08. 拍手ログ


【桜よりも(秋×玲)】

日本人、春の花といえば真っ先に挙げるのはきっとピンク色の花びらだろう。
だが、潮田玲は桜よりも赤い花びらを思い出す。

「春といえば桜なんだろうけどさ、私は『チューリップ』なんだよね」

「まぁ、そうだろうな」

玲の言葉に頷いたのは幼馴染でもあり、想い人でもある関根秋だった。
あっさりと頷く理由はあまりに簡単だ。

「忘れないよ、あの日のこと」

玲は想いを馳せながら、あの日のことを思い出す。
赤い花びらが目の前に入ってきた朝のこと、その日から始まった大切なできごとを。

「あれがなかったらきっと春の花と言えばって言われたら桜って答えてるんだろうね」

「だろうな。俺もそうだし」

チューリップの花を、赤い花を生けること、それがその物語の始まり。
大切な大切な始まりの合図。
そして、初めて出会った少女の後姿を思い出していた。

「・・・・・・そう言えば沙代子もT大受かったって」

「へぇ。さすが津村」

「秋と同じ大学だね」

まぁなと一言呟いた秋の横顔を見つめ、秋はその視線に気づくと言葉を綴った。

「玲も合格おめでとう」

「ありがと」

それぞれの道を歩き出す。
大人への一歩、それでも胸に刻まれた思い出は色褪せることはない。

「沙代子に会ったら今度一緒に遊ぼうって言っておいて」

「あぁ、わかった」

桜の花びらが舞う。
あの日から四年の歳月を経ても変わらないものがある。
二人の脳裏に過ぎるのは赤い花びらが咲いた日のことだった。






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