04. 扉を開けて


扉は開かれた・・

そうして私達は次へと進んでゆく―――。



暖かな日差し・・日曜の昼下がり。
私達は取り壊され、新しくなる旧校舎のある場所を整理していた。


「まあ、これ、どうする?」

「んー。捨てちゃっていいよ」

「了解」

動きやすいようにジャージでの作業。

そう…。
あの火事の後、三学期の終業式まで放り出されてた旧北校舎。
本当なら、ココにはもう一人の姿があったはず。
そのもう一人は、今はもうどこか遠くの空の下にいるはずだ。


「おーい。まあ、玲、差し入れ〜」


そう言ってチャリを漕いで来たのはユキ。
おばさんの経営する花屋を抜けてきたみたいだ。ジャンパーの下にエプロンが垣間見えるから。


「サンキュー、ユキ。さっすが〜」


まあは喜んでユキに言う。
ユキはというとふふんとちょっと威張っていた。


「なーにやってるんだよ、ユキ」


その背後からもう一人。少し呆れ顔で私たちの方をを見ている。
ユキの兄であり、私の幼なじみである秋がやって来た。
こっちは塾の帰りらしい。


「秋!!」

「塾終わったから、手伝いに来た。どう?進んでる?」

「うん、まぁ、あとちょっとってとこかなぁ?」


まあはユキ差し入れのスィートポテトにかじりつきながら答える。
はい、とユキから渡されたスィートポテトを受け取ると、私は秋の傍に駆け寄った。
段ボール箱には焼け跡から出てきた品々がある。


「あれ。これ……」


秋は何か言いかけたところで止まった。まあはそれをみて、ああと頷く。


「うん。出てきたの。倉庫の奥から。多分、これ何年も前の文化祭の写真じゃないかなぁ。
いつのかわかんないのが難点だけど。多分、私達の中で見覚えがないから、五番目くらいだと思う」


それに、校舎の形がだいぶ今に近いでしょと付け加えて。
サヨコの劇の写真だった。
この年は、ちゃんとサヨコの劇が行われたらしい。
私も秋の傍でそれを見つめた。ユキも、まあも。
見つめながらしばし思いを馳せる。駆け巡る記憶の数々がそれぞれの胸に響いていた。
そうして、ぽつりと私は言葉を零した。



「ね、私達のサヨコはここで終わったけどさ」

「うん?」

「また受け継がれていくのかなぁ?」


ぼんやりとその先のことを思いながら、一つため息を漏らす。
みんなしんと静まり返った。


「それは、その年のサヨコによるんじゃない?」


まあはきっぱりとした口調で、でもその声には凛とした響きがあって。
あんなにサヨコに執着していたまあとは違う。


「また誰かが始めるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。サヨコは、呼びつ呼ばれつだもの」


「え?」


「伝説次第だろうな。求めれば、サヨコは来る。違うか?」


秋は私を見据えて答えた。
うん、そうかもしれない。
私たちは呼んだんだもの。何か特別な自分になりたくて。
だから――――。


「そっか。そうよね」

「そういうこと」


あっさりと秋は頷き、まあもユキも頷いた。
恐らく、この場にいたら彼女もそう頷くだろう。


「さ、早く終わらせようぜ。母さんがたまにはみんな連れて来いって言ってたから」


ユキは楽しそうに言う。


「え?おばさんが?」
「母さんが?」


私も秋も同時に声を上げた。


「二人とも、いっつも息だけは合ってるよねー」


感心とも呆れとも言うべき顔をしているのはまあ。
最後の一口分のスイートポテトを口に頬張る。


「今日は結構花が売れててさ。もしかすると早く終わるかもしれないから連れて来いって」

「そうなんだぁ」

「じゃあ、早く終わらせますかぁ!」

「そうだな」


四人ともそれぞれ作業に取り掛かる。
空は青い。春がもうすぐそこまで来ていた、そんな午後の昼下がりのこと。
数年後、自分たちは何をそれぞれやっているのだろうと思いながら。
私達の未来は続いていく。
あの日から、開かれた扉は長い先の未来を見続けていた。




「初めまして、潮田玲さんですよね。実はお聞きしたいことがあるのですが……」

またも開かれる扉は、伝説になっていく。


サヨコという名の鍵を開けて――――。






*あとがき*
それぞれの想いが重なり合ってと言うのがテーマ。整理することでその先を見つめる四人と言う感じ。旧校舎が焼け、春休みを迎えたそんな頃の話です。
色々と整理してたら出てきたので、出してみました。
さぁ、次は中編小説がんばるぞー!(予告に書いてるやつです)