大丈夫












『キラは大丈夫さ。ちゃんとやれるよ』







トールがいつか言っていた言葉。
私は不思議そうに見つめながらその言葉を反芻していた。

ねぇ、トール。


あなたにはこんな光景が見えていたのかしら―――――?










久しぶりにオーブ本島に着くなり、私は潮風を従えてある場所を目指した。

『戦没者集合墓地』

そう記されたプレートを見つめ、そしてその門をくぐる。
白い花束の中に小さく鮮やかに放つ黄色の花びらが一枚落ちる。
少し高台にあるこの場所の目的はひとつ。


『トール・ケーニヒ』


に会うためだった。



墓の前にそっとその花束を飾ると、ふわりと潮風がなびいた。
トールはいつもここから見ているのかしら。
そんなことを思って、瞳を閉じる。


「暫く来れなくて、ごめんね」

「ずっとラクスの傍にいたの。ラクスと、キラの子供の傍にいたのよ」

返す言葉はない。
それでも良かった。
ただ、聞いて欲しかった。

「キラとね、ラクスの間に子供ができたの。まだ男か女かはわからないわ」

「私はどっちでもいいの。二人が幸せであればいい、―――トールもそう思うわよね?」

くすっと笑って、あの頃を思い出す。
もうたくさんの年月が過ぎていた。

「トールが守りたかったものは、ここにあるわ。私、ちゃんと見てるから」


泣かない、そう決めたから。
だから、ずっと泣いてないのよ?
だって、トールは笑ってる私が好きだって言ったもの。


「今日は一人なの。だって、たまにはトールと二人で会いたいじゃない」


いつもなら一緒にいるはずの人がいないことを告げる。
褐色の肌で、今はプラントにいるであろう人。

「トール、私もそんな年なんだなって気づいたの。もうあれから十年近くにもなるんだよ。気づいてた?」

時を刻まない人。
あの日から年を取らない。
けれど、私はどんどん年を取っていく。

「トールがそこにある世界はどんな風なのかな・・・・・・」

呟く言葉に返すものはない。
ただ、潮風だけがなびいている。

本当は言葉を返して欲しい。
隣で、またあの笑顔で私を見て、って言いたくなるけど、でも。


私はその先を歩くからね?



「キラとラクスを見ててあげてね。もちろん、私のことも見てないと嫌だけど」



それぐらい許してね?




『俺はどこにいてもミリィのこと見てるから』




私の十六回目のバースディの時に言った言葉。
私、忘れないよ。
トールはここに、生きてるもの。





『大丈夫、あれでもキラはしっかりしてるんだって』




授業の合間に笑ってそう言ってた言葉がふと思い起こされる。
その光景を鮮やかな色彩で蘇って、私は一つ笑みをこぼした。





遠く彼方の記憶と、今の自分と。

見つめる先の未来に、あなたはいないけれど。

それでも、いるってわかってるから。




「ね、トール。未来は明るいわね」




ずっとそうであってと願って。