■1、誓い (アス+キラ+シン)


新しい世界を作るために、約束しよう。
この手で、平和な世界を作るために―――。



手を伸ばせばきっと空も掴める、そんな錯覚を覚えてしまうのは、
きっと空がこんなに青いせいだろうとシンは空を仰いだ。
風は凪ぎ、黒い髪の毛をふわりと揺らす。
あぁ、この空の上で寝ることができたらどれだけ幸せなんだろうなぁと思ってしまうほどに。

「シン」

自分の名を呼ばれたシンは思わず視線を移してその人を捉えた。

「アスラン」

「お前、またぼんやりして」

呆れた声が返ってきてシンは一瞬むっとするもまた空を見上げる。
窓の外は快晴、雲が緩やかに流れていた。

「天気いいし。こんな日はこんなところにいたくないなぁって」

「それはわかるが」

「だったらそれでもいいじゃない?」

もう一人新しい声が返ってきてシンは思わず苦笑いを浮かべる。

「空を見る余裕ができるって良いことだと思うよ」

「キラ、そうは言うけどな・・・・・・」

「仕事、したくないよねぇ、こんな日は」

キラもまた頷いて窓の外を眺める。空はどこまでも青が続いていた。

「こういう平和な世界を作りたいでしょう?」

キラはやんわりと優しい声音で呟く。アスランもシンもキラを見つめてから空へと視線を向けた。
遠く広がる蒼い空。優しい風が吹く穏やかな日々をずっと。

「あぁ、そうだな」

「そうですね」

三人の願いはたった一つ。
好きな人達が幸せに暮らせる世界を。
二度と悲しみの生まれぬ世界を作れることを誓った。



■2、二人の秘密 (トーミリ)



『いい? この手紙は一年後の君に見て欲しいんだ』


ふ、とぼんやりとした意識が呼び覚まされたのは鐘の音が耳に届いたから。
茜色に染められた部屋の中でぼんやりと考え込んでいた。
愛する人がいなくなってもう一年近く。
後ろを振り向くと立ち止まってしまうのはわかっているから、前だけ見てきたけれど。
でも、やっぱり。

あぁ、もう一年なんだなと気づいたらミリアリアは机の奥に仕舞われた手紙を一通取り出す。
愛する人――トールから貰った最後の贈り物。
この手紙だけは自分の手元に置いていた。それ以外は彼の両親へと返したけれど。
すっと静かにペーパーナイフでその封を開く。
どきどきと鼓動が止まらないかなと思っていたのに、意外にも自分の心臓はしんと静まり返ってる。
まるでこの世界に一人しかいないかと錯覚させるように。
かさり、音を立てて現れたのは一枚の紙。

『ミリィへ』

便箋一枚に綴られたのは見慣れた文字。

『これを読む頃、俺たちはどうなってるのかわからないけど。
 きっと皆で笑っていられたらいいなって、俺は思う。戦いのない世界が待ってるといいって。』

焦って書いたのだろうか、少し文字が雑だった。

『どんどん皆の雰囲気が悪くなって、でも俺はミリィがいるからいやされてる。
 でも、キラとか見てると俺はもっと頑張らなきゃいけない、ミリィを守らなきゃって思うんだ。』

そうして戦場で命を散らせた恋人。
俺は守りたいって言ったその背中が愛しくて。
ぽたり、ぽたりと気づいたら便箋の上に雫がこぼれ落ちていた。

『だから、これを読む頃は笑って皆で過ごしてることを信じてます。
 大好きなミリィへ。―――これからもずっとミリィのことを大事にするから。』

最後に締められた言葉は優しいトールからの愛情表現。
苦しい喪失感がミリアリアの心を占めていた。
大事にするって言ったのに。
守るって言ったのに。
傍にいるって言ってたのに。

どうしてなのと何度問うたかわからない疑問を心の奥にぶつけては、返ってこない言葉を探す。
想いを胸にしまってミリアリアは茜色の空を仰いだ。
トールの笑顔のようだと思うとまた切なくて涙が止まらない。

ずっと、傍にいてね。
自分の胸へと呟いてミリアリアはそっと手紙を仕舞う。
二人だけの秘密。

これからもずっと忘れないように。







■3、遠い日の記憶 (キラフレ)

ただ傷つけているだけでは本当の気持ちには気づかない。


「傍にいすぎてわからなかったんだもん・・・・・・」

優しいキラ。ただ傍にいてくれたキラ。
優しすぎて見えてなかった本当の心。
当たり前だと思っていた事実。
フレイは一人呟く。この広い宇宙の下のどこかにキラがいる。
そう思ったら本当は駆け出して抱きついて、一言言いたかった。

