02. Happy Birthday<玲編>

夏のまぶしい太陽が木の隙間から差し込んでくる。
8月の上旬、そんな暑い日に私潮田玲はある場所へ向かっていた。
もう、今は通らない中学の通学路。
懐かしい心地で歩いた。



一週間前−・・・・

それは一本の電話が始まりだった。
プルルルルル・・・・・

「あ、もしもし?玲?」

なつかしい、中学の時の同級生からの電話。

「まあ?どうしたの?」

「ね、来週の今日って部活ある??」

「来週の今日?ないよ」

「じゃあさ、その日に中学校行こうよ。」

「う、うん。いいけど、何で?」

「ふふっ。ナイショ。じゃあ、午後1時に校門の前で」

「わかった」

「じゃあね、ばいばい」

・・・・とまあからの電話で呼び出し。久々だった。
高校は同じだけど科が違うから、全然まあとは会ってない。部活も違う。
私は普通科の文理コース。まあは普通科の特別進学コース。
部活は、私はそのままバスケを続けたけれども、まあは別のことがしたいからと弓道部に。
時々見かけるけど、まあの弓道着姿はなかなかりりしくてきれい。
私と似たり寄ったりなのはユキ。普通科の文理コースで、部活もバスケ。
中学でも良いプレーヤーであったユキは、有名私立高からの引き抜きの話もあったが、お金がかかるし、母親の花屋も手伝いたいからと言って私と同じ高校を選んだのだ。
一方、ほとんど会ってないのは秋。
学区外の高校を選び、通っている。
今は父親のところに住んでいるため、連絡の手段はメールか電話。
たまに夕食を食べに来たり、泊まったりしてる時は会えるけど、それも6月下旬から会っていなかった。
秋の高校は進学校だから、色々と大変らしい。でも、写真部だけは続けている。
この間クラスメイトだった溝口に会った。
溝口は高専に。何でも芸大に行きたいということをこの間しゃべっていた。
加トは秋と同じ高校に通っている。秋と同じクラスだそうだ。
そして、沙世子は−・・・・・
今でも元気にやっている。この間メールで近況報告をしてくれた。
・・・・なつかしいなぁ・・・・
中学を卒業してからクラスのみんなにもほとんど会っていない。
先生にも・・・・。
なんて、なつかしんでいるうちに、いつの間にか校門の前に着いていた。
約束の時間まであと5分はある。
校門の塀に寄りかかって、色々と思い出していた。
入学式から卒業式まで。
中でもやっぱり強烈なのは小夜子伝説。
そんな中学2年の頃がなつかしかった・・・・。

「れーいー!!」

校舎の方からまあの声。

「ねー、校舎の方に入ってきてぇ。2−Aの教室だから。」

「わかったー。」

まあの言われるとおりに校舎の中へ入っていく。2−Aの教室を目指して。
今は夏休みだから生徒の姿はないけれど、でも、校舎の中も変わっていなかった。
閉めてある2−Aの教室の前に着いた。
ガラッ。ドアを開ける。「まあ、何・・・・・・」
パァーン!!
クラッカーの音が教室中に鳴り響いた。

「・・・・・は?」

私の目が点になったまま、呆然と立ちつくしていた。

「HAPPY BIRTHDAY!!」

周りを見ると、まあ、秋、ユキ、溝口、加ト、黒川先生、それに・・・・沙世子!

「玲、何て顔してるんだよ」

「秋・・・・」

「そうよ。びっくりした?」

「まあ・・・・」

「まあの案、結構イケてたみたいね」

「沙世子・・・・」

「そりゃあ、まあだからな」

「ユキ‥‥」

「そうねぇ〜もうちょっと凝ろうとは思ったんだけどねぇ」

「溝口・・・・」

「いや、やっぱりシンプルが一番だよ」 

「加ト・・・・」

「何だ全然変わってないな、潮田」

「黒川先生・・・・みんな・・・・。」

私は言葉に詰まって、ただ立っていた。
感動して震えてる。

「さあさあ玲、早く中に入ってきてよ。ケーキとかもあるのよ?」

まあがせかす。

「ほら、玲」

秋が私の手を取ると握り、中へ引っ張ってくれた。
秋の手のぬくもりを久々に感じる。
教室の中に、アイスケーキとお菓子が少々。冷えたジュースもある。

「ありがと。・・・・すっごく嬉しい!」

嬉しいのと同時に、涙が出てきた。
久々にみんなの顔を見て、ホッとしたのだ。
そんな私を見て秋が、ぽんぽんと頭をなでてくれた。

「あ〜。玲泣いちゃったよ。秋くんが言ってたの当たりね」

まあがやれやれといった顔で、見ていた。

「だろ?玲は昔からこういうのに弱いんだって」

そういうと秋は私を抱き寄せた。
ぽんぽんと頭を撫でる秋の手が大きくて。
それがすごくあったかくて。
余計に涙が止まらなかった―――…………


落ち着いたところでテーブルの上にあったケーキのろうそくに火をつけて、歌を歌ってくれた。

「Happy Birthday dear れーいー。Happy Birthday to you!」

ふっとローソクの火を消す。
と同時にパァァンとクラッカーが鳴り響いた。

「おめでとう、玲」

みんな同時に言う。
そしてプレゼントを私にくれた。
それぞれ想いの詰まったプレゼント。
すごく嬉しかった。
と、同時に私は思う。
『みんなの友達』で良かった――と。
幸せモノだなとも。
「ありがとう」ってたくさん伝えたい。
みんな、ありがとう………

陽がだいぶ傾いてきた。
そろそろお開きの時間でもある。

「さて、そろそろお開きにするぞ。もう校舎も閉めるしな」

黒川先生は椅子から腰を上げながら言う。

「そうね。私もそろそろ帰らないとおばあちゃんに言われちゃうわ」

沙世子も椅子から腰を上げた。
みんな椅子から腰を上げて片付け始める。

「また、来年もしよっか」

まあが机を並べながら言う。

「そうね、ミニクラス会?みたいな感じじゃない?」

溝口もまあに続く。

「じゃあ、来年もしましょうか。玲の誕生日も兼ねて」

沙世子が少しおどけながら言った。

「「賛成」」

みんな同時に声にした。

「玲は?」

秋が私の顔を覗き込む。

「私も!!」

元気良く答えた。
帰る準備が済むと教室を一人、また一人と後にする。

「また来年ね」

私は教室にそう告げて秋の待つ廊下の先へと走った。



しんと静まり返った教室に一人の少女がいる。
黒板には
「誕生日おめでとう」と書いていた。

“またね”

彼女達が去った後の廊下に少女はそう告げて黒板の文字と一緒にすうっと消えていった。



また来年、この季節に会おうね―――………
みんな………




*読んで頂きありがとうございました!