「ねぇ、あそこにいるのまあの彼氏じゃない?」
友達の一言に私は振り返る。
「え?」
「ほら、そこそこ。あの庭の大きな木の下。一緒にいるの女の子だよ」
ホントだ・・・。ユキ、女の子と一緒にいる。クラスの子かな?
何か見覚えがある・・・。 たしか、ユキのクラスの一柳さんだ。
・・・・・・なによ。
あの嬉しそうな顔は。何かムカムカしてきた。
「いこっ!」
「え?いいの?あの人かわいいで有名だよ?心配じゃない?」
「う"っ・・・それは・・・いいから、いこ!」
私は友達を引っ張って、その場を離れた。気にならないわけじゃない。
少し心残りはあるけど・・・・。
放課後―・・・
今日は部活がないから珍しくユキと待ち合わせしてデート。
月に何回かしかないからすごく楽しみにしてた。
久々だから嬉しいはずなのに、さっきのことがまだ頭に残ってるせいか少しイライラしてる。
しかもユキが待ち合わせの時間になっても来ない。
もう10分は経過してる。
何やってるのよ、ユキ。
20分・・・経過。メールを送っても返ってこない。
もしかして、忘れて帰っちゃったのかなぁ・・・?
だんだん不安になってきていたちょうど30分を過ぎたあたりにユキは現れた。
「まあ、ごめん!」
息を切らして、肩で息をする。
「もう!遅いよー。ばかばか!」
「ごめんごめん、ちょっと取り込んでて・・・」
「遅れるなら連絡してよね。何度もメールしたし、電話もしたんだよ?」
「ごめんごめん」
「ごめん・・・って理由は?説明してくれないの?」
私は昼のこともあってかイライラさがたまっていた。
言いたくないのに、余計なことまで言いそう。
「ごめん。今は説明できない」
「・・・そう。わかった。いいよ、別に」
思いっきり冷たく言ってしまう。
「どうせ・・どうせ昼間に一緒にいた子といたんでしょ?隠さなくてもいいよ」
「・・・なぁ、勘違いしてない?」
だんだん二人の間の空気が変化していく。
「本当のことでしょ?」
「・・・あっそ。勝手にしてれば」
「ええ。勝手にしますとも」
「わかったよ。今日の約束なし。めちゃくちゃ気分わりぃ。じゃあな」
そう一言言うとユキはこの場を離れた。
・・・・またやっちゃった・・・。
けんかするつもり無かったのに。
一番馬鹿なのは私だ・・・。
昼間のことが気になって、ちょっとイラついて、それをユキに当たっちゃった。
・・・・どうしよう・・・。
だんだん自分がイヤになって目に涙が溜まってくる。
私の・・・馬鹿・・・。
ユキの言葉なんで信じてあげれなかったんだろう・・・
落ち込む私をよそに今日もきれいな月が昇り始めていた。
「ってだからってうちに来たわけね?」
「うん」
落ち込む私の横に親友の潮田玲がベッドに横になりながら私の話を聞いていた。
玲はユキの兄貴の関根秋と付き合っている。
「まあの気持ちもわかるよ。一柳さんってかわいいもんね。私同じクラスだからよくわかる。」
そう、玲はユキと同じ普通科の文理コース。私は普通科の特別進学コース。
だからクラスはもとい全く交流が無い。唯一交流があるとすれば部活だけ。
そんな部活も私だけが違っていた。
「ねぇ。玲って秋君と全然違う学校でしょ?不安にならない?」
「・・・うーん・・・不安にならないって言ったら嘘だけど、でも私は秋を信じてる。秋は私の全てではないし、秋も私が全てではないもん」
玲は外見子供っぽいけど、言うことは結構大人。
そんな玲がすごくうらやましい・・・・。
「いいなぁ・・・。私も玲みたいになりたいよ・・・。」
「えー?私はまあみたくなりたいよ?だって頼りがいある人間になりたいよ。私って中途半端なとこけっこうあるからさぁ・・・」
「え?どこが?」
私はすごく驚いた。私がうらやましい?