『ごめんね』

と。こんなあたしを許してなんて都合のいいことは言えないけれど。
でも、一言謝りたい。
そしてもう一度言いたい。

『ありがとう』

キラがいたからあたしはこうして生きてるんだって。
だから泣かないでと。

「キラ・・・・・・」

あまりにも遠い距離にフレイは泣きそうな顔をして額をガラスにこつんとぶつけた。
今度こそキラに謝るチャンスを下さい。

祈りは宇宙の彼方へと消えてゆく。
これからの運命がどうなるのか、まだフレイは知らない―――。




フレイが生きていた、ただそれだけで嬉しかった。
『キラ』と呼ぶ声がひどく嬉しくて、悲しかった。

「フレイ・・・ごめん・・・・・・」

助けてあげられなくて。
また守れなくて、ごめん。
必死に助けを求めていたフレイの声がキラの耳に響く。
傷つけて、苦しくて、悲しくて、そういう形でしか自分の想いをぶつけられなくて。
ただ気持ちを聞いていてくれたフレイがいたから、こうやって生きていられるのに。

「ごめん、フレイ」

今度こそ、フレイを助けたいと願う。
そしてもう一度フレイに伝えよう、この気持ちを。

「ごめんね。そして、ありがとう」

謝罪の言葉と感謝の言葉を君に。
いつか言える日がくると信じて、キラはベッドに突っ伏していた。





■4、永遠 (アウステ)

この世に永遠なんて言葉、あるわけないじゃん。


「『永遠』ってなぁに?」

いきなり目の前に立ったと思ったらやや少し見下ろしてステラは尋ねる。
思わずアウルの眉間に皺が寄った。

「ずっと続くことだろ」

「ずっと?」

「そう、ずっと」

きょとんと瞳を大きく開いてステラはもう一度言葉を呟いた。
一体何が面白いんだか、アウルは呆れながらステラを見つめる。

「なんでボクに聞くんだか」

スティングでもいいじゃん、アウルは一人呟いた。
一番なんでも知ってるのはスティングなのに、なんで、ボク。

「アウル、ずっといる?」

「は?」

「アウル、ずっとステラの傍にいる?」

心配そうな瞳がアウルへと問い、一つ深くアウルは息を吐いた。
何を心配してるんだか。

「・・・・・・いるよ、ボクも、スティングも、ネオもいる」

「ほんとう?」

「あぁ、本当」

良かった、と言葉を口にするステラ。アウルはそっとステラの手を握る。
心淋しかったのだろうか。ずっとみんな傍にいるのに。

「べつにここにいてもいいけど」

ぶっきらぼうにアウルはその手をきゅっと握り、ステラはそのぬくもりに甘えた。
握り返した手がステラの本音。
アウルの隣に腰を落ち着かせて、ちょこんとステラはアウルの肩へと寄りかかる。
別にそれが悪いんじゃない、ただ不安な気持ちがアウルへと伝わって。

「いるから、安心しろよ」

「うん」

明日なんてわからないけれど、今があればそれでいい。
他の人がどうなろうとカンケーないけど、ただ、自分が傍にいて欲しいと願う人がいてくれたら、それで――。

「ったく、ボクはおもりじゃないってーの」

素直じゃない口が言葉を綴る。ステラはただアウルの傍に座って満足そうに微笑んだ。








■5、ゆびきり (シンルナ)

このぬくもりがずっと続けばいいってそう思ってた。


そっと離れが指先が熱を冷ます。
ルナマリアはゆっくりとその指を下へと下ろした。
約束したのは自分だ。
でも、こんなに悲しくなるなんて思ってもいなかった。

「ルナ?」

あたしは、シンにちゃんと見てもらえてる?
ちゃんとルナマリアだって、一人の女としてみてもらえてる?

「どうした? ルナ」

もう一度名前を呼ぶシンにルナマリアは首を横に振って応えた。
不安な気持ちを抑えて、赤い双眸を見つめる。

「なんでもないのよ」

ルナマリアは一言告げるとすっと視線から逃れる。
恐いって、大きな声で言えたらどれだけ楽なのか。
でもあたしのプライドが許さない。

『ずっと傍にいて』

なんて言葉、言える訳がない。

「ルナ?」

もう一度あたしの名前を呼ぶ。その声がすごく好きだから。
だから、もう一回だけわがまま。

「ルーナ。どうした?」

優しい声音に瞳を閉じてルナマリアはゆっくりと瞳を開いた。

「いこっか、シン」

ルナマリアは歩き始める。胸に仕舞う想いが伝わる日はこないのかもしれない。
でも、今はそのぬくもりの言葉を信じたいと思うから。

「ルナ? どうしたんだよ」

「なんでもなーい。行かないとレイに怒られるわよ」

「? まぁ、いいけど・・・・・・」

一人呟くシンの声を耳に捉えながらルナマリアは歩く。
ただひたすら前を向いて、絡めた指の熱を信じて歩いていた。





■6、明日、ここで (シンステ)


