とてもきれいな青空が空に漂っている午後。
卒業式を終えた玲は、一人石碑の前に佇む。
この3年間の思い出を思い出していたのだ。
色々なことがあった3年間。
泣いたし、笑ったし、怒ったし、楽しかった。
走馬灯のように頭の中で思い出が駆け走る。
「玲」
背後から秋の声。
「秋」
秋も同じことを考えていたのだろうか?
少しばかり伸びた髪の毛が風に揺れる。
秋の表情は穏やかだった。
「いろんなことがあったな……」
「うん……」
二人、しばらく無言のまま石碑を見ていた。
言葉なんていらない。
そんな雰囲気だった。
それがまた居心地良くて。
ずっとそのままでもいいくらいだった。
ふと気づけばもうひとつの影。
「先生……」
私は言葉を漏らす。
「潮田、関根。この碑にはどんな思いが詰まってるかわかるか?」
黒川先生は私達に質問を投げかける。
「友達を大切に?」
私はそう言うと、先生はふっと笑った。
「そうだな。確かにそう言う意味もある。けれど、先生が言いたいのはそう言うことじゃない」
「じゃあ何ですか?」
今度は秋が質問した。
「それを考えるのがお前達だろうが」
苦笑する先生に、私達も苦笑する。
確かにそうだ。
「中学時代の友達はいいぞ。困った時は必ず助けてくれる」
日が傾き始めた校庭に先生の言葉が響いた。
影が伸びる。
少しばかり春の暖かい風が吹く。
「そうですね」
秋がさっきの真剣な表情を崩し柔らかい笑顔を見せた。
私もつられて笑う。
少し早い春の芽が石碑の横に見え隠れしていた。
これから育つ新しい芽。
それは私達の旅立ちにふさわしいものだ。
「先生、今までありがとうございました」
私は改まった気持ちで先生に挨拶をした。
「俺も。ありがとうございました」
そう言うと二人頭を下げた。
「また遊びに来い。困った時は相談にのるから」
「「ありがとうございます」」
二人同時に声をあげた。
先生はそう言うときびすを返し、校舎の方へと戻っていった。
離れていく一つの影。
それは、慣れ親しんだ中学校との別れを意味するように感じた。
少ししんみりとしていた私にぽんと背中を押したのは秋。
「いこっか」
「うん」
先に歩き出した秋を追いかける。
影が並んだ時、もう陽はだいぶ傾いていた。
石碑は静かに佇む。
“友情”という文字を刻んだまま―――……
さようなら。
そして。
ありがとう。
あっという間の3年間。
かけがえのない友達に会えたこと。
本当にありがとう……。
今日私たちは巣立ちます。
また季節が巡り、新しく生まれる生命。
育まれる想い、慣れ親しむ場所。
そこには。
変わらないいつもの風景がある。
たくさんの生徒を見送ってきた、校舎。
そして、伝えられる伝説。
幾度となく途切れそうになりながらも続いてきた伝統。
今も昔も。
その時の想いは同じ。
――季節はまた巡る……
終