「頼れる=信頼性があるもん。もうちょっとしっかりしてればなぁ・・・・」
うなだれながらベッドにあるクッションに寄りかかる玲。
「でもさ、玲がしっかりしてたら秋君困らない?私は玲は今のままで良いと思う。だから玲と秋くんってバランスとれてるんじゃない?」
私の言うことにびっくりしたのか、玲の口がポカァーンと空いたままだ。
「うーん・・・そうなのかなぁ?・・・」
「そうなんだよ。きっと」
ちょっと考え込む玲をよそに私は仲直りする方法をひたすら考えていた。
・・・とその時。
「あっ!!」
玲が突然大きな声を出した。
「なっ、何?」
「ね、まあって明日あいてるでしょ?」
「・・・う・・・うん・・・・でもなんで?」
「まあとユキが仲直りするいい方法思いついた!明日さ、うちにもう一度来てよ。時間は・・・そうだなぁ・・・。5時に」
「う、うん。わかった」
「絶対に仲直りできるから」
「?うん」
玲は一人満足気味にベッドの上に立った。
「明日をお楽しみに」
そういうと玲は満面の笑みで私を見た。
一方−・・・隣の家にいるユキと秋は・・・・
「あーあ、どうしていつもけんかしちゃうんだろう・・・・」
ユキがぼやく。
秋はこんなにユキが落ち込む姿を見るのは久しぶりだった。
それもそのはず。ユキに会うのも久しぶりなのだから。
・・・こりゃあ結構参ってるなぁ・・・・
秋はなだめるようにユキにココアを入れたマグカップを差し出す。
「まずは糖分を取れ。じゃないと考えられるものも考えられなくなっちゃうだろ」
秋の言葉に黙って頷く。
「・・・サンキュ、兄貴」
「・・・まぁ、お前が本当は謝らなきゃいけないことだけはわかってるな?」
「ああ・・・俺だってちゃんと言ってあげたかったんだ。でも約束だから・・・。遅れてきたのだってちゃんと連絡するつもりでいたんだけど・・・・。」
「まあはわかってくれる・・・そう思ったんだろ?」
「うん・・・でもまさか昼間見られてたとは思わなくって・・・」
「でも約束は明日には決着するんだろ?終わったらちゃんと説明しろよ?」
「・・・・兄貴に言われなくったってわかってるよ。」
すこしぶうたれながら言う弟の姿は何となく秋にとって久しぶりに見る弟のかわいらしい一面だった。
プルルルルルル・・・・ 電話の音が鳴る。
誰だろう?
秋が黙って受話器を取ると元気な玲の声だった。
「もしもし?あれ?秋?何でいるの??」
出るはずの無い秋の声に玲は心底驚いていた。
秋は離婚した父親の方」に住んでいる。ユキは母親の方。
たまに秋が遊びに来るくらいで、お互い忙しいためほとんど会えなかった。
「ちょっとな。玲こそどうした?」
秋は相変わらず元気だなと思いながら受話器に耳を傾ける。
「あ、じゃあユキから聞いたかな?ユキとまあのケンカの話」
「ああ、今聞いたとこ。」
「んじゃあ、秋にも協力してもらお。あのね、明日空いてる?ユキとまあのことでさ・・・・。」
「ああ、今いるよ、ユキ。変わろうか?」
「ううん。いいの。実は・・・・・でさ。秋に手伝って欲しいの。あとこのことユキに伝えといて欲しいんだけど・・・いい?」
「・・・・わかった。じゃあ明日4時半に帰ってくるから」
「うん。ありがとう。秋。じゃあ・・・」
そういうと電話が切れた。
明日4時半までに家に帰ってきて、花宮とユキの仲直りのために玲と一肌脱ぐ。
久々におもしろいことになりそうだ・・・そう思う秋だった。
翌日−・・・・
私の心とは裏腹にいい天気。
玲はあんなこといってたけど、 本当に仲直りできるのかすごく不安だった・・・。
「あ、まあ!今日5時にちゃんと来てねー!!」
向かいから歩いてくる玲が私を、見つけて言った。
「はいはい。わかったって」
そういうと玲は安心したかのように私の横を通り過ぎた。
あーあ、本当はあまり行く気がない。 でも玲の頼みだから行くけど・・・・。
なんてことを考えているうちにいつのまにか放課後になっていた。
午後4時半。
ちょうど秋が帰宅。奥から玲が出てきた。
「おかえりー。準備進んでるよ」
「ただいま。あれ?ユキは?」
「あ、今買い物に行ってる。そろそろ帰ってくると思うんだけど」
「そっか・・・・あ、そういやあれはどうなったんだ?」
「ああ、あれ?大丈夫だったって。ユキほっとしてたよー」
「そっか。ならいいんだ」
秋と玲がしゃべっているとユキが帰ってきた。
「ただいまー。あ、兄ちゃんおかえり」
「おう、ただいま。よかったな。事がうまく運んで」
「うん。これでちゃんとまあに言えるよ」
「あ、もうこんな時間!あと10分でまあが来ちゃうよー。早く手伝って!」
玲が秋とユキに叫んでいた。
午後5時。
私はおぼつかない足で玲の家の玄関に着いた。
ピンポーン−・・・
いつもと違う緊張感でチャイムを押す。
「はーい!」
「玲?私だけど・・・・」
「あ、待ってねー」
ガチャ。
鍵の開く音。
と同時に玲が出てきた。
「じゃあ、隣行こう」
「え?隣?隣ってユキの家でしょ?何で・・・」
「えっ?て、仲直りするんでしょ?私も秋もいるから。ね?」
「・・・・・・わかった。」
渋々私が承諾すると玲がユキの家のドアを開けた。
と同時に・・・・・・・・
パァーン!!!
