初春。
まさにその言葉がふさわしい今日。
あたたかな日差しが部屋の窓から差し込む。
そして気づく。
ふと目をやった先は本棚の中にあるアルバムだった――
懐かしいあの頃。
今になってすごく充実してたんだとひどく痛感した。
アルバムの中の笑顔。
時が止まったように笑ってる自分。
時間さえ忘れてはしゃいだ日々。
懐かしい制服姿のみんな。
あれから何回春が訪れたのだろう。
毎日に追われて、それでも充実していた。
傷ついた時、楽しい時。
嬉しい時、泣きたい時。
いろんな思い出、蘇る。
ぱらっとめくると一枚の写真。
中学二年生の時の写真。
そこには、沙世子がいた―――。
もちろん中学三年生のときもいろいろとあったけれど。
一番いろいろとあったのは中学二年生の時だった。
沙世子が転校してきて、六番目のサヨコの年で。
私は秋に送られてきたサヨコの鍵を貰って……。
いっぱい悩んで、傷ついて、でも楽しくて。
沙世子と2人で内緒で夜の学校に来て。
どきどきわくわくした懐かしい日々が走馬灯のように駆け巡る。
沙世子や秋、まあともうまくいかなくて辛い時もあったけど。
その分だけみんなと仲良くなることができたと思う。
そのあと沙世子は転校して……。
「何やってるんだよ」
ふいに頭上から沸く言葉。
私は見上げると、カップを持った秋がいた。
机の上にカップを置くと、私が見ているそれに目をやる。
「あぁ、あの時のか」
秋は沙世子を見て言った。
私は秋が置いたカップを口に運んだ。
甘いココア。
私がリクエストしたもの。
「あいつどうしてるんだかな?」
秋の言葉に私は「さあね〜?」と答えた。
沙世子は沙世子でやってるだろう。
たまにメールのやりとりはするけど、ホントごくたまにだから。
だから、ここ最近の沙世子の様子なんてわからないのも同然。
何かあったら言ってきてくれると思うし。
「ねぇ、秋」
私は秋を呼ぶ。
「ん?」
ココアを飲んでる秋に尋ねる。
「またみんなに会いたいね」
私が言うと、秋は「そうだな」と優しく返す。
今は別々の道を進んでる友達に。
みんなに会いたい。
「あ」
「ん?」
私の突然の声に秋は尋ねる。
「今年って七番目のサヨコの年だよね」
サヨコ伝説の七回目に当る年だった。
「ああ、そうか。そうだな。やるのかな?サヨコ」
秋の言葉に私はあの時のことを思い出していた。
扉が開いた時のこと。
今度は誰があの扉を開くんだろうか?
ドキドキする。
あの頃の私に戻ったように。
「今度中学行ってみるか」
秋がぼそっと呟く。
「うん。そうだね」
私は秋の意見に同意した。
さあっとさわやかな心地よい風が窓の外から部屋の中へと吹く。
春はもうすぐそこに来ていた。
4月の始業式の日。
新しくなった花瓶に赤い花が生けられること。
無事サヨコが現れることを。
祈ってる、そんな自分がいた。
今年は七番目のサヨコの年。
新しい扉は開かれようとしている――…
終