これが最後の
「よかった、な」
そう素直に言えて、良かったと心から思っていた。
オーブに戻ってきてから、自宅でやっと自由になり、ラフな格好になる。
ちょうどシャワーからあがってきたアスランがシャンパンとグラスを持って現れた。
「ほら」
「ん」
グラスを受け取るとアスランはシャンパンを開ける。
私はその光景をじっと見ていた。
ポンと景気の良い音がして、あけたことを確認した。
グラスに注がれるシャンパンの気泡を見つめて、先ほどのことを思い出す。
すると自然と笑みが零れていたのか、気づいたらアスランまでが笑っていた。
「何」
「ん。久々にそう言う顔みたなと思って」
「そうか?」
「うん。いつもなんか考え込んでただろ」
「そうかもな」
くすりと笑うと、じゃあと私が呟く。
「「乾杯」」
カチンと音を鳴らして、触れ合ったグラスが離れるとそれぞれの口へと運ばれる。
マーナが作り置きしていってくれたカナッペがテーブルの上を彩りよく飾っていた。
「おばさん・・・か」
なんか急に可笑しくなって笑った。
もう5ヶ月くらい前に聞いていたことなのに、今改めて実感する。
「それにしても驚いたな。キラ、やるじゃないか」
アスランも笑って言う。
久々に会った恋人とようやっと落ち着いた時間が取れたことを改めて実感した。
「ホントだ。驚いたぞ、聞いた時なんて一瞬意識が飛ぶかと思ったぐらいだ」
感嘆の息をついて、またグラスに口をつけた。
アスランはカナッペを一つ口に運ぶ。
「アスランには言えないし、もちろんキラには言うなって言われるし。で、ミリアリアとサイとイザーク達に手伝ってもらった」
「まぁ、それが妥当な考えだろうな」
アスランはうんと頷いて、呟いた。
「こんなこと初めてだったからな。でも私はいい友達をたくさん持ったなと痛感してる」
ラクスの身の回りの世話をしてくれているミリアリア。
荷物運搬を手伝ってくれたサイ。
何が何でもラクスの情報を抑えていたイザーク。
それをサポートしてくれていたバルトフェルドとダコスタ。
そんな中でオーブの方を守ってくれていたキサカとマーナ。
アスランやキラに言わないでいるというのは思ったよりも楽じゃないと痛感した日々。
何度も迷った。
キラに言うべきじゃないかと、せめてアスランに相談すべきじゃないかと。
でも、やっぱり女の友情を守りたかった。
「まぁ、水臭いなとは思ったよ」
アスランは率直な意見を述べた。
「すまん」
「でも、カガリが元気であればそれでいいさ。それに悪い知らせでなかったからな」
「うん」
「でも・・・・・・」
「でも?」
カガリは言葉を止めたアスランを見つめた。
ちらっとアスランはカガリを見つめ、そして静かに言葉を告げる。
「何かあったときは、絶対に一番に知らせろよ」
少しだけ照れながら言う。
「わかった」
しっかりと頷いて、アスランの双眸を見つめる。
暫くじっと見つめているとふっとアスランの瞳が緩まった。
「ごめん・・・・・・」
「いいよ」
そう言ってアスランは私の頬に触れる。
久しぶりにそのぬくもりに触れて、思わず顔を赤らめる自分に気づいた。
何、そんなにドキドキしてるんだ。
一人でごちるも、その答えは返ることはない。
「キラの面倒をみるのはこれが最後、かな」
アスランはくすっと笑ってそう言う。
随分と今回で色々と振り回されたことだけは明確だった。
「だと願う」
そうきっぱり言うとアスランはぷっと吹き出した。
「ったく、いつも世話が焼けるんだから」
「そうだな」
そう言って私たちはまた笑い、片手に持っていたグラスをまたカチンと触れる。
夜の闇が何もかも飲み込むように。
優しさだけを残して、会えなかった時を埋めるかのように私たちはずっとしゃべっていた。
なつかしさと、切なさと。
吹っ切れたような顔をして、私がアスランを見つめるとアスランもまた微笑み返した。
終