03. LEVEL5


とても青い空が広がっていたとある日の昼下がり。御坂美琴はぼんやりと公園のベンチに座って空を仰いでいた。
軽く仰ぎながら右手にあるそれを日差しに透かして見せる。普通に見かけるその用紙は美琴にとっては見慣れたもの。
ただ、手に持っていたそれを太陽に翳していただけ、それだけのことだった。

「お、御坂か」

「ああ・・・・・・」

ちらりと上条へ視線を向けると美琴は軽く息を吐く。イマイチな反応を見せる美琴に上条は小首を傾げた。いつもなら不機嫌そうに「何よ」とか言いそうなものの、美琴のノリはイマイチで、上条は何となく気まずさを覚えた。こうノリが悪いと調子が狂う。

「何見てんだ? ・・・・・・って能力判定のか」

「うん・・・・・・」

「って、相変わらず数値高いなぁ。さすがレベル5」

「別に、そんなことないわよ」

いつもなら笑って「まあね」とか言いそうなのに、今日の美琴はやはりどこかおかしかった。

「どうしたんだ? やけにぼんやりしてるけど」

上条は反応の悪い美琴に尋ねると、美琴は「別にそんなことないわよ」と返す。だが、やはりどこかおかしいとしか思えない上条は問いを変えて話を聞いてみるという選択肢を選んだ。

「心ここにあらず・・・というか、上条さん的には御坂さんがいつもどおりじゃないと調子が狂うって感じなんですが」

「・・・・・・何よ、ケンカ売って欲しいわけ?」

薄く眉間に皺を寄せた美琴は漸く上条へと視線を向ける。ああ、これでこそ御坂だと思った上条は内心ほっとしていた。いつもどおりになるとケンカと言うか文句が増えるのだが、そんなことはいつものことなので、ある意味慣れていた。むしろ反応の薄い方が上条的にも居た堪れなくなる。

「そういうわけじゃねーけどさ、何となくいつもどおりじゃないと困るって言うか・・・」

「あっそ」

手に持っていた判定の結果を美琴は自分の制服のポケットへと仕舞った。
それを横目で上条が盗み見る。先ほどよりはまだいつもの反応に近い。だが、やはりちょっとだけ違う表情を美琴は持っていた。

「前よりも少しだけ数値上がってたの」

「へぇ。それはまたすごいことなんじゃねーの?」

「まぁ、嬉しいといえば嬉しいけどね」

苦笑する美琴に上条は不思議そうな眼差しを向けていた。嬉しいけど嬉しくないのだろうか、首を傾げる上条に気づいて美琴は小さく笑う。

「私の力って何だろう・・・って思ってたんだ」

人のためになる力だとそう思って信じてきた。だが、量産型能力者計画に使われたことで信じてきたものが自分の足元から崩れ落ちたような気がした。揺れ動いた信じる気持ち。でも、今はまた違うものを感じている。

「俺の力よりもずっと使えるもんだと思うけどな」

「・・・そうかもね」

くすっと笑いながら美琴は空を仰ぐと、白い雲がゆっくりと動いていることに気づく。
少しずつ時は流れてゆく。自分の知らないところで何かがあるかもしれない。

「私の力ってさ、アンタや守りたい人のための力なのかなって」

ちょっとそう思ってただけ、と笑った美琴の表情が上条の瞳に焼きついた。色んなものを乗り越え、そして今の力があるのだという美琴にそうかもな、と上条も笑う。

「お前には助けられてばっかりだしな」

「役に立ってるなら光栄よ。アンタだけじゃ守りきれないものもあるでしょ」

そのために私がいる。
隣に私がいることを忘れないで。

唇は動くものの音にはならなかった。ただ美琴の胸の内に仕舞われる。
様々な問題を乗り越えてきた二人だから。これからも、そのずっと先もきっと。

「頼むよ、相棒」

「任せなさいって」

にっとお互い笑い合うとどことなく笑みが溢れ、こぼれ落ちた。
大事な人たちを守るためならもっと強くなる。きっと強くなってみせる。
目指す先にあるものを見据えて美琴は強くなろうと心の中で誓った。

アンタの笑顔を守れるように。
みんなで笑って過ごせるように。

―――それが今一番願っていることなのだから。





*あとがき
書き終えてから思いました、恋愛じゃないわー、これ(笑)。なんかコンビ的な話じゃないの、と思ったんですけど、糖度低い話もまぁいっかーってことでupしています。ちょっとだけ恋愛っぽいようなそれでいて違うような、曖昧なお話になっちゃいましたが、楽しんで頂ければ嬉しいです。