繕った笑顔
「何?どうしたの?」
そう言って彼女は笑顔を見せる。
「ナツミ・・・・・・・・・」
「やだ、ソル。どうしちゃったのよ、真剣な顔しちゃって」
くすっと笑うと彼女は心配そうに俺の顔を覗いた。
そうやって、いつも笑って。
誰にも裏側は見せないのかよ、そう口の中で舌打ちした。
自分の意思とは反して、彼女の頬に手が触れる。伸ばした先に触れた彼女の柔らかい頬。
びくっと身体を強張らせると、俺の瞳を動揺しながら見つめた。
「ソル・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・って、距離置くのかよ」
「え?」
「そうやって笑って、距離を置くのかよ」
今度ははっきりと聞こえたのだろう、目を見開いて彼女は俺を見る。
すると視線を逸らして、苦笑いした。
「なんだ、気づいてたんだ」
「気づかないとでも思ったのか?」
「誤魔化せてるって思ってた」
間髪いれずに返されるその言葉に鈍い痛みを覚える。
抱えきれない不安を、そうやって笑顔に変えて。
でもちゃんと笑えてないって自分で自覚してなくて。
そんな、彼女がほっとけなくて。
気づいたら声をかけてた。
笑顔に隠された本当の想いを見つめながら。
触れる頬の体温が自分にも伝わってくる。少し温度が上がる頬。
「何で、気づいちゃうかなぁ〜」
少し顔を歪ませて、彼女は呟く。
不安を覆うその影はいつの間にか少しずつだか緩くなっていた」
「・・・・・・なんでっ・・・・・・」
更に顔を歪めて、瞳には光るものが見えて。
今一番強がってることくらいわかっていたから、ヘタに声をあげられなくて。
だんだんと俯いてくるその顔をじっと見つめる。
「ナツミ」
頬に触れていたはずの手がいつの間にか彼女を腕ごと包み込んでいた。
「ナツミ」
そっと静かに彼女の名を呼ぶと、俄かに彼女の肩が震える。
「・・・・・・っ」
「ナツミ」
「・・・・・・ごめん、ちょっとだけ・・・・・・」
肩、貸して?
声にならない声を出して、静かに雫を零す。
きっとずっと我慢してたであろうから、せめてものの彼女なりの強がり。
日増しに強くなっていたその不安を拭いたいのに、拭えない自分に腹を立てていた。
「大丈夫だから・・・・・・きっと俺が見つけるから」
「ちが・・・・・・あたしは・・・・・・」
「大丈夫だって」
「・・・・・・・・・」
いつも彼女は笑っているから、せめてものの支えになれればと願う。
そんな繕った笑顔なんて見たくないから。
心から笑ったその笑顔を見たくて、彼女を落ち着かせる。
願いし未来は、きっと。
いつもよりももっと素敵な笑顔でいて欲しいと願うから。
笑顔が似合う彼女だからこそ、嘘はつかないでと願う。
不安な心を、優しく包み込みながらそう思う自分がいた。
だから、笑って。
繕った笑顔なんて見せないで―――――。
END