伝言






















ラクスへ

大賞おめでとう。父さんや母さん、それにアスランと一緒に観ていました。
とても良かった。やっぱりラクスの歌は最高だなと実感したよ。
大賞発表の後、ミリィやサイから電話がきて「おめでとう」って伝えておいてと言われました。
まだ忙しいのかな?少しでも時間が空いたらゆっくりしてください。
あ、そうそう。
来週会うって約束してたけど大丈夫?忙しいんじゃない?
カガリに「無理させるなよ」と一言突っ込まれちゃったんだよね。
アスランは「それはお前のことだ」と横でカガリを窘めてたけど。
カガリも忙しいからね。元代表の娘も楽じゃないって言ってたけど、こうも言ってたよ。
「私はあの父の娘だから、頑張らなきゃいけない」って。
カガリもバイタリティーあるなぁって思う。双子なのにね…ってちゃんと知ったのはつい最近だけど。
ラクスは疲れてない?今度うちに来たとき母さんが美味しいパイを焼くって張り切って言ってたよ。
そう言えば、プラントにいるみんなは元気かな?
ディアッカやイザークはたまに遊びに来てるからわかるんだけど。
ダコスタさんとかバルトフェルドさんとか。
今度そっちの近況も教えてもらえると嬉しいかなって。

何はともあれ、お疲れ様。
今度会える日を楽しみにしています。


キラ・ヤマト







ウィーンと小さな音が耳を掠めた。起動したパソコンにはプライベート用のメールボックスが開かれている。
ホットココアを口にしながら彼女はメールを一通読みふけていた。
メールボックスを開けたときに真っ先に視界に飛び込んできたのは紛れもなく彼のメール。
逸る気持ちを抑えながら、メールを開いた。
何気ないメールではあるのだけど、彼のメールは誰からのメールよりも嬉しい。

この間一年に一度の大きなイベントであるミュージシャンに贈られる賞の席に足を運んだ。
もちろん自分の曲もノミネートされたからなのだが。
あれは全宇宙に送信されると言うことで、どの歌手もドキドキしていたと思う。

「あの曲は……」

一人呟く途中で、言葉は飲み込まれた。
かぶりを振ると、持っていたココアの入ってるカップをテーブルの上に置く。
ことりと鳴ったカップの先に見える湯気をじっと見つめた。

彼は知らない事実。

あの曲は、本当は――――。

彼に言ったら何て言うだろうか。顔を赤くして照れるのだろうか。
そんな情景を浮かべ、少し苦笑いするとメールを最後まで読み進める。
そこで一つ気づいたことがあった。
いつもなら最後に自分の名前を書いたら終りのはずだ。
もう一文、ある。





P.S. このメールを読んだら外を眺めて




その一言に首を傾げつつもその通り外を眺めてみる。
辺りを一瞥して、何だったのだろうと不思議に思っていたその時。
視界に信じられないものが映ったと言わんばかりに瞳を見開く。




「―――――っ!キラ」




いるはずのない、メールの差出人の顔が今はっきりと月明かりに映され、見えた。



「こんばんわ、ラクス」



にっこりと笑って、キラは言う。



「ど……う、して……」


「会いたかったから」


それ以外に言葉は必要?


「いいえ…必要ではありませんわね」

「でしょう?」


付け加えられた言葉に笑みを零すと、彼はくすくすと笑う。
月が闇を支配する夜、偶然にも一言の伝言でこんなに素敵な時間になるなんて。



彼女は予想してもいなかった。



時にはこういう伝言もいいのかもしれない。






END