02. もう一つの
サヨコ


新しい土地に住み着いて1週間。
津村沙世子はとても退屈していた。

前の学校『西浜中学』はとても楽しかった。
もう何十年も語り継がれている、『サヨコ伝説』。
それは、沙世子の心を楽しくさせてくれたのだ。
中一の終わり、両親がまた転勤するとのことで準備していた矢先。
ある一通の手紙が届いた。
その中には「指令書」と呼ばれるものと、一つの鍵が入っていた。
最初は乗り気ではなかったが、“どうせなら”と思って祖母百合絵の家に一年間だけという条件で、西浜市に越してきたのだった。
両親は最初反対し、それを説得するのにも時間がかかった。


だが、自分の手元にある一通の手紙と鍵―――……。


これだけが支えだった。



西浜中での一年間は色々とあった。
最初は、「何で私がこんな目に――?」とよく思った。
また「どうして私が疑われなきゃいけないの?」とも。
私と同じ名前の伝説。
うれしくもあり、うざくもあった。
嫌なこともあったけれど、良いこともあった。
今までできなかった、“本当の友達”――親友に巡り会えたことだ。
たくさんの友達ができたことは、私にとっての一番大事な宝物となった。
特に仲の良い友達―…潮田玲と関根秋に会えたことは私の人生の転機となった。
何でも素直に感情を表に出し、友達を作ってしまう潮田玲。
いつも傍観者からの立場で見ている、私に少しばかり似た関根秋。

この二人が―――…………。






西浜中に来た時は『どうせまた同じ』と半分思っていた。
けれど、心のどこかでは何かを期待していたと思う。
友達もできず、面白くもない学校生活だろうと。
だが、予想に反して私の周りは目まぐるしく動く。
サヨコ伝説のに振り回されながらも、私はそれを楽しんでいる自分にいつしか気づいた。
嫌なことも、良いこともひっくるめて、『思い出』となった。
そして自分自身をちゃんと見れたのも、『サヨコ伝説』のおかげかもしれない。
自分のことがわかったし、自分の感情を表に出すこともできたから。


そのキッカケを与えてくれたのは――祖母。
恐らく、私のことを案じてのことだと思う。
そして、担任だった黒川先生。
ずっと見守っていてくれた――……





西浜中学でのことを思い出すたび、胸が熱くなる。
かけがえのない時間を過ごすことのできた1年間。
本当に楽しかった。
そう思えるのは。
玲やみんながいたから。


だけど 今は誰もいない。
私一人。




だったら。

私が伝説を作ろう。

もう一つのサヨコ伝説を。

入学式の日、赤い花を生けて。

文化祭はサヨコのお芝居をし。

卒業式には鍵を渡す。

西浜中学にはない、私のサヨコを作ろう。




そして。
語り継がれていくように。
伝説として残るように。
見守っていこう。




サヨコ それは、私に大切なものを教えてくれた。
大切な仲間をくれた。


だったら。


今度は私が教える番。
新しい中学で。
新しい、私だけのサヨコを。



―――作っていこう。





「ね、見てみて。サヨコよ!!」

「本当だ。本当にいたんだ!」

「今年はどんな年になるんだろうね?」



再び扉は開かれた―――。



新たなる『サヨコ伝説』の扉が………。







*あとがき*
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。今回初めて沙世子の視点で書いて見ました。というのも、ドラマ「六サヨ」のエンディングを見て、ふと思った話です。
沙世子が新しい伝説を作るんじゃないかなぁ?と思って。
そんな感じのエンディングだったから。
これ書いてたら、また見たくなってきちゃいました。
こんなにも見たいと思うドラマは初めてです。
改めて六サヨはすごいなぁって思いました(^-^)