クラッカーの音が鳴り響く。 私は何が起きたか理解できていなかった。
玄関にはクラッカーを持った玲と秋君と・・・・そしてユキがいた。
「まあ、Happy Birthday!!!」
三人そろって言う。
・・・・そうか、今日私誕生日だったんだ・・・。
けんかしてることに夢中で自分の誕生日忘れてた。
半ば呆然としてると玲が心配そうな顔をして私の顔を覗き込む。
「まあ、大丈夫?」
「・・・・う、うん・・・・」
「ユキがね、話あるって」
玲がそういうと私の背中を押して奥の部屋へと連れて行ってくれた。
私はユキと向かい合わせに座る。横には玲と秋君。
「あの・・さ、この間は本当にごめん!」
ユキが頭を下げる。
「実は俺の友達の隆弘が一柳さんの事が好きでさ、一柳さんとは席が近いこともあって結構しゃべるんだよ。で、この間、まあが見てた昼休み、一柳さんと隆弘が会えるように俺が約束取り付けてたわけ。放課後遅れてきたのは、隆弘が告白終わるまで待っててくれって言われちゃって。俺も必死だったから、どうしてもいてやりたくて。親友の頼みは断れないし・・・・」
必死で話すユキ。
そうだ、ユキはいつも友達のために精一杯尽くす。
そんなユキが大好きなのに、どうして忘れちゃってたんだろう・・・。
「・・・・告白の返事はどうだったの?」
言葉に詰まってたユキに私は尋ねた。ユキがほっとした表情で答える。
「実は一柳さんも隆弘のことが好きだったんだって。ほら、体育館の横のクラブ用の校舎があるだろ?一階は調理室があるから、そこから一柳さんずっと隆弘のこと見てたんだって。」
ああ、そっか。一柳さんは料理部だ。
「で・・・・まあ、許してくれる?」
ユキは恐る恐る顔をあげて私を見た。
「・・・・ん。ただし、今度からどんな理由があろうとちゃんと遅れるときは連絡してよね」
「わかった!絶対するよ」
ユキの顔が急に明るくなる。
「あ、まあ。これプレゼント・・・・・」
そういってユキから手渡された小さな包み。
開けてみると小さな便色の羽根に小さい宝石がついたネックレスが入っていた。
「・・・これ!」
私はびっくりする。だってこれは・・・・。
「そう、ずっと前欲しいなぁ・・・っていってただろ?」
「覚えててくれたの?」
私は心の底から何か湧き上がるような想いでいっぱいになる。
「もちろん。まあが欲しいって言ってたものは覚えてるよ」
「ありがとう・・・ユキ。私のほうこそごめんね」
心の底から素直に謝ることができた。
「さてと、パーティー始めましょうか」
玲がイスから立ち、奥においてあった1ホールのケーキを持ってきた。
後ろからお菓子やらからあげやら色々と入った皿を持ってくる秋君。
コップにジュースを注ぐと私たちはそれぞれコップを持つ。
玲が元気良く大きな声で言う。
「では、まあの16歳の誕生日を祝いまして、乾杯といきましょうか!」
「「「「かんぱーい!!」」」」
「そしてまあ、誕生日おめでとう!!」
さっきまでの憂鬱な気分はなくなり私の心は澄み切った青空のようになった。
この誕生日を私は忘れることはないだろう・・・そう思いながら・・・・。
後日−・・・・
何度か一柳さんと隆弘君が一緒にいるところを見かけるようになった。
私が弓道部の練習に一段落つけていると、そこにバスケの練習を一段落つけてきたユキが来た。
「あの二人お似合いだろ?」
ユキは満足げな顔をして尋ねる。
「そうだね。いいなぁ・・・・」
ちょっとため息混じりに言う私。
「まあは知らないかもしれないけど、あの二人おしどり夫婦二号だって男どもの間でうわさになってるんだぞ」
「ふぅーん。・・・・じゃあ、1号は?」
「決まってるじゃん」
「?誰?」
「俺たちだよ」
ユキはそういってにやっと笑った。
終