03. 憧れ


不思議だった。
あの兄貴がどうしてこうなったのかが。
幼い私の心に疑問を抱かせた。





兄貴が変わったのは中学生の時。
その理由は『サヨコ』だと兄は言った。
中学校の言い伝えであるのだそうだ、『サヨコ伝説』というものが。
幼い私を見て、多分理解してないんだろうなと判断したのか、
『サヨコ伝説』について語りはじめた。
短いようで長い物語。
色んな話として残ってるんだよと兄は言う。
私はなぜかその話がとても羨ましくてならなかった。
なぜなら。
あのいつもやる気がなくて、どうしようもないような兄だったのに。
確実に、変わったのだから。



自分だけの物語がある、『サヨコ』をやってみたい。



確実に、自分の中にその想いは広がる。
どんな自分になれるのか。
そして、この兄のように何か大きなものを掴めるのか。
幼心に思った。



私は、私だけの――――。



願いは届くだろうか。
兄のように変われる、そんな自分になりたいのだと。
くしゃっと私の頭を撫でたその兄の笑顔と。
そのぬくもりが残っていた。



「ね、ね、サヨコ伝説って知ってる?」
季節は何度も巡り、自分が中学校に上がって数ヶ月。
友人たちの会話からそんな言葉が飛び交っていた。



サヨコ――――。


久々に聞くその名に私はドキドキと鼓動が鳴る。
来年は、六番目のサヨコの年。
鍵は誰に送られるのか?
誰にでもない、サヨコに願う。


私に、鍵を下さい。


あの兄のように。
変わる何かを。


どうか………。







*あとがき*
まあの独白です。兄の背を見ながら彼女は幼心にどう感じたのかなって思って。
七夕辺りにupするはずだったのに、今…となってしまいました(滝汗)
まあ一人だけで書いたのは初めてかも〜。久々の六サヨで楽しかったです。