目悪いんじゃないのか。あんなナチュラルの女」

 ディアッカは笑いそうになるのを必死でこらえながら、イザークの隣に腰をおろす。

「可愛いよ?それにずっとぴったりくっついてたし。なんか猫みたいで可愛い」

 イザークの指がまた反応するのを見て、ディアッカは笑いを押し殺すのが本当に大変だった。
 実際、イザークの姿が見えなくなったらフレイはすぐに腕を放したのだけれど、イザークの反応がおもしろくて遊ばずにはいられない。

「ふにふにして柔らかいし」

 瞬間イザークの手から雑誌が滑り落ちた。

「や、やややや柔らかいっ!?ふ、ふにふに!?」

 イザークの反応にディアッカはもう笑いを押し殺す事ができない。
 立ち上がって、イザークに向かって軽く手をふる。

「んじゃ俺部屋に戻るわ」

 イザークもつられたように立ち上がるとディアッカの襟元を思い切り掴んだ。

「ちょっと待て!貴様結局何しにきたんだ!っそんなことよりお前」
「なーにー?気になるの?」

 ディアッカの意地悪く細められた目と視線が合うと、ディアッカが口角を上げた。
 条件反射のように、掴んでいた襟元を放すと叫んだ。

「馬鹿か!誰が気にするものか!」
「んじゃいいでしょ。じゃーねー」

 そう言って笑うとディアッカはイザークの部屋から颯爽と出て行った。
 残されたイザークはその場に座り込み、ディアッカが残していった言葉の意味に苦しめられることになる。

 柔らかい!?ふにふに!?
 あいつあの女に何かしたのか!?

 イザークが蒼白になりながら悩むその部屋の前では、腹を抱えて笑いころげるディアッカの姿が数人に目撃された。




+管理人からのコメント+

きゃ〜vvしいなさんありがとうございますっ!!
イザフレ大好きなんですvブームだったりします。
持ってっていいという話を聞いた時は真っ先にこの小説を思い浮かべましたものv
ホントありがとうございました!