00. メモリアル


初春。
まさにその言葉がふさわしい今日。
あたたかな日差しが部屋の窓から差し込む。
そして気づく。
ふと目をやった先は本棚の中にあるアルバムだった――


懐かしいあの頃。
今になってすごく充実してたんだとひどく痛感した。
アルバムの中の笑顔。
時が止まったように笑ってる自分。
時間さえ忘れてはしゃいだ日々。
懐かしい制服姿のみんな。
あれから何回春が訪れたのだろう。

毎日に追われて、それでも充実していた。
傷ついた時、楽しい時。
嬉しい時、泣きたい時。
いろんな思い出、蘇る。
ぱらっとめくると一枚の写真。
中学二年生の時の写真。
そこには、沙世子がいた―――。
もちろん中学三年生のときもいろいろとあったけれど。
一番いろいろとあったのは中学二年生の時だった。
沙世子が転校してきて、六番目のサヨコの年で。
私は秋に送られてきたサヨコの鍵を貰って……。
いっぱい悩んで、傷ついて、でも楽しくて。
沙世子と2人で内緒で夜の学校に来て。
どきどきわくわくした懐かしい日々が走馬灯のように駆け巡る。
沙世子や秋、まあともうまくいかなくて辛い時もあったけど。
その分だけみんなと仲良くなることができたと思う。
そのあと沙世子は転校して……。


「何やってるんだよ」


ふいに頭上から沸く言葉。
私は見上げると、カップを持った秋がいた。
机の上にカップを置くと、私が見ているそれに目をやる。


「あぁ、あの時のか」


秋は沙世子を見て言った。
私は秋が置いたカップを口に運んだ。
甘いココア。
私がリクエストしたもの。


「あいつどうしてるんだかな?」


秋の言葉に私は「さあね〜?」と答えた。
沙世子は沙世子でやってるだろう。
たまにメールのやりとりはするけど、ホントごくたまにだから。
だから、ここ最近の沙世子の様子なんてわからないのも同然。
何かあったら言ってきてくれると思うし。


「ねぇ、秋」

私は秋を呼ぶ。

「ん?」

ココアを飲んでる秋に尋ねる。

「またみんなに会いたいね」

私が言うと、秋は「そうだな」と優しく返す。
今は別々の道を進んでる友達に。
みんなに会いたい。


「あ」


「ん?」



私の突然の声に秋は尋ねる。


「今年って七番目のサヨコの年だよね」


サヨコ伝説の七回目に当る年だった。


「ああ、そうか。そうだな。やるのかな?サヨコ」


秋の言葉に私はあの時のことを思い出していた。
扉が開いた時のこと。
今度は誰があの扉を開くんだろうか?
ドキドキする。
あの頃の私に戻ったように。


「今度中学行ってみるか」


秋がぼそっと呟く。


「うん。そうだね」


私は秋の意見に同意した。
さあっとさわやかな心地よい風が窓の外から部屋の中へと吹く。
春はもうすぐそこに来ていた。



4月の始業式の日。
新しくなった花瓶に赤い花が生けられること。
無事サヨコが現れることを。
祈ってる、そんな自分がいた。


今年は七番目のサヨコの年。



新しい扉は開かれようとしている――…







*2003年の文化祭企画の作品でした。読んで頂きありがとうございます!