12. しんぱい(心配)
「まだあいつはいるのか」
早くあちらに行けばいいものを、とため息交じりの声が少女の表情を変えてゆく。笑顔に苦味が染まり、「仕方ないよ」と小さく微笑んだ。
「だって、ナルのことが心配なんだもん、ジーンは」
「余計な心配だと言っている」
「それでも! それでもやっぱり心配なんだよ、ジーンは。ナルは誤解されること多いし」
「昔からなもので特に不便も感じていない」
きっぱりと言い放つナルにもう、と少女は唇を尖らせた。
そういうところが心配させてると言うのに、本人にはちっとも伝わっていないらしい。
余計な敵を増やさなければいいのになぁと思うのに本人はそれが煩わしいのだろう、どうでもいいとさえ言ってしまう。
「たった一人の肉親なんだもん。一人だけ残して逝くのはやっぱり心配なんだよ」
私でもそうだと思うよと一つ息を吐いて少女は答えた。
「麻衣とは違う」
「えーえーそうですとも。悪かったですよー、バカで」
「わかってるなら口にしないほうがいいと思いますが、タニヤマさん?」
「うわ、すっごいイヤミ〜」
ホント損する性格してるよなぁと少女――谷山麻衣はちらりとナルを見つめた。
双子の兄であるジーンが心配するはずである。時には派目を外して死にかけることだってあるし、冷静なようで意外と冷静じゃないところもある。
何よりも。
「でもね、好きなんだから・・・心配になるんだよ」
ジーンはナルにとってのかけがえのない血を分けた兄弟であり、双子の片割れ。
だから心配して当然なのだ、麻衣はそう告げる。
「じゃあ、麻衣は?」
ナルにしては珍しくあしらわなかったことにも驚いたが、それ以上にその先の答えを求めたことに麻衣は驚きを隠せない。
そう聞かれるとは思わなかった。
「もちろん、答えは決まってるよ」
――心配に決まってる。だって、大事な人だもの。
言わなくたって知ってるくせに、言葉を求めるなんてある意味ずるい。
「どんな?」
「・・・・・・ナルが大切だから、だから心配するもん」
だからジーンの気持ちはよくわかるんだよ。
麻衣の言葉にナルは「そう」と短く答えた。そんなナルを見つめて麻衣は微笑む。
仏頂面で、誤解され易くて、でも本当は優しいナルが心配なんだよ。
だから。
ジーンも私もずっと傍にいるからね。
密かに抱く胸の中で疼いている想いを馳せながら、もう一度ナルを見つめて頬を緩ませた。
終
*ゴーストハント最終巻発売祈念に書いてみました。本当はジーンも交われればいいのですが。
無理なので二人だけの会話でちょっと楽しんでみました。
とうとう最後の巻が出ちゃったんだなぁと淋しい気持ちでいっぱいですが、楽しかったのも事実です。
だからちょっと何かしたくて書いてみました。