たまの日曜くらいゆっくりしましょう。
「なー、美琴」
「んー?」
ごそ、とベッドの中で美琴の身体が翻った。声を掛けた上条は目が合った美琴に再度問う。
「今日はどうする?」
「・・・そうねぇ・・・どうしよっか」
まだ頭がぼけーっとしていたのだろう。布団の中からゲコ太の顔が覗かせた。ゲコ太のプリントされたパジャマがごそごそと動き出す。ふ、と瞳が楽しそうに柔らかくなった。
「良いんじゃない? もう少しこのままでも」
「まぁ、日曜日だしな」
「それもそうだし、たまにはアンタとこうやってだらだらするのも悪くないかなーって」
それにさ、と美琴は手を伸ばしてぷに、と上条の頬を抓る。一瞬上条の眉間に皺が寄った。
「・・・なにして・・・・・・」
「あ、やわらかーい。アンタ意外とやわらかいのね」
ケタケタと笑いながら美琴が言うと上条は片方だけ抓られたまま文句の言葉を口にした。
「みーこーとー?」
「だって、こういう時じゃないとこんなことできないじゃない」
あはは、やわらかいと笑う美琴に上条は瞳を据えて身体を起した。起したと同時に美琴を覆い被さるような立ち位置になる。
そしていつの間にか両手を押さえ込まれていた。
「あ・・・あれ?」
「この状況で何をされてもいいってことだよな?」
あら、やばいかなと美琴は頬を引き攣らせた。ちょっと調子に乗りすぎたかもと思いつつ、この状況はやばいと本能が警鐘を鳴らす。こうなると美琴に勝ち目はない。ただでさえ男と女で体力差があるのに、上条の右手にかかれば美琴のレベル5といわれる超電磁砲も敵わないのだ。
「あー・・・いや、そういうわけじゃあないんだけど・・・ってひゃあ!」
上条は美琴との距離を詰めると、美琴の弱い部分を攻めた。最初の狙いは耳元でそっと息を吹きかける。そわ、と背筋が経ったような気がした美琴はじっと上条を見つめていた。
「い・・・いじわる」
少し涙目になった美琴が見上げる。夜の帳の中よりも明るい今だと何もかも見えてしまう分自分もまた抑えがきかなくなりそうで、上条はぱっと手を離して美琴から身体を離した。
「・・・・・・当麻?」
「いや・・・ちょっと俺もセーブきかなくなりそうだからやめた。家でごろごろするにしてもそろそろ何か食べようぜ」
ちら、と傍にある時計へと視線を向けると既に昼を過ぎていたことに美琴は気づき「あれ、そんな時間?」と問うた。美琴の問いに上条はうん、と頷き返す。
「そ。だから少しお腹空いたしさ」
「昼何にしようか? 何かリクエストある?」
「昼って言うか、朝と昼兼用だよな」
苦笑しながら上条は色々と思い浮かべるもののこれといってこれが食べたい、と思うようなものはない。朝だったら和食でご飯と味噌汁と言えるし、洋食ならパンとスクランブルエッグとスープと言う組み合わせだってある。だが、朝と昼兼用となると上手いこと思いつかない。
まぁ、自分よりも美味しく作ってくれる美琴が作るものだから何でもいいとは思うのだが、それだと困るのは目に見えているため何にするか考えようと上条も過去食べたものの記憶を手繰り寄せた。
「じゃあ、パスタはどうだ?スープパスタ」
「あ、それいいかも。確かストックしてたブイヨン残ってたはずだし」
最近上条の家の冷蔵庫はしっかりとストックされたものが増えていた。専ら美琴が色々と作り置きしてくれるのがほとんどだが。
それにしましょ、と美琴は早速身体を起してベッドから出るとはた、と視線に気づいて上条へと見遣った。
「着替えまで見る気?」
「別にそれ以上のこと見てるんだから別にへい・・・って!」
「ば・・・バカ! 何てこと言うのよ!!」
バカ、アホ、と暴言を繰り返す美琴はそこら中においてあるものを上条に投げつける。
次から次へと投げ込んでくるものを上手く避けるものの、時折り物が当たってしまうのは美琴が投げる量が多いせいとも言えた。
「とりあえず、アンタはこっち向くな!さっさと着替えるから!見たら・・・コロス!」
「へいへい。わーってますって」
今更なんだけどなぁと心の中で思いながらも美琴を怒らせるとご飯も食べられなくなるので素直にその指示に従った。
あ、と上条は思い浮かんだことを美琴に投げかける。
「そーいや、昼はいいけど夜はどうする? お前寮に戻るか?」
美琴は着替えのシャツに袖を伸ばしながら「うーん」と生返事で答える。
「夜までいるわ。寝る前に帰る」
「そっか。んじゃ、今日の晩ごはんは何?」
「もう夜の心配? 早いわねぇ。まぁ、でもいい機会だから考えましょ。何が食べたい? 昼がパスタだからそれ以外にしない?」
苦笑しながら美琴は着替え終えるとパジャマを洗濯籠の中へと放り込んだ。いいわよ、と美琴は上条に声を掛けると背中を向けていた上条はくるり、振り返る。はた、と美琴と目が合った。
「そうだなぁ。じゃあ、美琴さんで」
大真面目な顔をしてさらりと言われた美琴はその返事を半分聞き流したものの、すぐに言葉の違和感に気づいて顔を赤らめた。
「へー・・・私・・・って何言うんじゃボケー!!」
思わず電撃の火花を散らせ、上条は咄嗟に右手でその電撃を封じた。やれやれと上条は肩を竦めながら首を軽く捻った。
「冗談なのになー。美琴たんは冗談が通じませんのね」
「美琴たん言うな!っていうか、アンタはもう少し厳しく言わないとわからないようね?」
「いーえ、滅相もございません。まぁ、冗談は置いといて、夜はからあげとかちょっと濃いものが食べたいかもな」
「はいはい、わかったわ。じゃあ支度するからアンタも着替えなさい」
そう言って美琴はキッチンへと姿を消す。
その後姿を見つめながら上条は小さく笑った。
赤くなったり、少し青くなったり、笑ったり、焦ったり、色んな表情を見せる美琴を見ていると上条も心が弾む。
美琴の手料理を食べながらのんびりして、明日にはまたいつもの学校生活に戻って、その繰り返しだけどそれがひどく愛しい。
普通であることがどれだけ幸せなのかを痛感しながら上条は顔を綻ばせた。
そんな明るい冗談が混じる日曜の昼下がりの他愛ないひととき。
終