言霊
『トール・ケーニヒ 享年16才』
名を示すと共に、生きた歳月が連ねられる。
何で、俺はここにいるんだと思いつつもその名をじっと見据えていた。
白い花束をそっと前に添え、頬にさらされる風がどことなく冷たさを感じている。
ここはオーブ首長国、首都から少々離れた場所にある墓地だった。
一般の死亡者と違い、ここは戦争で亡くなった人のための墓地。
近くには平和記念塔なんかも建っている――のはここの首長の一人であり、オーブの獅子の愛娘たっての希望だったからだ。
オーブは海に囲まれた島だ。そのため、潮風が少し目に染みる。
何せここはほとんど海に近いから。
はぁと一つため息をすると、自然と言葉が吐き出される。
「おい、聞いてるか?」
いないはずの墓前の前で、頭のおかしい人間と思われるかもしれないけれど呟いた。
「アイツ、ずっとお前のこと想ってるんだ。所詮死人には敵わないってことなんだろうけどさぁ……。
俺、お前になんか負けないから。だって俺は生きてるんだ、未来なんて変えられるんだよ」
「負けないからな」
返ってくる言葉なんてない。
それでも『宣戦布告』をしないわけにはいかなかった。
今後の自分のためにも。
俺は生きてる、生かされてる、だからせめて。
「アイツを幸せにするから、――――ごめんな」
謝罪と共に大きな決意。
決して揺るぎないそれを口にする。
最近は減ったけれど、以前はやはり彼女の涙を見る機会が多々あった。
もう、涙する姿なんて見たくない。
「さてと、戻るか」
本当はキラの家に遊びに行く予定だった。
その前にここに来たくて来たのだ。
『ミリィを、頼む』
はっとして振り向く。でもそこには墓しかない。
確かに耳元で聞こえたのだ、声が。
「お前、なのか――?」
答えが返ってくるわけでもなく、その言葉に戸惑った。
でも。
「任せろよ。俺を誰だと思ってるんだ?」
ニヤッと白い歯を見せ、そうして踵を返す。
歩き出した足を止めることはなかった。
空はどこまでも蒼く、海はどこまでも藍い。
オーブという国で確かに生きていた、そして誰よりも彼女を大事にしていた彼に尊敬の念を込めつつ。
俺は今日も生きている―――。
END
*あとがきもといいいわけ*
どうもどうもこんにちは、瑞季です。
柚原ちはるちゃんとの合同誌『夢のしずく』をお買い上げ頂きありがとうございました。
そして、upするのを遅くなってしまって、大変申し訳ありません(もう、返す言葉がない)
さて、今回の小説は『飛べない鳥』を書いていた時に浮かんだ話でありました。
なので、いっそこれは買っていただいた方のためのプレゼントになります。
ミリィ、全然出てこない。ディアッカめちゃくちゃ出張ってる話ではありますが。
わりと読みやすいかも。うん。幽霊ですが(え)、トールもちゃっかり出てます。
もっとトールを出そうかと思ったんですけど、やめました。
シリアスタッチで書いてるのにコメディになってしまうということで。
トールが生きてたら間違いなくディアッカはミリィに振り向いてもらうことがなかったと思います。
それくらいあの二人には隙間がなかっただろうなぁって、いつも一緒でしたから。
トールがディアッカにミリィを託すと言うのはそれくらい責任のあることなのだと私は思っています。
人一人の命、何よりも大切ですからね。
それでは、小説を読んでいただきありがとうございました。
この話は2月頃まで置いてあります。欲しいと言う方はどうぞ貰ってやってください。
最後に、一緒に合同誌を書いてくれたちはるちゃん、ありがとうございました。
2003.1.2 瑞季