A mutual thought




「待ってます。ココで―――」


私はココまで出かかった気持ちを飲み込む。
また、失うかもしれない。
不安な気持ちがこの人の負担にならないように、我慢した。



「マリュー…俺は…」



彼は言葉を止めた。その先は何も言わない。
私も彼もわかっているから。
そう、明日。
明日で決まる。
ぎゅっと胸元のロケットを服の上から掴んだ。
そう、それが私の楔。


「だって、帰ってくるのでしょう?だから……」


やんわりと笑顔を見せるのが精一杯で。
泣きそうな顔なんて見せられないから。



「あぁ。絶対に帰って来る。戻って来るよ」



彼もまた、笑った。
肝心なことは何一つ言わないで。
私に彼を引き止める術なんてない。
彼の手のひらが私の頬を包み込む。
優しくて、大きな手。この手に助けられてきた、今日まで。


「ごめんな。いつも泣かせてばかりだ……」


いつの間にか私の瞳から溢れ出ていた涙をそっと拭いながら、彼はそう呟いた。
私は横に首を振って、「ごめんなさい……」と謝る。
泣かないで、あなたを送るつもりだったのに。
上目遣いで彼を見ると、彼もまた私に視線を合わせた。
彼も、私も目を瞑るとそっと口付けを交わす。


ねぇ、約束よ?

あぁ、わかってるって。

必ず戻ってきてね。

戻ってきたら、その時は―――……


ベッドの中で貪るようにお互いを求め合いながら、意識が遠のくまでそう時間はかからなかった。



「ん……」

気がつくと、戦闘まで残り4時間あるかないかの時間に目を覚ました。
彼はとうに起きたらしく、「オハヨウ」と声を掛ける。

「おはようございます」

私はシーツに覆われながら体を起こす。
彼はもう、着替えていた。

「さてと、俺はもう行くから」

着替えを終えた彼は私に近づくと、唇にそっとそれを触れさせた。

「行って来る」

さっきまでの表情とは一変してエンディミオンの鷹を思わせるカッコいい表情。
私は彼のギャップにちょっと驚きつつもくすっと笑って。

「行ってらっしゃい」

彼に笑顔で見送った。
プシューっとドアの閉まる音。
さてと、私も行きますか。

「艦長がこれじゃだめよね」

一人呟いて、彼が出ていったドアをもう一度見つめる。
彼に負けないように。
彼と共に歩いていけるように。

彼を信じる。

可能性はないわけじゃない。

だから、待ってる。


ココで―――――。



END




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