もう一度会いたいね。


その言葉が叶う日はこないことを知っているけれど、でも信じたいと思う気持ちが強かった。
小さな花のようだったステラの笑顔。もう見ることはないけれど、でも。

「もう守れないなんて嫌だったんだ」

家族を、マユを守れなかった時のような想いはいやだって思ったのに。

「また守れなかった・・・・・・」

悔しい、だから憎んだのに。
フリーダムのパイロットを憎んだのに。
それでもステラは笑うんだね、明日があると笑う。

「まるで未来がなかったみたいじゃないか・・・・・・」

過去も未来も全てはなかったのだと、ステラにはなかったのだと。
守りたかった、その笑顔も全部。あの時のような気持ちになるくらいだったらと。
そして願った強さ。
その結果のこの様子。戦いは終わって平穏な日々が訪れようとしている。

「ステラが願ったのはこういうことなのかな」

青い空、白い雲、ただ平和な時間。
みんながいて、笑って、それだけで幸せだったのかもしれない。

願いはやがて祈りへと変わってゆく。
今度こそ、また会えるようにと。

また、明日。
明日、ここで会いたい―――。




■7、束縛 (キララク)

ただ、ぎゅっと抱きしめられているのが好きだった。


「ラクス」

優しい声音が頭の上から降ってくる。
でもその声に反応するわけではなく、むしろ背中に回すその手を強くするだけ。
淋しがりやで情けない自分であろうとそれを望むから。

「どうしたの?」

恐いの、それとも何かある、キラの声音はラクスの心の奥まで響かせる。
まるで子供をあやすように、ゆっくりと優しくその手がラクスの背中をさすった。
ここにいるから、大丈夫。
まるでそうささやかれているかのように。

「あなたを・・・・・・」

「僕を?」

「縛るためのものを望んだわけではありませんわ」

ラクスの一言にキラは瞳を緩め、こつんとラクスの頭に自分の額をくっつけた。
少しずつ伝わる振動、そしてぬくもり。

「僕は、縛られた覚えはないよ?」

それでも結果は一緒だとラクスは呟く。

「僕から望んだんだ。もう一度乗ることを。守れないのは嫌だって」

自分の能力をわかっているから、それが自分なのだからとキラは言う。
でもそうしてしまったのは自分だとラクスは顔を上げなかった。

「君がそう言うのなら」

ここにいる僕は偽者なの?

初めてラクスは顔を上げて薄紫の双眸を見つめる。
迷いのない瞳。その瞳が青い瞳を捉えて離さない。

違う。
そう言うことじゃない。

「むしろ君が縛って」

離さないでいて、僕の還る場所はここだと示して。
キラの言葉にラクスはただ一粒の涙をこぼす。
落ちる雫の後をキラはそっと優しく指のはらで拭っていた。



■8、魔法の言葉 (アスカガ)

「言葉にすれば願いは叶うって言うだろ」

さらりと言われた言葉にアスランは思わず言葉に詰まる。
一番当たり前で、一番大切なことをさらりと言われたような気がした。
時々すごいと思うのはこういう時だとアスランは実感する。
金色の髪の毛を揺らして言うカガリにアスランは苦笑いを浮かべた。

「お前、またハツカネズミになってるんじゃないか?」

カガリはアスランの眉間に指を立てて、とん、とぶつけた。
示す指の先にはきっと未来がある。
このオーブと言う国を守る大事な一人の女性であり、長。

「私は国民を守ると望んでるんだ。人一人幸せにできなくて何が首長だ」

理想と現実がその心に影を落とす。
守れないものがたくさんあった、不甲斐ない自分に何度辟易したことがあっただろうか。
でも、その度に一つ一つ乗り越えてゆこうとしていた。

