腹の虫






「もーっ!!何でそこで断らないのよっ!!」




とある教室内にミリアリアの声が響いた。
困った顔をするのはミリアリアの彼氏であるトールと親友のキラ。


「いや。一応断ったんだよ?ね?トール」



キラは話をトールに振った。



「う、うん。そうそう。断ったんだけどさぁ……教授が……」



彼女には絶対に勝てないとわかってるだけにトールは強く言えない。




「ばかばかばかばかっ!!明日だけは絶対に遊びに行くって決めたんでしょうがっ!!」




こうも言われっぱなしだとかっこ悪いとは思うのだが、今はミリアリアの怒りを静める方が先決だ。
ことは一週間前に遡る。いつも教授に引っ張りまわされっぱなしのキラをたまには遊びに連れて行こうと決めたのだった。
午後の授業が終わったら遊びに行こうと。
ミリアリアはそのための計画を一週間前から練っていた。
そのことを知ってる二人は余計に返すことができない。
普段は優しいミリアリアなだけに怒るとこわいのである。




「ごめん。ミリィ」



トールは謝るが更に続けたキラの一言が余計に怒らせてしまった。




「ミリィの気持ちは嬉しいけど、僕なら大丈夫だから。ね?」




横にいたトールはあちゃ〜と言う顔をしている。
そもそも自覚なんてないキラはミリィの言ってることがそこまでこだわることなのか少しわからない。



「キラ?大丈夫って、確かにコーディネイターなのはわかるけど同じ人間なのよ?休みってものが必要でしょうが!!」



「はい……」



キラも返す言葉がなかった。
横にいるトールもお手上げのよう。
トールもキラもミリアリアの言葉に返す術がない。


と、ミリアリアがご立腹してると間抜けな音が聞こえた。




ぐ〜っ。




トールはキラを見て「お前?」とアイコンタクトするがキラは首を振った。


じゃあ…もしかして……。


そっと顔を上げると、ミリアリアが顔を真っ赤にして動作が止まってしまっているのに気づいた。




「……おなかすいちゃった」


えへっと笑うミリアリア。


「昼なんだしそろそろ食堂行こうか」


トールの提案により三人で教室を後にした。


ミリアリアはさっきの話を忘れてしまったのか「今日何食べる?」と聞いてきた。
そんなミリアリアを見てトールもキラも内心ホッとする。
そして思うのだった。


あの腹の虫が鳴かなかった限り、二人の昼はなかったことだろうと。



またこうも思った。



ミリアリアだけは絶対に怒らせない方が良いと――。






これはまだ戦いに巻き込まれる前の。
そんな普通の日常があった時のこと――……