02. いのり(祈り)



どうか、未来を―――。



死んだと訊いていた恋人の名前に反応した女性の姿に葵は言葉を失った。
どうしてその名前に反応するんだ?
どうして、亡くなった筈の恋人がそこにいるんだ?
葵の頭の中でたくさんの疑問符が打たれるも、答えは何一つ出てこない。
思い起こせば幸せだった日々ばかりが脳裏を過ぎってゆく。
二人でヴァイオリンを弾いたこと。自分が下手くそで苦笑いを浮かべていた恋人との時間。
他愛のない言葉を交わした日々はもう返ってこない、そう言われていたはずで。

「静音・・・・・・」

恋人の名を口にすると寒い風に吹かれて消えていった。
本当に彼女は恋人であるあの少女なのか。確かめたいことはたくさんある。
そしてできるものなら。

―――会いたい。

恋焦がれた、失ったはずの光を求めてこの列車の先にある未来へと祈った。
どうか、恋人にもう一度会えますように。

まだあなたのことを愛しているから。





『俺のこと信用してないな?』

ニッと口の端を上げてそう言った仲間は拳で交わすと笑顔を見せた。
アイツならきっと大丈夫だ、そう信じて仲間である青年に未来を託した。
それまではまた会えることを信じて疑っていなかったのに。

「葵ーっ!」

力いっぱい名前を呼んでも声は返ってこない。
目に映るのは大破した飛行機の残骸。普通ならこんな光景を見れば絶望を感じるだろう。
だが、彼は違う。こんなことで簡単にくたばりはしない。

『知れば知るほどわからない』

色んな可能性を持っている彼だから、そう答えた自分の言葉を思い出す。
無理だろう、そう思っても彼は諦めようとはしなかった。
そしていつもその山を乗り越えている。それをわかっているから、信じた。
いや、まだ信じているんだろう。

「どこにいるんだ。葵ーっ」

名前を叫ぶ。あの笑顔で「ここ、ここ」と言って出てくるように。
だってそうだろう?

お前はいつだってゼロに近い未来を変えてきたんだから。





役割を終えて、月日は重なってゆく。
もう随分と前のように感じるあの日々。葵と葛と棗の四人で一緒に過ごした時を思い出しては小さなため息を漏らした。
決してあの時と同じ日々が返ってこないのを雪菜はわかっている。
一番近い存在であった棗はもうここにはいないが、自分の心の中で生きていた。
一緒にいた葛も、葵も今ここにはいない。
四人で過ごした濃密で短い日々は雪菜にとっても大切な記憶のカケラだった。
大事な家族である兄ももういない。
でも確実に時だけは過ぎてゆく。

「みんなはどこへ行ってしまったのかしらね」

ぽつりとこぼれ落ちた声は淋しさに満ちた心に染み込んだ。
もう一度会えるのならば、もし願いが叶うのならば願おう。

どうか、彼らに。

―――未来を、と。



祈る声は形を変えて空へと溶け込んでゆく。










*『閃光のナイトレイド』からモノローグ的な話です。
私の中ですごく熱いアニメなので、とりあえずモノローグから。
葵と葛の会話とか、櫻井機関の四人の話とか書きたいなぁ。
仲間って言う意識が好きです。早くDVDの最終巻出て欲しいですね。