「私が望むのはアスランだけだ」

今、傍にいることしかできないと言うアスランにカガリは言う。

「だが、私には国民を守っていかなければならない」

だから、お前には無理をさせてしまっているけれど、とカガリは形良い唇に言葉を綴る。

「だからアスランにお願いしたんだ。この国民を守っていくその補佐となって欲しいと」

カガリは魔法の言葉を口にする。
言葉は願いとともに現実となることを知っているから。

「アスラン・ザラ。オーブの国防長官補佐として力を貸して欲しい」

そして自分を支えて欲しい。
その瞳に迷いはない。アスランは一つ息を吐いて言葉を継ぐ。

「カガリが、いやオーブ首長が望むのならその力、惜しみなく発揮いたしましょう」

二人の視線がゆっくりと交わされる。
どことなく笑みがこぼれ、二人は笑っていた。
未来はどこまでも明るくあって欲しいと言霊に託して。




■9、完全放棄 (アスキラ)

「あー、疲れた」

「同感」

男二人で大の字になってベッドへとダイビングするとキラはうつ伏せで足をばたつかせる。
その様子を見たアスランは思わず苦笑いをこぼした。
疲れてるくせに、何が妙に落ち着かないキラの姿横目で確認する。

「・・・・・・お前、全然変わってないな」

「は? 何が?」

「疲れてるくせに、何かやろうとするところ」

「そう?」

「あぁ」

アスランは安堵のため息をつく。外見的にも中身も変わったと思う部分がたくさんある。
だが、変わらない部分が必ずあるのだ。それを見てアスランはほっとしてしまう。
自分もきっと変わっている部分はたくさんあるだろう。
だが、それ以外の部分もあることを知るのだ、見慣れたものを見ると。
キラは幼い頃から疲れていても何かしようとする癖がある。
それはアスランにいたずらしたりとさまざまだが。
アスランは身体を横に向けてキラを見つめると、キラもそれに気づく。
二人の双眸が重なった。

「変わってないのはアスランも同じだよ」

ふっと頬を緩めてキラは呟く。
アスランもまたそうか、と一言呟くだけ。

「「そう簡単には変わらないよ(だろ)」」

二人の声が重なり合い、また二人の顔には笑みが灯った。
優しくて信頼できるその笑みが二人の瞳に映し出される。

「キラ」

「なぁに、アスラン」

「ずっと一緒だ」

笑みを消してアスランは真面目な顔をする。
だが、その真面目な顔の裏に潜むのは微笑み。

「うん。僕も一緒だよ」

二人の囁きはどこまでも優しく響く。
全てを捨ててもきっと二人は変わらない。
ずっと変わらない関係がここにはあるのだから。



■10、待ち合わせ (ディアミリ)


何度も腕時計をチェックしながらディアッカはきょろきょろと辺りを見回した。
約束の時間までまだ時間は十分にある。だが、気持ちは一向に落ち着きを見せなかった。
それもそのはず、初めて約束したのだ、彼女と。
とは言ってもディアッカの片思いでしかない。
きっと彼女の胸にはまだ亡くした恋人のことがあるはずなのだから。
でも、わかっていても彼女と一緒にどこかに行きたかった。
気が晴れるならと。

初めて出会ったのは自分が捕虜として捕まった時。
初めて知った屈辱と、殺した後ろ側にある世界を見た。
彼女の恋人は亡くなったのだと、どうして俺がいるのかと問いかけた瞳は今でも忘れられない。

そしてまた再燃した戦争。
戦場に戻ってきた彼女は前に見た時よりも逞しくなっていた。

「お待たせ」

影がディアッカの瞳に映し出され、思わず顔を上げる。

「何? 何かついてる?」

思わず彼女――ミリアリアはディアッカへと問いかけた。

「いや。きてくれたんだなって思って」

「約束したでしょう? それに今日はオーブに戻る最後の休暇だから」

明日にはまたオーブへと戻るミリアリア。
きっと彼女は彼女でやりたいことを見つけたのかもしれない。
瞳には迷いはなかった。

「さて、お嬢様、どこへ行きたいか要望をお願いします」

ディアッカは微笑んでミリアリアを見つめる。
ミリアリアはくすっと笑って「それじゃあ」と言葉を続けた。

「プラントでお勧めの場所、お願いします」

「りょーかい」

少しでも笑っている顔が見られたら幸せだと思う。
お互い進む道が違えどもいつか、きっと一緒になれると信じているから。
ミリアリアの背中を押してディアッカは歩き始めた。






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ひさしぶりのオールキャラでした。なかなか難しかったー。
そんなわけで、色んなのを書いてみましたが如何でしょうか。
一番最後のディアミリが一番書きやすかったです。
なんかねー、こういう関係大好きなのよね。
あと、アスカガ。
未来を見つめる二人の目に映るのは同じっていう感じです。
キラフレもシンステも切ない感じで書きました。
時系列はバラバラです。
お好きなようにお考え下さいませ。
約束は意外と難しかったです。
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約束10のお題

From:  胡 蝶 の 夢

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