陽のあたる場所



















まぶしい日差しが降り注ぐ。

この自然の光が大好きで。

こうのんびりと過ごす日も悪くないわけで。

でも。

ちょっと違う。



そんなあたたかな場所はまた別にあるってことを自覚したのは、いつのことだったのだろうか。




心地よい温かさの中で意識が遠退くのを感じながら、ただ深い闇へと落ちていく。










気づけばそこにいた。

心地よいこの場所で、んーっと背を伸ばして。

ぽかぽかした陽気の中静かに歩き進めると、見覚えのある服が目に映し出される。

「あら」と呟くと、傍に寄って座り込んだ。

気持ちよくて、その人の顔をまじまじと見つめながらふっと笑った。




ああ、やっぱり。




そこは私にとっての優しい場所――――














「ラクス?」
不意に自分の名前を呼ばれ、はっとして振り向いた。
「あ、カガリ……」
「もう、どこに行ってたんだよ。心配しちゃったじゃ―――」
彼女の言葉はそこで途切れる。そう、自分の傍にいる人を見て言葉を喉に押し込めたのだから。
「寝てるのか?」
「ええ、気持ち良さそうに寝てますわ」
くすりと笑って、視線をその人物へと向ける。
彼女にとって唯一の同じ血を通わせた肉親。双子の片割れ。
瓜二つの二人の顔を交互に見遣ると彼女はくすっと笑った。
一つため息をついて、ベンチで寝入っているその人へと視線を合わせると「まったく」と言って苦笑いをする。
「疲れたのでしょう、きっと」
「だろうな」
本当は放って置けばよいのだろうけれど、なんとなくそれは憚られた。
「ここのところずっと働き詰めだったもんな。キラが起きたらお疲れ様、無事通ったと伝えておいてくれ」
「ええ、わかりました」
まっすぐな彼女の瞳は一度視線を絡ませるとなかなか離すことはできない。
「それから、ラクス」
「はい?」
「もう少ししたら打ち合わせはじめるから」
それまでにはキラ起こして来てくれよと付け加えて彼女はその場を離れていく。
彼女の後姿を見送るとまた傍にいる人へと視線を移した。
キラ――は自分の一番大切な人。同士であり、一番自分を理解してくれる人。
すやすやと気持ち良さそうに寝ている彼の片方の手を握ると、自分もまたこの心地よさに酔いしれる。
あぁ、本当に気持ちが良い日ですわね。
そう思ってうとうとしていた所で、意識は途切れた。







彼女が離れてから数十分経った頃だろうか。
彼の瞳が薄く開かれた。
「あー…あれ?」
一人呟くと、腹のあたりに置いてあった書類がばさばさと音を立てて崩れていく。
「あ、そっか」
ついこのあたたかい陽気に誘われて寝ちゃったんだっけ。
そうして身体を起こそうとした時傍にいる人物に気づいた。
ピンク色のお姫様。宇宙の歌姫と称される彼女、ラクス・クライン。
自分の手を握ってすやすやと寝入っている。
「―――っ!!」
な、何でここにラクスがいて、何で寝てるんだ?
動揺する心臓を抑えて、とりあえず状況を掴もうと必死だった。
ああ。
そうか。


なんか気持ちよくて寝ちゃったんだっけ。



多分、そこにラクスが通りかかったんだろう。
そして、いつの間にか寝ていた。
恐らく、この推理は正しい。
それにしても、だ。


何で、こんな無邪気な顔をして寝てるんだろうな……。


苦笑いしつつ、ラクスの寝顔を見つめる。



穏やかな時は心を癒す。
彼女がいて、こう静かな時を贅沢に使う。


ああ。




あたたかい日差しもそうだけれど。
自分にとって、彼女のいる場所が。



多分。



――――陽の当たる場所。





END